表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/169

4-3 教育的指導

前回までのあらすじ!


戦場の中央部


ロランVSフィリップ


じーじなめんなよ! ← イマココ!

 戦場の東側には召喚騎士団の第5部隊が展開したらしい。対するは「勇者」フラン=オーケストラと第2部隊の数名のみ。本来であれば戦力差が激しいこの戦いであるが、奇妙な事に何の記述もない。時系列から考えると中央や西側の戦いと同じだけの時間、この両者は対立していたはずであり、その間に何もなかったという事は考え辛いはずである。しかし、どの資料を探っても何の記述もない事から想像力で補うしかないのであろう。結論は両者ともに勝利も敗北もしていないはずである。では、この両者が戦った場合にはどのような事が起こったのであろうか。当時を生きた者がいない今、残念ながら真相を知るものはいない。


         -「新説 レイクサイド史」タークエイシー=ブックヤード著 より抜粋―



「無理ッスぅぅぅぅ!」


 戦場の東側には第5部隊が展開していた。待ち受けるは「勇者」フラン=オーケストラ。いや、この場合は「鬼のフラン」である。


「降りてこい、クソガキども! 忠誠を尽くすべきハルキ様に刃向った事を教育的指導と見せしめを交えて後悔させてやる!」

 完全に昔の冒険者をしていた頃の「鬼のフラン」の口調に戻っている。対してヘテロ=オーケストラは剣術指南役であるフランには一度も勝ったことがない。つまりは師弟関係にあるのだ。そして、その師匠は激怒している最中である。


 そう、第5部隊は展開している。ワイバーンに乗って上空に。距離をとって。

「皆!もうちょっと上がるッスよ!もしかしたらフラン様ならここまで飛んでくるかもしれないッス!」

 思い出されるのは霊峰アダムス近辺からシルフィードの町に帰る際に捕獲された事件である。ハルキ=レイクサイドの所在を問い詰めるためにヘテロ=オーケストラはフラン=オーケストラに捕獲されて宝剣ペンドラゴンで脅迫されていた。あの時、ワイバーンに乗ったヘテロは上空まで跳躍してきたフランに蹴り落とされている。そして、その時以上に「鬼のフラン」が激怒している。

「これはやばいッス。」


 ヘテロにはフランの舌打ちが何故か聞こえる気がした。ここまで上空に逃ればそんな音が聞こえるわけないのにである。しかし・・・。

「ならば、撃ち落としてやる! フレイムバースト!」

 普段、あまり使わないフランの破壊魔法。後日談ではこの破壊魔法は亡き妻の得意技であり、自分が使っても妻ほどの威力が出せないために何となく使い辛いものだとか。しかし、「勇者」とまで言われる男が使う破壊魔法は常人とは桁が違う。そしてフランのレベル的にはすでに亡き妻を超えており、思い出補正が非常にかかりまくっているのを本人は気付いていない。


「ぎゃーッス!」

 ゴウッ!!という音と共に飛んできたフレイムバーストを間一髪で避けたヘテロ=オーケストラであったが、更に連発されるフレイムバーストを避け続ける必要がある。一度でも当たれば黒焦げになるだろう。

「マジスか!? マジスか!?」

 もはやシルキットのフレイムレインに匹敵するほどの手数で一発一発はその威力が上回るフレイムバーストを連発するフラン。正直なところ、ストレスがたまっている。セーラ=レイクサイドおよびロージー=レイクサイドを護衛するという最も重要な役割から今だけ離れているのだ。さらに弟子たちのふがいなさにも我慢がならない。「ブレインウォッシュ」をかけられるためには拘束されている必要がある。つまり、洗脳された連中は捕獲されたと考えられる。神ですら払いのけたハルキ=レイクサイドをもっとも追いつめた相手がまさか自分が鍛え上げた弟子たちだったとは。


