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3-5 逃亡と計画と

前回までのあらすじ!


神様参上!友のピンチには駆けつけるけど、友のいる世界はめちゃくちゃにしてやるよ!


え?いいの?


・・・いや、あの・・・。何と言うか、勢いで叫んでみただけなんだ。


・・・そうか。 ← イマココ!

 以前シウバに作ってもらった濃縮MP回復ポーションを飲む。俺のMPですら完全回復させるほぼ地獄のようなまずさの薬品だ。本当は粉薬にしたかったのであるが、乾燥させると魔力が抜けていってしまうようだった。そのためにドロドロの液体になっている。これを飲むくらいならば、世界はどうでもいいかなと思わないでもない。だが、相手は曲がりなりにも神だった。覚悟を決めて飲む。まずい。

「コンソール使えなくなったんじゃなかったのか?」

 以前オリジナルの神楽佳弘に約束してもらった事があったはずだ。コンソールコマンドは封印すると。

「そこまで知ってるんだね。実は先生に行く前のバックアップで復元してるから、何が起こったかは覚えてないんだ。でも、僕は先生と哲也に負けたんでしょ?」

「復元か・・・。テツヤは世界の仕組みを知らないから、言うんじゃねえぞ。」

「へえ、そうなんだ。」

 黒色の魔装に身をくるんだ神楽が笑う。ナトリとは違ってその手には片手で使う剣が握られていた。その笑いがどことなく自暴自棄になった人間を思い起こさせるのは何故だろうか。


「実はお前は俺と哲也に説得されて、最終的には自殺したんだよ。」

「先生って、嘘をつくのが下手だよね。ヴァレンタイン近郊に戦いの跡がばっちり残ってたよ。哲也は「神殺し」を名乗ってるんだって?」

 さすがに騙されないか。たしかにあれだけ爪痕を残しているんだったら、こんな嘘は通用しないだろう。

「コンソールを持ってた僕に勝ったという事は、どうせ僕の自滅なんだろうと思ってね。精神が安定してなかった時の僕はすぐに冷静さを失ったから。でも、大丈夫。復元後はなんとか精神も安定・・・して・・・いる・・・よ?」

 なんか、急に勢いなくなったけど、悲しい出来事でもあったんだろうか?


「とにかく、コンソールができなくても僕は神だ。そして世界で変わらない物は友情だと気付いたんだ!ナトリは僕の友人だし、友のピンチに駆けつけるのは当たり前の事だよね!」

「おぉ、神よ!」

「やだなぁ、ナトリ!そこは神じゃなくて友だよ!」

 友がピンチになるまでどっかをほっつき歩いていた奴が言うセリフではないけど、こいつを逆上させるとロクな事がないから放っておこう。それよりも今後の方針を決めねばならない。


 まずは神楽を撃破して世界樹の塔も破壊する。これができたら最高であるが、おそらくは神楽の撃破が難しいだろう。先ほどの戦いぶりからしても少なくともテツヤには軽く勝てるだけのレベルがあるに違いない。神楽を何とかせずに世界樹の塔を破壊するのも難しそうだ。では、どうするか?


「あっ!あれは何だ!?」

 神楽とナトリが2人して俺が指さした方を見る。そこにあるのは太陽だ。そして、それだけだ。

「えっ、何?」

 馬鹿が釣れた所でウインドドラゴンがテツヤを回収する。

「アホが見ーるー!豚のけーつー!ハエがとーまーるー!」

 そして逃げる。逃げ台詞も完璧だ!


「1万年ぶりに聞いたよ!先生たちにとっても完全に死語だよね!」

 飛行の魔法で神楽が飛んでくる。さすがにウインドドラゴンの全速力に先回りをするほどの速度はでないようであるが、徐々に距離が詰まってきている。どれだけ速いんだ?

「逃がさないよ!先せ・・・うわっぷ!」

 神楽のすぐ前に大量のアイアンドロイドを召喚してやる。超高速で突っ込んできているために回避ができなかったようだ。アイアンドロイドの槍が神楽に突き刺さる・・・かと思ったが、魔装で作った鎧ではじかれてしまったようだ。だが、それによって大幅に減速した。そのタイミングでクレイゴーレムを召喚して片方の足を掴ませる。そしてその周りに大量のノームを召喚して足をつかんだ手を離されないようにする。

「あぁっ!こいつ、離せ!」

 魔装でできた剣がクレイゴーレムの腕を切り落とすまでにかなりの時間がかかったはずだ。そして、その時にはウインドドラゴンははるかかなたまで飛び去っていた。

「よし、撒けたか。」

 ウインドドラゴンはそのままテツヤを掴んだままヴァレンタイン大陸へと飛ぶ。これは早急に対策を練る必要があるな。レイクサイド領を奪われてる場合じゃない。さっさと取り返す所から始めよう。




