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4-2 氷の魔術師と鉄の巨人

前回までのあらすじ!


いや、前回の話はしない方がいいと思うんだ ← イマココ!

 我が祖先の記述によると、第3部隊隊長である「聖母」ヒルダがレイクサイド騎士団「破壊の申し子」シルキットを捕縛するところから戦闘は始まったようだ。どの時代の純人も生物学的な差を乗り越えて、何故か妻の方が強いというのは決まっている事なのだろうか。獣人の私には理解しかねる概念である。

 その後は左右と中央の3つに分かれての戦闘が開始される。資料の中でのその記述はかなりあっさりとした物しか残っていないが、これだけの人物達がお互いに死力を尽くして戦うとなれば大規模な戦闘が行われたに違いなく、私の祖先がその中にいなかった事が悔やまれる。

 この後に「マジシャンオブアイス」と「鉄巨人」の比較というのは前にも増して世間の話題の種となって行くのであるが、やはりここでも完全な勝敗というのは付いていなかったのだろう。

 両名の戦いに関して、「序盤は引き分け」。ただ、この一言のみが残されている。


         -「新説 レイクサイド史」タークエイシー=ブックヤード著 より抜粋―




「予想外ではあったが、作戦には支障ない。各隊、散開せよ!」


 シルキットが捕縛された事で少しは動揺するかと思われたが、フィリップ殿の号令でまとまるレイクサイド召喚騎士団。さすがに世界最強と言われているだけの事はある。全く乱れた様子がない。

「まあ、そうでなくてはならん。」

 マジシャンオブアイスが数名のアイシクルランスを率いて中央を進む。向こうは左翼が第4部隊、右翼が第5部隊という布陣で、中央が第1部隊と残りの騎士団が待ち受ける形のようだ。一切の小細工をしてくる様子はない。俺たちは第4部隊に合わせて右翼側へと移動する。



「さあ、始めようか。」

 いきなり、中央でロラン=ファブニールの「氷の槍」が炸裂した。そしてそれを知っていたかのように召喚され、何事もなかったように防ぎきるアイアンゴーレム。この中央での攻防を皮切りに両軍がぶつかる。


「馬鹿の一つ覚えでもここまでの威力を持てば最強と呼ばれるのだな、マジシャンオブアイス。」

「この時を楽しみにしていたよ、鉄巨人。」

 両者の対立はその性格すら表しているようである。部隊の先頭に立つロラン=ファブニールに、最後方から陣形を組み続けるフィリップ=オーケストラ。第1部隊が続々とアイアンゴーレムを召喚し始める。その壁を彷彿させる陣形は異常だった。だが、この男にはそれは関係ないらしい。


「我らの「氷の雨」を受けてみるか?」

 アイシクルランスが散開する。角度をつけて交錯させる破壊魔法がこの「氷の雨」の真骨頂であり、その広角な攻撃範囲を全て防ぎきらなければこれは攻略できない。

「まずは、こいつからだ!」

 手近なアイアンゴーレムに狙いをつける。まずはロランの「氷の槍」がアイアンゴーレムを貫いた。そこに一呼吸遅れて各方面のアイシクルランスからの「氷の槍」が追加されていく。向けている方にとっては前面から落ちてくる「雨」そのもの。傘になる物がなければどこかが濡れてしまう。そしてその一つ一つが致命傷に近いため、狙われたが最後であるのが「氷の雨」だった。


 耐え切れず、強制送還されるアイアンゴーレム。第1部隊の中でもそこそこの実力者が召喚したものであったが、それがほんの2~3分で強制送還され壁に穴ができる。

「もともと、エレメント魔人国の使役していたギガンテス用に開発された技だ。図体ばかりでかくて俊敏性のないゴーレムは我らにとっては同じようなもの。さあ、次々行くぞ。」

 そして次の目標を定める。しかし・・・。

「そうはいかない。」

 フィリップの召喚したアイアンゴーレムが前に出る。狙いはロランだった。意外にも俊敏に動くそれはあえて壁を崩してでもロランを封じようと動く。標的を変更せざるをえなくなったロランはフィリップのアイアンゴーレムに狙いを定める。


「仕方がない!」

 ロランの「氷の槍」を合図にアイシクルランスの「氷の雨」が始まる。1人が数回「氷の槍」を打ち込むために、アイアンゴーレムは防御態勢を崩すわけにはいかなった。だが、それはフィリップにとって想定内であったようである。「氷の雨」が数分間に渡ってアイアンゴーレムを濡らしていく。

「なにぃ!?」

 アイシクルランスの1人が叫んだ。ロランも同じ心境であるが、表情に出すわけにはいかない。納得しかねる光景がそこにはあった。以前、ハルキ=レイクサイドに召喚されたコキュートスに続いての経験である。あの時とは事情が違う。

「さすがに、無傷というわけにはいかんな。だが、この程度か。」

 不敵に笑うフィリップ。そこには「氷の雨」を受けておきながらもしっかりと大地を踏みしめて立っているアイアンゴーレムがいた。ダメージが通っていないわけではない。しかし、強制送還はされていない。

「反撃だ!ブラックナイツ!」

 アイアンゴーレムの壁が動き出す。同時に黒騎士たちが召喚され動いた壁の隙間から突撃してきた。


「アークエンジェルズ!」

 アイシクルランスを補助していた第3部隊がこれに対してアークエンジェルの召喚で迎え撃つ。戦場の中央部は乱戦となろうとしていた。そんな中でもフィリップが召喚したアイアンゴーレムを避けつつ「氷の雨」で他の召喚士が召喚したアイアンゴーレムを強制送還させていく。さらにロランが何発かの魔力をかなり多めにこめた「氷の槍」を放ち、フィリップ召喚のアイアンゴーレムを強制送還させる事に成功した。


 若干、アイシクルランスと第3部隊の合同軍が押しているように見える。

「第1部隊はフェンリル召喚!騎士団は後ろに乗れ!」

 しかし、召喚されたフェンリルと後ろに乗った騎士団員たちの協力で破壊魔法を撃ちつつ突撃する第1部隊。これにより多くのアークエンジェルたちが強制送還されてしまった。アイシクルランスの中でも負傷を負ったものが出たようである。


「あくまでも自分は動かないのだな。」

 ロランは後方で指揮を執るフィリップに苛立っていた。自分のみが最強の称号に拘っているようにも見え、年下に相手にされていない事を自覚する。

「マジシャンオブアイスをなめてもらっては困るな。」

 ロランは両手に魔力をこめる。数秒の隙はできるが、この乱戦のさなかにその隙を突ける敵はいなかったようだ。自身の称号をかけて魔法を放つ。


「アイスストーム!」


 これも「氷の槍」と同様に一般的な魔法である。一般的には広範囲に氷系破壊魔法を放つ中級魔法と思われているが、人類最強の氷魔法使いが放つと威力が桁違いであった。次々と凍りついて行く召喚獣たち。

「く、黒騎士たちが!」

 ほとんどの黒騎士と、数体のアイアンゴーレム。さらには召喚士たちの騎乗していたフェンリルの多くがアイスストームによって強制送還される。フェンリルが強制送還されて放り出された召喚士と騎士団員の中にはアークエンジェルに捕縛された者もいた。



「父親ってのはいくつになっても娘の前では恰好つけなきゃならんのだよ。今回は孫も近くにいるしな。」


じーじ、頑張る!

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