無限の彩華
どうも、作者の桜です。彼、あるいは彼女の独白、あるいは慟哭を聞いていただけるならこのままお進みください。ああ、ひとつだけ言わなくてはいけませんでした。彼、あるいは彼女の時の流れに取り込まれぬようにご注意下さい。
私の名前は彩華。苗字は無く、ただの”サイカ”だ、たぶん。
皆が私を見て”サイカ”と言うから恐らくそうなのだろうと自分で勝手に思っているだけだが……
名前などただ他と自分を区別する記号でしかないのだし問題はないだろう。
さて、今から語るのは私、彩華の生涯である。
私が自分を認識したのは今から15年前位だろうか……
私は色とりどりの草花に囲まれていた。
自己を確立してから私は生まれ故郷から動くことを決めた。
自分に名をつけたのはそれから1年たった頃だっただろうか。
始めに言ったように周りにいるものが私をサイカと呼ぶので自分の事をサイカと名付けた。
それから4年ほどは自然に色々なことを学んできた。
漢字というものを理解したのはこの頃だった筈だ。
以降私は自分を彩華と呼ぶことにした。
それから5年間。私はいろいろなところを渡り歩いてきた。
大きな音をたてて渦を巻きながら上へ延びていく風の柱があるところ。
地面が大きく揺れ、大量の水が押し寄せ戻っていくところ。
閃光と共に轟音がなり天と地が刹那の時だけ繋がるところ。
たくさんの水の粒が集まり轟音と共に流れていくところ。
私が通ってきた道には何もなく、あとから色とりどりの草花が顔を出すだけだった。
だから私は草花を生み出せるのだろうと思っていた。
そしてさらに5年間たった頃、私はふとしたことから気づいてしまった。”サイカ”の意味に。
私が行ったところには初めから草花があり、そして草花以外の存在もあったのだと。
私は”彩華”ではなく……”災禍”だった。
色とりどりの草花を生むのではなくすべての命を奪うものだったのだと。
私は絶望した。自分は生まれてはいけなかったのだ。せめて自分に意識がなければこんな思いはしなくてすんだのだ。自分に考える能力がなければ気づいてしまうことはなかったのだ。
それから……私は自分の生まれ故郷に戻ってきた。
ここにいれば何の命も奪わずにすむ。
もうあんな思いをしなくてすむ。
そうして、私は自分の意思を消し去った……。
……私の名前は彩華。苗字は無くただの”サイカ”だ、たぶん。
皆が私を見て”サイカ”と言うから自分で勝手に思っているだけだが…………。
前書きで脅しておいてなんですがただ災害を擬人化してみたかっただけです。お粗末様でした。