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2-6 不屈の精神

あなたー!あなたー!

今日も読者の方がいらしてるわよー!

・・・おかしいわね。ちょっとお待ちくださいね。


あなたー!何を引き籠ってるのー?

そんなに11月1日から1通も感想きてないのがショックなのー?

自分で感想欄止めてた時もあったじゃないの!

何回スマホでチェックすれば気が済むのよ、この前なんて信号変わったの気付いてなくてクラクション鳴らされたでしょー?


え?もうだめだ?死のう?


それは完結させてからなら別にかまわないけど・・・?


「クロノスっ!!」

 レイクサイド領レイクサイド領主館では第2部隊アレクの怒号が鳴り響いていた。普段はこのように大声を出すような人物ではなく、さらには隠密という任務の性質上目立つような事は避ける人物である。その彼が大声を上げながら歩いている。

「クロノスっ!!いるかっ!?」

 速足で駆け込むのは領主の部屋である。本来であればその主の執務室として使用されるべき部屋であるが、何故かクロノスはここを居室として使用する事を頑なに押し通した。もともとはそれぞれがその能力を買われて要職についている能力至高主義のレイクサイド召喚騎士団の中で、この新参者がなぜそこに拘るのかという疑問こそ持つことはあっても、仕事に支障され出なければどこでもいいという意見が大半であるために誰も反対まではしなかった結果である。


「なんだ?騒々しい。」

 普段から顔を隠しているこの人物を良く持っていない者も多い。いつからかレイクサイド領に紛れ込んでいたこの男が何故このような中枢に役割を与えられているのかという事も最近になって騎士団の中では不満があるようだ。しかし、今はそれどころではない。

「まだハルキ様の消息は分からんのか!?」

「フィリップたちが取り逃がしてから、どこに行ったかも分かってない。最後は南に向かって飛んで行ったそうだな。」

「くそぉ!こんな時にウォルター様もヒルダ様も裏切るなんて!」

 洗脳をかけられた彼らの中では正常な思考の第2、3部隊が「裏切った」事となっており、ハルキ=レイクサイド「様」を抹殺する事が世界の常識となってしまっている。この矛盾点に気付く者がいないのが「ブレインウォッシュ」であり、クロノスのかけた高度幻惑魔法の一つである。

 

「まあよい、スクラロ島の「世界樹の塔」さえ完成すればハルキ=レイクサイドがどうなろうと関係ないのだからな。」

「ハルキ=レイクサイド「様」だ。貴様如きが敬称をつけずに呼んでいいお方ではない。」

 洗脳といえども万能ではない。特にハルキ=レイクサイドの殺害のみを強く洗脳させてしまっているために、そのほかの敬意を含めた諸々の感情や、クロス=ヴァレンタインに対する悪感情が消せるわけではなかった。しかし、クロノスがクロス=ヴァレンタインだと気付いているのは現時点でアレクのみである。しかも、そのアレクも確証があるわけではなかった。

「とにかく、そのハルキ=レイクサイド「様」とやらがここに舞い戻ってこないようにする事が大事だな。スクラロ島の戦力は十分であるし、レイクサイド領を押さえておけば奴が単独で動こうにも何もできんだろう。」

 自分の「ブレインウォッシュ」は解かれたことがない。それはクロス=ヴァレンタインが幼少期から鍛えてきた幻惑魔法を超える事のできる回復師を見たことがないからである。さらにクロス=ヴァレンタイン以上の幻惑魔法の使い手がいれば「ブレインウォッシュ」で上書きは可能であるが、これも見た事がない。故にクロス=ヴァレンタインは己の洗脳魔法に絶対の自信を持っていた。このような所がハルキ=レイクサイドに言わせると「詰めが甘い」所であり、洗脳を選ぶ所が「せこい」所なのだろう。

「ふん、どこまで信用できるものだか。ハルキ様の情報が入り次第こちらにも回せよ。」

「ああ、分かった。約束しよう。」

 アレクが出ていくのを確認してからクロノスは仮面の下で眉間にしわを寄せる。以前は顎で使っていた人物がまさかレイクサイド召喚騎士団の者だったと知った時の怒りは尋常ではなかった。

「お前もそのうちに殺してやるから待っていろ。」

 呪いの言葉のようにつぶやく。そしてここには自分が洗脳をかけた多くの騎士がいる事を思い出して笑みをこぼす。今の所は順調に計画は遂行されている。ハルキ=レイクサイドの抹殺は失敗したが、それは奴の部下が無能だったからだ。そう思うと怒りは湧いてこない。そして彼の目的が遂げられるまでにもう少しの所まで来ている。あれが完成すればハルキ=レイクサイドは為す術がないはずだ。殺すよりも、その絶望に満ちた顔を見るのもいいかもしれない。神がいれば負けるはずもない。

