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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

おかえり

作者: 鶴羽遊貴


「ただいまぁ。」


ガチャリと玄関の音がした。誰かが帰って来たのだろう。けれど、今は音ゲーの最中。一瞬の油断もならない状態だ。私は視線は画面にはりつけたまま適当におかえりと返事を返してゲームを続行した。シャンシャン、シャンシャン、タップする度に音がなる。そして、ようやくパーフェクトフルコンボを叩き出した瞬間。姉の悲鳴が聞こえた。私は瞬時に悟った。非常事態だと。あの黒い悪魔が姉の部屋に出現したのだと思った。

渋々携帯をテーブルに置き、台所の下の戸棚から黒い悪魔の対抗策に作られたスプレーを手にしリビングをでた。

そこでふと気付く。玄関に見知らぬ靴があることに。最初は姉が知らない間に買ってきたのだろうと考えた。しかし、明らかに可笑しな点があった。姉にしてはその靴のサイズが大きかったのだ。女性が履くには少々無理がある。そして、この家には転勤中の父以外男性はいない。じゃあ、この靴は誰のだ?

ひやりと温度が下がった気がした。今日は一日中私1人で、夕方と先ほどの合計二人が帰ってきたはずだ。夕方の1人は姉だと私は確認してある。じゃあ、さっきただいまと言った人は誰だ。

これはもしかして黒い悪魔よりもやばい非常事態じゃないか?

急いで姉の部屋へと向かい、階段をかけ上る。


姉の部屋はちょうど階段を登ったすぐそこにあるため、ドアが開いてれば中がまる見えだ。もちろん今も中がまる見えだ。姉が倒れている中が。

なんで、どうしてと頭の中が疑問で埋め尽くされる。いや、そんなことより私は一刻も早く通報しなければいけない。急いでポケットを探るが、携帯は一階に置いてきていた。まずい。はやくしないと。階段を下ろうと足をかけた。


ドンッッッ


誰かに背中を押された。ぐらりと体が傾き、視界がぶれる。だけど、誰かが慌てて私に向かって何かを言っているのは耳に届いた。その言葉も届かないまま、私は意識を手放した。



「ねーえ、起きてよ!ちゃんと辺りどころは悪くならないよう調節したんだから!!」


ぺしぺしとほっぺを叩かれる。頭がずきずきと痛い。なにが起こったのかと目を開いてみれば、視界には茶髪の童顔が映った。


「あ、起きたー。おはよー。」


「......おはよう?」


起き抜けに見知らぬ人と対面。まるでドラマ。まるで少女漫画。しかし、挨拶は大切なのでしっかりとはいかないものの返事をする。


「あれ?さっきまで通報しようとして階段から落とされた気がするんだけど。一応、あの高さだったら頭は切る可能性があったのに全身無事?つか誰?」


「めりーさんだよー。大丈夫!ちゃんと怪我しないように落としたから!通報はしなくても平気だよ?」


「え?だって、お姉ちゃんが倒れて」


「んー、ここには君と僕以外住んでいないよ?」


おかしい。明らかに何かがおかしいと感じた。ふと視界に赤い何かが映った。姉だ。この赤いのは姉のもの。姉から赤をだしたの多分きっとこいつだ。私より年上の姉をこんなにしたこいつは私をどうするつもりなのだろう。恐怖で声が震える。


「貴方はなにをしにきたの?」


「君にはめりーって呼んでほしいな!」


「......めりーさんはなにをしにきたの?」


少し不服そうな表情になったものの、それは表面だけで彼の機嫌がいいことは充分に伝わってくる。


「お腹すいたから、食べにきたんだけど。おかえりって言ってくれた君が好きになっちゃった。だから、今日から一緒に住もう!」


最悪な展開だった。



その後、私は普通に学校に通い続けている。


「おかえり!」


彼が迎えてくれる家に住みながら。

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