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2-7 六人目の召喚士

前回までのあらすじ!


ご主人!今日は僕のおごりだ!最高級の食事を!


ご主人!今日も僕のおごりだ!最高級の酒を!


ご主人!今日も僕のおごりだ!ドン○リピンクをあけてくれ!


ご主人!いつもの! ← イマココ!

 失踪者の捜索隊は第2部隊を主体として組まれていた。そして、その役割はほぼ終わったと思われている。失踪したほとんどがスクラロ島にいるであろう事をヨーレンがシウバを通じてハルキ=レイクサイドまで伝えていたからだ。そして、いまではその洗脳を受けた騎士たちはスクラロ島だけではなく、レイクサイド領にも多くおり、クロノスと名乗る男を中心としてレイクサイド領主館を占領してしまっている。


「マジェスター、悪いがエリナだけの捜索を続けるわけにはいかなくなった。」

「さすがに理解しています。ですが、私はこのままエリナの捜索を続けさせてください。」

「ウォルター様、さすがにマジェスター殿1人では危険というもの。私もついて行きましょう。」

「そうしてくれると助かる、ペニー。」

 ウォルター班にはマジェスター=ノートリオの他に第4部隊から副隊長のペニーが加わっていた。

「いえ、私としてもテト隊長と戦うのはごめんですから。」

 第4部隊はそのほとんどがクロノスの洗脳下にある。第4部隊で唯一洗脳を受けていないといっても過言ではない状況に置かれて、ペニーは積極的にレイクサイド領主館奪還の部隊に加わる気になれなかった。

「ペニー殿、助かる。」

 ヨーレンからの情報によると、エリナはスクラロ族の1人とともに消えてしまったという事だった。であるならば、スクラロ島に連れ去られて洗脳されてしまっているという可能性が高かったのであるが、ヨーレンの話ではその消えたスクラロ族も捜索されているという事だった。では、2人はどこに消えたのか。


「エリナ・・・。」

「マジェスター殿、そう力むな。全力で取り組まねばならない事も多いが、世の中は少し余力を残して全体を見据えたほうが上手くいく事も多い。」

 普段は自分よりかなり年下のテトを補助する立場だけあって、一歩後ろから全体を見る力に優れている。

「まず、エリナ殿が何故かそのスクラロ族を危険視し、そして何を行おうとしたのかを考えてみるべきではないか?」

 ペニーの言いたい事はこうだ。エリナたちはどこかに行ってしまったと考えるから見つからない。むしろ、エリナは自分の意思で潜伏しているのだとしたら?その原因はそのスクラロ族である。そいつを危険視したために、出てくることができない状況とは何か。それはエリナがそのスクラロ族を封じ込めているという仮説だった。

「彼女ほどの人物が危険だと判断したんだ。そのスクラロ族を引きつけておくのが自分の役割だと判断したのかもしれないぞ?」

 実際にペニーはほぼ正鵠を射ている。ただし、相手が神であり、まさかエルライトの宿で酒飲みながらの食っちゃ寝生活をしているとは思っていない。

「エリナ殿の事であるから、やられたとは思いにくい。ならばそのスクラロ族から逃げながらも引きつけている最中やもしれん。つまり、いままで行った事のあった場所であろうとも、向こうが移動しているのであるともう一度行く価値があると思わないか?」

「・・・そうだな!礼を言うぞ、ペニー殿!」

「さあ、俺たち2人になって逆に動きやすくなった。各地の冒険者ギルドと酒場を回るとしようじゃないか。それにエリナ殿に出会った時に疲れ切っていたら彼女のピンチを救おうにも足手まといになる。休息も重要だ。ここから近いのはエルライトだな。まずはあそこで聞き込みと旨い物を食う事から始めよう。」

