プロローグ「彼女との出会い」
あの日音羽と出会ってから早くも一年が過ぎようとしていた。
今日も学校から帰ったらすぐに仮想現実で彼女と会う。
そういえば彼女と出会ったきっかけは何だっただろう。
確か学校のクラスメートに一緒に仮想現実でゲームをしようと誘われた時のことだった。
自分は約束に時間にそのゲームにログインして数十分待ったが、彼奴等は一向に現れなかった。
すっぽかされたのだと思った。
その頃の自分は仮想現実にあまり興味がなく、とてもじゃないが1人では始める気になれなかったので、早々と現実へ戻ろうと思い、ログアウトボタンに手を伸ばした。
その時だった。
見知らぬ少女の手によりその自分の手が差し止められたのだ。
そしてその少女が
「もう帰ってしまうのですか。
まだ始めてから何もしていないでしょうに」
とこちらを見て不思議そうに言う。
さっきからずっと自分のことを見ていたのかと思いながら
「実は友達に誘われて始めたんだけど、約束をすっぽかされたみたいなんだ。
自分はこういうのにあまり興味がなかったから、ちょうど良かったよ。
それに1人じゃ右も左も分からないしさ」
と自分は最後の一言は少し余計だったかと感じたが、そう答えた。
「そうでしたら私がこのゲームの遊び方を教えて差し上げましょう。
それでいいですね。
ちょうど暇を持て余していた所でしたの」
と少女は満足げにそう言った。
自分はまさかそんな返答がくるとは思いも寄らなかったので、驚いた。
しかし冷静になって少女を観察すると頗る可愛いと感じ、たまにはこういう事もいいかと自分に言い聞かせ、少し下心もありながら少女の誘いを受けることに決めた。
しかしその選択が間違いだったと思うほどに少女は思いの外、というかかなり熱心に教育してくれた。
そして別れ際には、明日も一緒に遊びませんかと誘ってくれた。
正直初めの方は苦痛でしかなかったのだが、やり方を覚えていくうちに楽しくなってやり甲斐を感じていき、その後は時間を忘れるほど熱中していたのだった。
もちろん誘いは受けることにした。こんな嬉しい誘いを断る道理はない。
その返事を聞いた少女はとても嬉しそうだった。
それからアメとムチを高度に使い分けた少女の教育の日々が始まり、少女と仮想現実で楽しく、時には辛く過ごすのだった。
そしてその少女と一緒にいるとなんだか懐かしい気持ちにさせられていた。
そんな自分たちが恋仲になるのにはそれほど時間はかからなかった。