笑わぬ子供は試練に向けて・Ⅱ
二日目……
今日も昼からロビンに狩りを教えてもらう為、地上に出る。
「ロビン、来たぞ」
「おう、待ってたぜ。その辺に座ってくれ」
「わかった」
ロビンに言われた通り地面に座ると話が始まる。
「昨日は狩りにおいて重要な事を教えたから、今日は狩りの種類とやり方だ。種類によって作戦が変わるし、難易度も大きく変わる」
「わかった」
「まず狩りってのは基本、二種類に分かれる。一つ目は奇襲をして倒す方法。二つ目は罠を用いて相手が引っ掛かるを待つ方法だ」
「ふむ、ロビンはどの方法が得意なんだ?」
「ん? 俺か? 俺は二つ目の罠に掛かるのを待つ方法だな。最初にあった時も罠を仕掛けてただろ」
「そうだったな」
「じゃあ説明を続けるぞ。まずは一つ目の方法だ。これは昨日話したように作戦を立てて一撃で仕留めるやり方だ。この方法のいいところは、成功すれば素早く終わるところだ。逆に失敗した時は最も危険なやり方だ。得られる成果も一番大きいが、一番危ない方法だ」
「なるほど。格下相手や確実に一撃で仕留められる相手には効果的だな」
「その通りだ。ゴブリンやオークくらいが安全なラインだ。ただ人型と獣型では難易度が違う。人型の方が簡単だし、確実だ。人型は知能が発達してる代わりに生命力が低い傾向がある。首を落とせばすぐに死ぬ。獣型は知能が低い傾向にあるが、生命力が高い。頭を潰しても反撃してくる程だ」
「なるほど、人型に効果的な訳だ。獣型は罠を使った方法か?」
「そうだ。二つ目の罠を使った方法は獣型に効果的だ。この罠を使った狩りの利点は安全性にある。罠を仕掛けたら、相手が罠に掛かるまで待機して、罠に掛かって動けなくなった敵を殺す。罠に掛かって暴れていて近づけないなら、疲れるまで待ってもいいし、遠距離から攻撃してもいい。非常に安全な方法だ。たとえ格上でも罠に掛かれば仕留められる。
逆に欠点は時間がかかる事だ。罠を作り、設置して待つ。獲物がいつ掛かるかわからないから、数時間置きに確認しなければならない」
「時間はかかるが安全で、確実性がある作戦だな。ただ確認作業は面倒くさそうだ」
「その通り、安全性が高い作戦だ。罠の強度を上げれば頻繁に確認しなくてもいいが、できるだけ確認した方がいいな。この辺の詳しい説明は今度だな。」
「人型には奇襲を用いて一撃で、獣型には罠を使ってじっくりと。こんな感じだな?」
「なるほど……僕はどの方法から覚えればいい?」
「好きな方を選べ」
「じゃあ二番目かな」
「わかった。……時間も余ったし、魔法の話でもするか?」
「良いね。魔法について聞きたい事もあったし」
「答えられる範囲で答えよう」
「属性魔法はどうやったら使えるようになる?」
「属性魔法か……俺は魔法が使えないから何とも言えないし、学者によって言ってる事が変わったりするからな。ただ言われているのは感情や衝動、目標に左右されるって事だな」
「感情や衝動、目標? 環境とかじゃ無いのか?」
「それは数年前の考え方だな。アガルタではそう教えられるのか?」
「ふむ、そんなに古かったとは……」
「確かにアガルタの理想には要らないからな……遮断されてるんだろう」
「なるほど。それで? 具体的にはどんな感情か衝動を持つと、どんな属性魔法が使えるんだ?」
「じゃあ具体的な説明をしていくか。ただ俺は魔法が使えないから、本当に合っているのかは分からないぞ」
「問題ない」
「じゃあ説明を始めよう」
そう言うとロビンは地面に色々書きながら教えてくれた。
「まずは属性魔法の種類だな。どのくらい分かる?」
「情報が古いかもしれない。だから一から説明してくれ」
「わかった。まず属性魔法ってのは基本の四種類と、特殊な二種類に分かれてる。とりあえず基本の属性魔法一つ目は、火属性魔法だ。これは……」
火属性魔法……この魔法は炎を操る攻撃的な魔法。この魔法の利点は、範囲戦闘に優れている点。炎で広範囲を消し炭にしたり、火傷を負わせたりできる。欠点は味方にも被害が及ぶ点。炎による熱や熱風で味方が負傷する事がある。使用できる様になるには、破壊衝動や強い怒りが必要とされている。
「なるほど。ちょっと聞いて良いか?」
「なんだ?」
「感情や衝動ってずっと持ってるものでもないだろ? その感情や衝動が無くなったらどうなるんだ?」
「一度覚えたらずっと使えるらしい。ただ感情や衝動が無くなっていくと、魔法も弱くなったりするらしい。微々たる差らしいが」
「そうなのか。わかった、ありがとう」
「かまわない。次の属性魔法は水だ。水属性魔法は……」
水属性魔法……この魔法は、水を操る万能な魔法。この魔法の利点は、汎用性が非常に高い点。飲み水を出したり、水を使って地面に泥濘を作ったり、水で窒息死させたり出来る。欠点は、術者の技術が非常に大事な点。火属性魔法は適当に使っても強いが、水属性魔法は込める魔力の量、魔法をコントロールする技術を必要とする。高い技術が無いと戦える程の強さを発揮できない。使える様になるには、強い劣等感や自殺衝動などが必要とされている。
「なるほど」
「この魔法の使用者は大体が病んでる。次は風属性魔法だ」
風属性魔法……この魔法は、風を操る機動力に優れた魔法。この魔法の利点は、速度と視認し難く、風を使って自由に空を飛んだり出来る点。攻撃では発動から命中までの速度が、全ての属性魔法の中で二番目に速く、目で捉えるのが非常に難しい。その為当てるのが簡単。移動では風による高い加速力を持つ。欠点は威力が低く、魔力消費が激しい点。使える様になるには、強く自由を求めたり、未知への期待などが必要とされている。
「なるほど」
「この魔法の使用者は好奇心が旺盛すぎて大変な奴が多い。次は地属性魔法だ……」
地属性魔法……この魔法は、地面を操る防御的な魔法。この魔法の利点は、全ての属性魔法の中で唯一物理的な防御力を持っている点。地面を動かして敵を吹き飛ばしたり、地面を隆起させたり、地面を盛り上げて壁を作ったり出来る。そして欠点らしい欠点が無い所も特徴。強いて言うなら地味な点。使える様になるには、何かを守りたいという気持ちや、強い責任感などが必要とされている。
「なるほど。どれも僕は使えそうに無いな。特殊な二つの属性魔法はどんなの何だ?」
「それはまた今度だ。もう夕方になってる」
空を見上げると、空が赤く染まり始めていた。
「本当だ」
「だろ? じゃあ今日はここまでにして、明日からは二つ目の罠を使った狩りを教えよう。今日はもう帰れ。明日の準備をしたい」
「わかった。それじゃ帰るよ。明日もよろしくお願いする」
「おう任せろ」
「また明日」
「おう、じゃあな」
ロビンと別れ屋敷に戻り、血の魔法を練習し、寝る。こうして二日目が終わるのだった。
ここまで読んで下さってありがとうございます。
面白いと思って頂けたら嬉しいです。