「何スか!? これは!? 聞いてないッス!」

 フランの破壊魔法などという普段は知らない物が出てきた上に、その威力が果てしないためにヘテロは混乱中である。その混乱は最初からでもあるのだが。

「やってらんないッス!」

 ワイバーンがさらに上空へと逃げる。ここまで上がればフランは追っては来られまい。


「待たんか! クソガキども!!」

 しかし、フランは第2部隊の召喚士にワイバーンを召喚させ上空へと追ってきた。

「マジスか!?」

 最大戦速で上昇するワイバーン。そしてある点まで到達すると、フランの姿が消える。視界から。


「げふっ!」

 次の瞬間にヘテロの腹部につきささるフランの右足。ミスリルで作られた鎧が若干へこむ。鞍ごとワイバーンから引きちぎられるように宙空へと放り出されるヘテロ。ここはかなりの高度がある。しかし、さらにヘテロのワイバーンを足場にフランが迫る。


「ちょ!!」

 地上であればマウントポジションと言うのであろうか。馬乗りになってヘテロとともに落ちていくフラン。

「待つッス! このままじゃ2人とも!」

 あわてて新たなワイバーンを召喚して墜落を逃れるヘテロであるが、地上から数メートルの距離まで落下していた。つまり、フランであれば飛び降りても差し支えない距離である。

 空中で胸倉をつかまれるヘテロ。そして掴んだままワイバーンから飛び降りるフラン。

「ぎゃぁぁぁぁーーーー!!」 


 落下の最中でヘテロを投げ飛ばす。このままでは地上に頭から刺さる恰好であったが、ヘテロはなんとか召喚する事に成功した。

「フェ、フェンリルッス!」

 ヘテロにとってもっとも多く召喚した召喚獣はとばされたヘテロを空中で受け止めて着地するだけの俊敏性を持つ相棒でもある。

「あ、危なかったッス。」

「気を抜くな、クソガキ。」

 背後からの魔法剣でフェンリルが強制送還される。あわてて抜剣するヘテロであるが、純粋な剣技ではフランには敵う事は今までなかった。


「う、うぉぉぉ!!」

 すでに他の部隊員たちが割り込めるような戦いにはなっていない。ここにヨーレンがいたとしても厳しかっただろう。「鬼のフラン」の剣をそれでもなんとか凌いでいるのは、彼が「フェンリルの冷騎士」と呼ばれる第5部隊の隊長であったからだ。


「マジでやばいッス!」

 そしてその予想通りにヘテロの剣が飛ばされる。彼の予想がこのまま続くとしたら、「鬼のフラン」に寸止めはない。さっき、見せしめって言ってたのもきちんと覚えている。

「ノーム召喚ッス!」

 斬られないために時間稼ぎの大量のノーム召喚を行う。ただし、それは彼の主人が長年フラン対策として多用してきたものであり、対するフランもその対策はすでにできている。彼の主人がその中にアイアンドロイドを混ぜて召喚した事もあったが、今のフランはおそらくそのアイアンドロイドごと切り伏せるであろう。つまりは数秒しかもたない。しかしその数秒には価値がある。

「逃げるッス!」

 フェンリルを召喚して乗り込む。その動作は誰にも負ける事はない。


「逃がすと思うか!?」

「思ってないッスけど、逃がしてほしいッス!」

 斬られそうになる前にフェンリルを乗り捨て、ワイバーンに切り替える。乗り換えの際にも大量のノーム召喚で邪魔をするのだ。そしてできるだけ早く上空へと逃れる。


「うぉぉぉぉ!!!!!ッス!!」

 背後から迫る恐怖と戦うヘテロ。振り返ると速度が落ちる。振り返るわけにはいかない。


「ちっ、逃がしたか。」


 第5部隊隊長ヘテロ=オーケストラは超高度でMP回復ポーションを飲む。ここならばフレイムバーストにも対応できそうな距離だ。対応と言っても主に逃げるだけであるが。


「マジで死ぬかと思ったッス。 フラン様の相手は他の誰かにやってもらうッスよ。」

 第5部隊の隊員たちは無言で頷くしかなかったという。


忙しいって言ってるのに。

頑張って仕事早めに終わらすと仕事が増えるのは何故?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