 今の所は順調に来ていた。



「何故だぁぁぁぁぁあああああ!!!」

「もう、うるさぁいですぅ。」

 エルライト領エルライトの町の宿屋。昼間っから酔っぱらっているのはヨッシーこと、ヨシヒロ神である。相手はもちろんエリナであり、いくら断ってもヨッシーは諦めてくれそうにもない。

「だから、私には好きな人がいるんですぅ。ヨッシーさんの想いには答えられません!残念でしたぁ。でもその人は全然振り向いてもくれないんですよねぇ。」

「エリナに振り向いてくれないだとぉ!?万死に値する!いや、でも振り向いて付き合い出すのもちょっと・・・。だ、誰なんだ!?そのエリナが好きな人っていうのは!?」

「それを言うとヨッシーさんが抹殺しに行くんでしょぉ?言うわけないじゃないですかぁ。」

「そ、そりゃそうだけど・・・。」

「やっぱり、抹殺しに行くんですねぇ。なんて器の小さい人・・・。」

「なっ!?そんな事ないよ!僕はそんな事しないからねっ!」

「はい、約束ですぅ。指切りげんまん、嘘ついたら死んでぇ。」


 ここ数日で確実にヨッシーを乗りこなしているエリナ。完全に拒絶するのではなく、少しだけ期待させ、そしてそこからエリナにとって有利な条件を導き出す。このようなやり取りもこの宿ではおなじみとなっており、宿の主人の同情的な目がヨッシーに注がれている。すでに世界を滅ぼさない、あとでスクラロ族たちの計画を話す、エリナが行動を起こすときに手伝うなどの約束をさせられてしまっている。そしてそこにエリナの好きな人を抹殺しないが加えられた。


「さすがヨッシーぃ。器が大きい人って格好良いですよねぇ。」

 一言もヨッシーの器が大きいとは言っていない。

「え?そ、そうかな?」

「あ、エリナ、怪鳥ロックのから揚げが食べたいなぁ。」

 そして深く考える時間を与えないのも完璧である。

「よしっ!待っててよ!すぐに獲ってくるからさ!御主人!から揚げの調理の準備を頼む!」

「・・・はいよ。」

「じゃあ、20分ほど待っててね!」


 そういうとヨッシーは宿から出ていく。さすがに宿の主人の前で「ワープ」を使うという事はしないという頭は働くのだろうが、20分で怪鳥ロックを獲ってくる時点ですでに何かがおかしい事に気付いていない。そして、それはすでにこの宿の名物にもなりかけていて、ここがあまり流行っておらず普段はヨッシーとエリナの他に客がいない状態でなければ大騒ぎになっている所であった。宿の主人はすでに考えるのを止めたようである。

「いってらしゃい。・・・ふう。」

 大きな溜息が出る。普段は毛嫌いしている「男にたかる女」を演じるのも辛い所だ。しかし、なるべくあのヨッシーと名乗る規格外の男をレイクサイドから遠ざけておく必要がある。彼は本当に危険だ。

「もしかしたら、本当に神なのかもしれないですぅ。」

 神でないとしてもその規格外の力は脅威以外の何物でもない。そんな男と共に行動するというだけでも地味に精神をやられる。この束の間の休息がエリナにとって重要だった。


「ただいまっ!今日は誰かが怪鳥ロックを狩ってきてたらしくてギルド市場に売ってたよ!」

 予想よりも10分以上はやくヨッシーが戻ってくる。エリナは自分に気合を入れなおす。

「怪鳥ロックといえばぁ、プレジデント・キラービーのはちみつで作ったハニーマスタードグリルもおいしいって聞いた事がありますぅ。」

「えぇ!?ちょ、ちょっと待っててよ!」


 こうして今日もエリナは戦う。いつもとは全く違う分野で。


「はぁ、はやく誰かと連絡取らなきゃ。」

 ヨッシーの目をかいくぐり連絡を取るという事の難易度は非常に高い。もう少しヨッシーの気を引いていなければならないだろう。

 しかし、敵はヨッシーがいないだけで戦力の8割以上がなくなったに等しいに違いない。

 一般的な戦力の戦いであればレイクサイドと戦って勝てるはずがない。何故なら、あそこには自分の尊敬する人達がいるからだ。少しメンタルが弱いが絶大な魔力と溢れんばかりの知力を持った領主、自分を好きだと言い続けてくれる絶対にあきらめない騎士、自分には敵わない常に元気で皆を励ましてくれる女召喚士、そしていつも最後は何とかしてくれる憧れの人。彼らがいて、負けるはずがない。


 自分は自分のやるべき事をする。そう誓うエリナであった。


2人しか泊まってないのに何故かめっちゃ儲かる宿屋。

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