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第二話「異変の予兆」

  もう朝かと目覚まし時計を止めた自分は身支度を済ましてから、リビングへ向かい朝食を済ませる。

 行ってきますと静音さんに挨拶して今日も学校に向かう。

 そして学校に着いた自分は教室に入り自分の席へと着く。


 それからすぐに

「そういえば、ネットのあの子とはどうなのよ」

と後ろの席の人に話しかけられた。

 高校に入ってから3年連続で同じクラスの鈴木だ。


「いきなりなんだよ。それにその前に挨拶が先だろ」

と自分は少し鬱陶しく言う。


「いいじゃんかよ、親友なんだから細かい事はよー。

 それよりどうなんだ。どこまでいったんだ。なー」

と彼は自分の机に両手を付き、顔を近づけながら言う。


「だからいきなりどうしたんだよ。

 今までそんな話題はしてこなかっただろ」

と自分は彼にとりあえず落ち着けと抑制しながら言った。


「いやー、こういう話題は避けるべきなのは分かっているんだが、なんか気になり出したら落ち着かなくてさ。

 そういえばあれから一年くらい経っただろ。

 どうなったか少しでいいから教えてくれよ」

と彼は少し反省して答えた。


 彼は譲りそうなく、そういうことなら仕方ないと思ったので

「颯爽と恋仲になって毎日ラブラブしてるぜ」と自分は自慢に答えた。


「やっぱりそうか。くぅー、悔しいぜ。

 やっぱり時代はネット恋愛なのかな」

と彼は本当に悔しそうに言う。


「そうかな、自分は彼女と現実でも恋愛できたらもっといいのにと思うが」

と自分は彼に気を使って言う。


 それを聞いた彼は願望を膨らませながら

「俺の考えは違うな。現実とネットの合法二股だぜ」と言う。


「それ、相手もしている可能性が有ることを忘れるなよ。

 あとどっちかで作ってから物を言え」

と少し怒ったふりをして彼に言う。


それから間もなく朝のホームルームが始まった。




  そして午前中の授業が終わった後の昼休み、自分はいつものように教室で静音さんが作ってくれた弁当を食べる。

 学校には食堂もあるのだが、たまにしか利用しない。


「今朝の話の続きなんだが、お前はネット婚についてどう思ってる」

と鈴木は同じく弁当を食べながら自分に質問してくる。


 コイツはまた唐突に何だよと思いつつ

「ネット婚って、アレだろ。

 いつもマスメディアが騒いでる、現実での関わりを一切持たない仮想現実上のネット名同士による結婚の事だろ」

と自分は少し恍けて堅苦しい言葉遣いで言う。


「何恍けてんだよ。今絶賛関わり中のお前が興味ない訳無いだろうが。

 それでどう思ってるんだ」と次は少し真剣に聞いてくる。


 なので自分は少し考えた後、真面目に

「まあ本人たちが幸せならそれでいいんだろうが、自分は少し嫌だな。

 なんだか夢の中での出来事のような気がして」と答えた。


 すると彼は何だが少しほっとしたように

「俺も結婚するなら現実がいいな」と言った後、

「やっぱ子供を作らなきゃ意味ないだろ」と笑いながら付け加えた。


 事実彼の意見はもっともなのだ。

 ネット婚というものは世間一般には認知されているものの、法律上では規定がなく結婚ではない。

 法律上で認められない訳は、現実とネット名とによる重婚や、出生率の向上が見込められない事が理由ではないかと思う。


 その後はこの話題をやめ、他の雑談をしながら過ごした。




  正直午後の授業は浮かれていてあまり覚えていない。

 なぜなら明日からゴールデンウィークだからだ。

 彼女とはほとんど毎日会っているが、やっぱし連休は嬉しい。

 なぜならいつもと違う事、例えば日帰りできないような所に行って遊んだり、遠征クエストをしたりもできるからだ。


 自分でいうのは少し恥ずかしいが、きっと彼女も楽しみにしているに違いない。

 そう思いながらウッキウキで帰宅する。


 静音さんにただいまと挨拶した後、すぐに仮想世界へ直行する。

 そして待ち合わせの丘の上で彼女を見つけた。


 いつもは立って迎えてくれるの彼女だが、今日はパラソルの付いたガーデンテーブルに座って顔をうつ伏している。

 寝ているのかな、珍しいなと思ったので、少し悪戯でもしてやろうかと思った。

 好きな子には意地悪をしたくなるものなのだ。


 自分は彼女の肩を両手で揺すりながら

「音羽ちゃん、朝でちゅよー」

と赤ちゃん言葉で繰り返し言って皮肉たっぷりに起こした。


 すると彼女は「えっ、朝ですか」と言い、困惑して首を振って辺りを確認した後

「なんだ太郎さんではないですか、今日も可愛いでちゅねー」

と言って自分のほっぺにチューした後、またテーブルに顔をうつ伏して寝てしまった。



 自分は一体何が起こったのか分からず数秒の間思考が停止してしまった。

 これは何かのラッキーイベントなのか。

 彼女は普段は落ち着いていて少し堅苦しい性格なので、恋仲になってからもこういった事は全くしないのだが。

 なので今のは何かの間違いだったと思うことにして、もう一度彼女を起こした。

 今度は普通に。


「んー、わっ、太郎さんじゃないですか。嫌だ私寝てしまっていて」

彼女は頬を赤く染めながら少し申し訳なさそうに言う。


 よかった、今度はちゃんと目覚めてくれたようだと自分は心の奥底では残念がりながら思った。


「いいよいいよ、いつもは自分が待たせているんだし。

 それに音羽の寝起きの顔が見れるなんて嬉しいよ」

と茶化しながら自分は言う。


 本当はさっきの事で何かの性癖に目覚めそうになってしまった事は、今は考えないでおく。


 すると彼女は

「もう、太郎さんは意地悪なんですから」

と言った後、頬を膨らませた。


 あーもう、なんて可愛いのだろうと心の中でモジモジしながら心底思った。

 それから彼女は少し怒りながらもいつものように自分と過ごした。

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