「ペニー殿・・・。」

 そして2頭のワイバーンは他の捜索隊と別れてエルライトの町へと向かう。



「はー、ここがヴァレンタイン大陸。純人ばっかですなぁ。」

 パティは先ほどから周囲に興味があるものばかりらしい。今までオーブリオン大陸から出たことがなく、純人は魔人族の奴隷のような存在しか知らなかったからだ。

「ここはエルライトの町だ。王都ヴァレンタインやシルフィードはもっとでかいぞ。」

「へぇー、オーブリオンじゃここまでの町はなかったからなぁ。」

「ここに数日滞在して第2部隊からの接触を待とうと思ってる。その間にしたい事といったら、ウインドドラゴンの素材集めだけど、どうしようか。」

「私、冒険者ギルド行って素材になる依頼があるかどうか見てくるよ!」

「あ、俺も後から行くよ。その前に薬屋の師匠の所に寄ってくる。」

「師匠ですと!?」

 パティが、薬の事に食いついた。

「シウバ殿の師匠っつーことは、さらにすごい薬を持ってるはず!私もぜひ、そっちに行きます!」

「あぁ、構わんけど。」


「師匠、御無沙汰してます。」

 俺はパティを連れて薬屋の師匠のもとへと行った。

「誰かと思ったらシウバか。」

 師匠は俺のレイクサイド装備に驚いていたが、歓迎してくれた。最新のドーピング薬を見せると褒めてくれた。新たな薬の調合の仕方を交換し合う事もできた。

「そういえば、お前の集めてた素材をマスタングが預かってるらしい。後で顔を出しておけよ。」

 言われてみると「奈落」であつめた素材を回収したっていう手紙が置かれていた。あの中にはウインドドラゴンの契約素材であるマザースネークの頭があるかもしれない。早めに冒険者ギルドに顔を出すこととしよう。


「おう、マジでレイクサイド騎士団の鎧じゃねえか。」

 受付おっさんは相変わらずだった。先についてたユーナと話している。

「久しぶりです。」

「本当に久しぶりだぜ。今まで何してたんだよ。」

 ゆっくりと話していたい所であったが、現在はレイクサイド領への潜入のために第2部隊との接触を図らなければならない時である。詳細はあまり話さずに、魔物の素材が必要である事を説明する。

「あとは何が必要なんだ?」

「マザースネークの頭にダイアウルフの皮って所かな?」

「それだったら、お前らが「奈落」に置いてったもんの中にあったと思うぜ。」

 ユーナが喜ぶ。

「ほんと!?」

「あぁ、仕事が一段落したら倉庫から回収しといてやるよ。夕方にまた来い。」

「ありがとう!じゃあ、それまでに夕飯の食材でも仕入れに行かなきゃ!」

 そしてその手には怪鳥ロックの討伐依頼が・・・。まあ、素材が手に入る目星がついた事だし、第2部隊が接触してくるまでに自由行動もありだろう。

「あ、これは私だけで十分だから、シウバたちは第2部隊が接触してくるのを待っててね!」

「あ、うん。気をつけてね。」

「ケルビムいるから大丈夫よ!」

 あのクソ天使、いざという時に頼りにならんからな。心配ではある。


 しかし、その心配もよそにユーナは怪鳥ロックをあっという間に仕留めてきた。

「残りの肉はギルド市場が買い取ってくれたわ!」

 こちらも受け付けおっさんから残りの素材を回収したところである。これでユーナはウインドドランと召喚契約を結ぶ事ができる。

「はい、ユーナ。これ契約の素材だよ。」

「さっそく契約結ぶわね!」

 エルライト郊外でウインドドラゴンと召喚契約を結ぶ事に成功したユーナはちょっと顔が赤くなってた。レイクサイド召喚騎士団にとって、レッドドラゴンやウインドドラゴンとの召喚契約を成功させる事はかなりのステータスになるらしい。しかもユーナにとってはヘテロ殿ですら契約していないウインドドラゴンの召喚である。レイラも含めて6人目となるウインドドラゴンの召喚士はかなりの自信につながる事だろう。

「シウバ!ありがとう!」


 その日の夕飯はユーナが腕によりをかけた怪鳥ロックのハニーマスタードグリルだった。もちろん泊まった宿は昔、ユーナと一緒に泊まっていたあの安宿である。

「これ、ウマー!」

 パティが口いっぱいに肉をほおばりながら叫んでいる。こいつさえいなければもっといい雰囲気だったのにとも思うけど、まあ、仕方ない。これからレイクサイド領への潜入を考えなきゃならないけど、たまにはこうやってゆっくりするのも必要なのかもと思うくらいには余力ができてきた。はやく、第2部隊の誰かと接触するためにはどうすればいいだろうかと思いながらも、なんとかなりそうな気がしてくる。

 しっかり食べて、しっかり飲んだ後、俺たちはぐっすりと眠る事ができた。



 しかし、翌日に俺たちに接触したのは第2部隊の誰かではなく、全く予想してなかった人物であった。


サイドストーリー第9話UPしてまーす

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