2-2 鬼教官ユーナ
シウバです。成り行きで現在「奈落」に来ています。以前は「魔力の洞窟」とよばれたこの穴は、非常に多くの魔物が発生すると言われており、中には魔力に満たされた希少な薬草やキノコが生えていると言われています。ここでしか発生しない魔物も多く、その素材は非常に高価で取引をされています。ここにはレドン草と呼ばれる薬草があるそうです。MP回復ポーションの原料となるのですが、それが群生している所を紹介してもらえるという事でユーナに連れてきてもらいました。もし、それがここだと分かっていたなら・・・。
帰りたいです!!「奈落」で発生する魔物は低くてもBランクと言うじゃねえか。無理!絶対無理!しかもここ魔物発生量もかなり多くて有名でしょ!?ほら!すでに入口のところにロックリザードが2匹もいるよ!
「アイアンドロイド召喚!」
ユーナが4体の鉄人形を召喚した。あいつら強いのか?お!意外に戦えてるじゃないか。2体で1匹ずつを相手して上手い事攻撃の注意をそらしながら後ろからザクザク槍でついている。1体では勝てそうもない相手だけど、連携が上手いとこういう戦い方もできるんだな。勉強になる。しかし、いつもは突っ込んでいくユーナが全然戦闘に加わろうとしない。
「ロックリザードは戦うと剣が壊れそうね。」
・・・そういう理由で突っ込んで行かないのね。まあ、俺が突っ込んだ場合は剣じゃなくて俺が壊れちゃうけどさ。ははは!・・・情けねえ。
「さあ、なんとか倒したみたいだし、入りましょうか!レドン草は第1階層に生えてるからすぐよね!」
おお、それは助かる。もし第3階層とかだったらどうしようかと思ったよ。
「これは・・・ヒカリダケ?」
「そうよ!第2階層になるともっと増えるわ!あんまりおいしくないけどね!」
おいしくないって!?そんな事よりもこれは薬の原料になるよ!ちょっと採って帰るとしよう。あ。あそこにもあるぞ!かなり貴重な材料だ。帰って薬屋のおっちゃんに売ってあげよう。
「シウバ!遠くまで行くと危ないよ!」
おっと!我を忘れて採取してしまった。危ない危ない、ここは「奈落」。いつどんな魔物が出るか分かったものではない。例えばほら、こんなぶっとい脚したジャイアントスパイダーとか・・・。
「出たぁ!」
めっちゃ速い!うおおおおぉぉぉぉ!
とっさに鉄の剣を抜いた。シャリンって音はいつも通りだったけど、なぜかちょうどそこに蜘蛛の脚がやって来てて、それを防ぐように剣が食い込んだ。切り落とすことはできなかったけど、ジャイアントスパイダーのが弾かれるように左に逸れて、俺は命拾いした。あっぶねえ。
「シウバ!」
すぐにユーナがジャイアントスパイダーに斬りかかる。後続のアイアンドロイドもつぎつぎと槍を突き立てた。俺も背後から脚を1本狙って斬りつけてみたけど、全然切り落とせなかった。腕力が足りないのかな?でも俺より腕力なさそうなユーナがすぱすぱ脚を切ってるぞ?あの長剣がすごいのか?この剣が悪いのか?
「ちょっと焦ったよ!あんまり遠くに行かないで!」
ごめん、ユーナ。びっくりさせちゃたみたいだ。
「でも、シウバにしてはよく最初の攻撃を受け流せたね!」
・・・きゅ、急に褒められても、な、何も出ないぜ!かわいいな、こんちくせう!
洞窟に入った先には広場があった。結構広い。先が暗くてあまい良く見えないけど、その先に大きな池が見えた。
「あの池の先に生えてることが多いよ!」
池の先?ちょっと待ってよ。この池結構広いし深そうだよ?どうやって取りに行くの?濡れてもいい準備なんてしてこなかったけど・・・。
「ノーム召喚!さあ、いってらっしゃい!」
ああ・・・、そういう事か。俺としては参考にならんな。しかし、召喚魔法は便利だね。
ユーナはすでにここに来るまでにかなりの量の召喚をしている。普通だったら、こんな量の魔法をつけっていたら魔力枯渇で倒れてしまうんじゃないだろうか?
