笑わぬ子供は試練に向けて・Ⅲ
三日目……
今日はロビンに罠を使った狩りのやり方を教えてもらう。前に教えてもらったのは、動物用の狩り方だったが、今日教えてもらうのはモンスター用の狩り方だ。
地上に出ていつもの場所に行くと、ロビンが待っていた。
「ロビン、今日もよろしくな」
「おう、任せろ。その辺に……言わなくてもわかるか」
「もう何回来てると思ってるんだ。わかってるよ」
そういいながら地面に座って話を聞く体制に入る。それを見たロビンは話を始める。
「今日は罠を使った狩りのやり方だったな」
「うん、最初に覚えるなら安全なやつがいい」
「そうだな、安全は大事だ。それじゃ始めていくぜ」
僕が頷くと、ロビンは説明を始めていく。
「まずは罠を使った狩りの利点を詳しく説明していく。一つ目の利点は罠を設置したらその後は獲物が掛かるまで放置していい。その時間で武器の調整をしてもいいし、他の獲物を狙ってもいい。ただ数時間に一回は確認しないと逃げられるかもしれない」
「そう簡単に逃げられる物なのか?前に教えてもらったトラバサミなんて逃げれそうにないけどな」
「確かに簡単じゃない。けど方法が無いわけじゃない。足を千切って逃げ出すかもしれない。血の跡を追えばいいが、反撃を受ける可能性がある。せっかく罠に掛けて安全に仕留められるのに、それを逃して怪我をしたら、笑い話にもならない。そんな事にならない為に、数時間置きに確認しなければいけない」
「罠を強化すればいいのでは?」
「まあ、罠の強度を上げてもいいが、金が掛かるぞ」
「それは……ダメだな。そんなに金は持ってないし」
「そうだろ。結局頻繁に確認しなければいけないんだよ」
(魔法を使ってどうにかならないか?研究の時間を少し増やして、研究してみる価値はありそうだな)
「次の利点について話していくぞ」
「わかった」
「二つ目の利点は罠の種類によって一匹でも数匹でも、罠の規模次第で百以上も殺せる所だ。例えばトラバサミや箱罠は一匹に有効で、群れに使っても一匹にしか効果がない。だが落とし穴や囲い罠は群れに有効だ」
「罠の種類か……覚えるのが大変そうだ」
「確かに大変だが、覚えていた方がいい。ここからは罠一つ一つの解説と仕掛け方、作り方を説明していく」
「わかった」
「じゃあ一つ目は、前に軽く教えた事のあるトラバサミからだ。トラバサミは一匹に対してしか効果がないが、掛かればその時点で怪我をさせられる、非常に危険な罠だ。一応、仕掛け方と効果も説明しとくぜ。トラバサミは地面に設置して、足を挟んで捕まえる罠だ。仕組みは、罠の中心にある仕掛けを踏むと、周りの円形部分が、勢いよく閉じ足を挟む。棘をつけると血が出るから、罠から抜け出されても、追っていける」
「やっぱり棘をつけた方がいいのか」
「確かに棘をつけると効果は高まるが、もし人が掛かると大変な事になる。人が来ることが多い場所には、棘が無くてもトラバサミは設置しない事をオススメする」
「ふむ、やはり森の中などで使う方がいいか」
「そうだな……やっぱり使うなら森の中がオススメだ。どうしても人が多い場所で使うなら、しっかり情報を伝えて、人が来ないようにしてから使うしかない。まあ罠は基本、人がいるところでは使わない事だ」
「やっぱりそうなるか」
「そうなる。周辺にいる人が全員敵ならいいんだがな。まあ、それはそれで面倒か」
「それは……面倒そうだ」
「っと話がずれたな。軌道を戻して次の話だ。次は落とし穴だ。落とし穴は規模によって効果のある人数が変わる。作り方は簡単だ。穴を掘って、その上に布を被せて、薄く土や葉を被せればいい。穴の底に棘を設置すれば、殺傷性が高まるし、逃げられにくい。ただ穴を掘るのは面倒だが、まあ魔法を使えば何とかなる。欠点は、下に洞窟など、空洞があると、脆くなり使えない。今いる場所の下にはアガルタが在るが、地面が厚いから使える。
だが、規模を大きくし過ぎると、崩壊して自分も危険だ。その辺の見極めが難しいから、できるだけ安全策をとって、地下に空洞が無い場所で使う事だ」
「なるほど……アガルタでは使いにくいが、そのほかでは使いやすそうだ」
「まあ、地下がある場所はそんなに多くないから、そんなに問題じゃないがな。っと、そろそろ時間だな。箱罠と囲い罠の説明は明日だ」
「少し早くないか?」
「囲い罠は大規模だからな。明日、説明する為の準備をしておきたい」
「そうなのか?まあ囲い罠なんて名前だし、罠の種類の説明の時も、群れに有効だって言ってたから、大規模だとは思っていたよ」
「そんな訳で準備をしたいから、今日は帰ってくれ。かなり設置が面倒なんだ」
「わかった。じゃあ今日は失礼する。明日はいつもの時間でいいのか?」
「ああ今から準備すれば間に合う筈だ」
「では明日また頼む」
「わかってる。じゃあ俺は準備してくる」
ロビンはそう言うと、森の中に入っていった
(さて今日の授業が思ったよりも早く終わってしまったし、帰って魔法の練習でもするか)
そうしていつも通り穴から紐を垂らし、アガルタに入り、屋敷に戻る。
屋敷に入るとすぐに地下に行っていいか父親に聞きに行く。父親の部屋の前に着くとノックをして声をかける。
「父上、いますか?」
「なんだ?とりあえず入れ」
「失礼します」
「要件はなんだ」
「地下に行く許可を貰おうと」
「いいぞ。これほど頻繁に行くなら、ラクーンの部屋にも地下に行くための通路を作ってやる。それなら一々、俺の許可が無くても行けるようになる」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「うむ、任せておけ。じゃあ行っていいぞ」
「それでは失礼します」
絵を退かし、地下への階段を下りて、地下室に向かう。
(僕の部屋に地下への通路ができれば、いろいろと便利になるな)
そして扉に着くと、血で鍵を作り開ける。
(この二日で血の魔法の発動速度もだいぶ上がってきた。これなら実践でも使えない事は無いだろう。今日からは研究に力を入れていこう。研究結果はノートにでもまとめておくか)
ラクーンの研究ノート・ページⅠ
実験・Ⅰ強度と威力
この実験では、<魔力武装>と血の魔法の強度と威力に関する検証を行っていく
同じ形の剣をぶつけた場合……結果は魔力武装で作られた剣が折れた為、血の魔法によって作られた物の方が強度が高いことが分かった。
同じ形のレイピアの先端をぶつけた場合……結果は両方とも折れたりはしなかったが、魔力武装で作られたレイピアは軌道がずれてしまった。
同じ形の矢の場合……弓は弦が作れなかった為、魔法で作る。血の魔法で作られた矢は、空中で血に戻ってしまった為、矢として使えない事がわかった。基本、遠距離攻撃はできないだろう。
以上が今回の実験でわかった事である。今回の結果から、近接武器は血の魔法、遠距離武器は魔力武装が優れている事がわかった。
今日は血を使いすぎた為終了。次の実験は明日にする。
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