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第六話「彼女は妹だった」

  彼女に送りつけた地図データのピンの位置はとある人気のない喫茶店だった。

 自分はあれからすぐ家を出発してその喫茶店へ向かった。

 その店はある程度交通の便がいい駅から選んだつもりだった。

 そしてその喫茶店に着く。正直今日は来るとは思っていなかった。

 しかし呼んだ自分が行かないわけにはいかないので、適当にドリンクを頼んで彼女を待った。

 当然その日は待ちぼうけを食らった。



  次の日も自分は朝からその喫茶店へ向かった。

 事前に調べていたから分かってはいたけど、この喫茶店は本当に利用客が少ない。

 だから店への迷惑を考えないでいくらでも彼女を待つことが出来た。

 正直最低でも一週間くらいはこの店に通うことを覚悟している。

 こういうのは相手に根負けさせた方の勝ちなのだ。

 でももうゴールデンウィークは今日でおしまいなんだよな。

 平日は学校を休んで朝から来るか、学校は休まずに放課後だけ来るかどうしようかな。

 普段の彼女ならそういうことも考えて、来るとしたら放課後の時間帯を狙うだろうけど、今はそんなことが考えられる状態かと思うと、無理があると思う。

 よし、やっぱり学校を休んで朝から来よう。

 別に学校は休んでも鈴木にノートをコピーさせて貰えばいいし。


 そんなことを切りがいい所まで考え終え、そういえばもう店の外は夕方だなと思ったときのことだった。

 カランコロンと喫茶店のドアベルが鳴り、珍しいな誰か客かと、店の人にはとても失礼なことを思って入口を見る。


 「えっ」という声がつい自分の口から出てしまっていた。

 ありえないと思った。そんなはずないと。

 だってその人は静音さんなのだから。


 自分は考えるより先に彼女に駆け寄って、

「どうして静音さんがここに居るんですか」と聞いた。


「いや私はお嬢様の命令で、この店にいるあるかたに伝言を伝えて欲しいと言われて」

と彼女も戸惑った様子で答える。


「万が一のために聞きますが、その伝言というのは」

とこれを聞いたら何か大きなものが崩れてしまう、そんな気が本能的にしたが質問した。


 静音さんは自分に伝えていいものなのかと躊躇したが

「ではお伝えします」と言って伝言の内容を話そうとする。


 そして

「『あれからずっと考えましたが、まだあなたと現実で会う決心が付きません。

  なので明日からの学校には休まずに行ってください。弱い私でごめんなさい』とのことです」

と言い終えたのだった。


 それを聞いた自分は数十分経ってもまともな思考ができなかった。


 それからやっと思考が若干回復した後、その頭をフル回転させて静音さんに

「『急に現実で会おうなんて言ってすまなかった。明日からはまた普通に遊ぼう』

 妹にはそう伝えてくれ」と伝言を頼んだ。


 そして最後に「くれぐれもここで自分に会った事は言うな」

と強く忠告して静音さんを先に帰らせる。


 一緒に帰ってしまったら妹に不審がられてしまう可能性があると考えたからだ。

 そして2時間ほど経ってから自分も帰宅した。

 その日の晩飯は何の味もしなかった。

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