「ヨシヒロ神はどこに行ったんだ?」

 俺たちはヨッシーが帰ってくるかもしれないという不安とともにレイクサイド領へと向かう。目指すは第3部隊の宿営地であり、ペニー殿によれば、そこには洗脳をされていない保証をされた極僅かな人数のみがいるという。

「ウォルター様は大丈夫そうだ。とりあえずはヒルダ様がおられるその宿営地に向かおう。」

 移動はユーナのウインドドラゴンで行う。6人乗っても特に問題のない大きさであるからレイクサイド領まではあっという間である。この間にもヨッシーがエリナを狙って「ワープ」してこない事を祈る。早めに神対策を行う必要がありそうだ。今のままではヨッシーが現れただけで敗北が決定してしまうようなものだから。


「あれだ。」

 レイクサイド領主館の北の湖付近にその宿営地はあった。

「ここは前に奥方様と来た事があるわ!」

 ユーナにとってはちょっとした思い出の場所らしい。奥方様とロージー様と3人でここで過ごしていたら、領主館では3人が攫われたんじゃないかと大騒ぎになっていたとか。今でもその話が出るとヘテロ殿やテトが青い顔をして気分が悪くなる事があるという。


「ユーナ!無事でしたか!」

 なんと宿営地には奥方様がおられた。フランさんやロージー様の姿も見える。そして更にすごいのはアイシクルランスの数名率いて「マジシャンオブアイス」ロラン=ファブニール様が来ていることだった。あとから聞くと、奥方様たちはロラン様を頼って脱出したようだ。洗脳をかけられた騎士たちからすると、奥方様やロージー様も抹殺の対象となってしまうらしい。


「洗脳が解けるのですか!?」

 俺はパティを奥方様に紹介する。

「あぁ、大丈夫だ。ただし戦闘中に解除するわけにはいかないぜ。ある程度はじっとしててもらわねえと回復魔法がかからねえ。」

 パティの「キュアコンディション」は効果が表れるまでは数秒から数十秒かかる。


「では、今現在領主館にいる騎士団を1人ずつ無力化させて解除させてやればいい。」

 マジシャンオブアイスが事も無げに言う。相手は第1、第4、第5部隊であり戦闘に関しては向こうが専門だ。諜報活動の第2部隊と、回復補助活動の第3部隊では分が悪いのではないか?

「「鉄巨人」フィリップ=オーケストラとは一度やり合いたかった。奴はいつも後方で指揮を執りたがるからな。どちらが強いのかとても興味がある。」

 以外にもマジシャンオブアイスは世間の噂が気になるようである。たしかにこの2人とフランさんはよく比べられる。ロラン様にとってフランさんは冒険者時代の先輩に当たるから優劣をつけたがる相手ではないそうだ。しかしフィリップ殿は違うという。ロラン=ファブニールおよびアイシクルランス、第3部隊は第1部隊を拘束する役割をするという。


「ほっほっほ、では第5部隊は私が相手を致しましょう。ウォルターたちに手伝ってもらいましょうかな。」

 フランさんおよび第2部隊は第5部隊とあたる作戦となった。


「では第4部隊はよろしくお願いします。」

「はい?」

「ですから、第4部隊に当たるのは第6特殊部隊という事で。」

 さらっと奥方様がすごい事を言わなかったか?俺たちだけで第4部隊、テトやリオンの相手をしろと?やつらウインドドラゴン召喚しまくるんだぜ?

「ふぅ、身内とは戦いたくなかったんだが仕方ない。俺も手伝うよ。」

 いや、ペニー殿。まだ第6特殊部隊が戦うのを了承したわけではな・・・。

「えっと、あの・・・。」

「シウバ様!私とエリナでリオン殿は止めて見せましょう。」

「うん、頑張るよぉ!」

 マジェスターとエリナがやる気になっている。付き合い始めってのは厄介だな。

「いや、だから・・・。」

「じゃあ、シウバがテト隊長をよろしくね!私とペニーは他の人達を止めるから!」

 最後の止めをユーナに刺されて、俺は退くに退けなくなった。



 テトと戦う?あいつって「深紅の後継者」だぞ?レッドドラゴンだろうがウインドドラゴンだろうが、コキュートスだろうが召喚できる変態だ。それを一人で拘束させようとは、なんて無茶振りを・・・。

「頑張れよ、「邪王」。俺、戦いは無理だから。」

 そしてパティはいつもどおり一言多い。


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