「ユーナは大丈夫?かなり魔法使ってるみたいだけど?」
「大丈夫!私ね、総魔力をあげる特訓したからまだまだ余裕あるよ!」
なんだって!?こんなに魔法使ってるのに余裕があるだと?意味が分からん!その特訓とやらに是非興味があるわ!
「す、すごいね。特訓?どんな事やったの・・・?」
「・・・MP回復ポーション飲みながら魔力枯渇すれすれまで召喚するのを2週間24時間ぶっ通しで・・・。だめだ、思い出したら気持ち悪くなってきた・・・。」
「あ、ごめん!」
なんですと!?そんな過酷な訓練をしてただなんて!・・・なんか、俺がほんとに情けない存在に思えてくるよ。ユーナすげえな。
「そうだ!シウバも私と一緒に強くなろうよ!MP回復ポーション作れるんでしょ!?」
へ?ユーナはまだ強くなるつもりなの?というか一緒に?
ノームがたくさんのレドン草を収穫してくる。これだけあればかなりの金額になるに違いない。下手すれば金貨数枚も夢ではないかもしれない。でも・・・。
「これでMP回復ポーション作りながら特訓すれば、すぐに強くなれるよ!・・・かなりきついけど。」
やっぱり、そういう事か。冒険者は体が資本である。特訓で強くなれるならば、特訓をするべきなのだろう。今回、運よくこの洞窟に連れてきてもらってレドン草を手に入れることができた。これは、強くなれという事なのかもしれないな。いつまでもユーナを慌てさせてちゃいけないって事だろう。お金はちょっともったいないけど、いつかはなくなってしまう物だ。こつこつと自分に投資をしよう。
「やるよ!俺、強くなりたい!」
「やった!じゃあ、さっそくこれでMP回復ポーション作って沢山魔法の特訓をしよう!・・・私は飲まないけど、24時間召喚で付き合うからさ!」
付き合うって!!?じゃなかった、そういう意味じゃないよね。・・・ユーナは飲まないんだ。そんなにトラウマがあるのかな?
俺は今猛烈に後悔している。あの後、エルライトの町に帰って青汁を調合した後、さっそく訓練が開始された。エルライト近郊の山岳地帯で破壊魔法を連発する。
「さあ!もう一本飲んで!次はあっちの大きな岩を破壊するのよ!」
すでに10本以上のMP回復ポーション飲んで腹はタプンタプンだ。もう飲めましぇん。おかげですごい勢いでレベルが上がっている気もしないでもないけど、こんなん続けられる気がしない。魔力の喪失感が半端ないよ。
「・・・ちょっと、きゅ、休憩を・・・。」
「何言ってんの!さあ!次よ!甘えてるんじゃない!」
「は、はい・・・。」
まさかユーナが鬼教官だったなんて・・・。
シウバ 20歳 男性
Lv 15
HP 410/410 MP 380/380
破壊 12 回復 7 補助 3 召喚 1 幻惑 2 特殊 0
スキル:なし
眷属 :なし
こうして俺はレベル15まで一気に駆け上がったのだった。だが、MPは増えても戦闘技術が向上しているわけではないと気付いたのは次の日に行った薬草採取の帰りにゴブリンに絡まれた時だった。
「転生召喚士はメンタルが弱いんです。」がブックマーク5000超えました。こちらでひっそりと!!やってる事に気付かない方には申し訳ないです。そろそろこっちもランキングが下降気味ですし、乗らなくなればコアなファンの方々のみの閲覧小説になってくるに違いないので気楽になる事ができそうです。めざせ200話くらい!?ハルキができなかった事をシウバがやってくれる事を期待して。