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2-4 反撃の回復師

前回までのあらすじ!


クロスとクロノスって1字しか違わないじゃん!


本当にあいつ偽名使うつもりあったんか?


いや、作者が手を抜いたに違いない! ← イマココ

 俺たちを乗せたウインドドラゴンがヒノモト国へと入る。ここまでに1日かかってしまった。すでに夕方である。魔力上昇させたウインドドラゴンがどれだけの速さで南に下って行ったのかが良く分かる距離だった。もう南の大陸へ行く事もないだろう。直接魔王館へと乗りつけるが、思ったより騒ぎになっていない。俺たちが来ることを予想していたのだろうか。

「おっ、ここに来たのか。」

 何故かたまたま国に帰っていた魔王テツヤ=ヒノモト。この魔王は本国にいる事の方が少なくて有名である。最近、怪鳥ロックを騎獣にして飛び回る事を覚えたためにワイバーン召喚士を借りる事もなくなっている。そのうちヒノモト国には怪鳥ロックの編隊が組まれる事になりそうだ。

「第3部隊のヒルダからおおよその事は聞いてるぜ。第2部隊のほとんどとも連絡がとれているそうだ。だが1、4、5部隊はほとんどやられちまったようだな。」

「なんでそんなに嬉しそうなんだよ。」

「いやいや、あの「大召喚士」ハルキ=レイクサイド様がこんな窮地に立たされてるなんて考えただけでも・・・ぶふっ。」

 笑い転げるテツヤ様を無視してシン=ヒノモト殿もやってくる。

「こっちの国でも洗脳解除の方法を検討しているよ。おそらく、旧オーブリオン王国のお抱えだった回復師がなんとかできるんじゃないかな?前例がありそうだってハルトが言ってたから。今、オーブリオンに帰ってもらってる。」

 おぉ!それはいいニュースだ!洗脳さえ解いてやればすべて解決しそうな気がする。なにせ元からの敵はスクラロ族とクロノスだけだからな!


「ハルキ様、そうと分かればオーブリオン大陸行きましょう!」

「え・・・俺も?」

「え?」

 あれ?俺、何か間違った事言った?

「いや、だってさ。洗脳されてる奴らの標的は俺だけだからシウバたちと一緒に行動するとお前らも危険に巻きこんでしまうでしょ?それに洗脳解ける回復師がいたら連れてってドーピングかまして領主館上空でぶっ放つだけぢゃん。俺、必要なし。ね?後は任せた。イツモノヨウニ。」

「ね?じゃないですよ!それじゃハルキ様は何するんですか!?護衛もなしで!」

「これから事態が治まるまではこの最強海洋国家「ヒノモト」の魔王館で惰眠を貪りつつ、美食を堪能しようかと思う。警備も完璧だ。あとは優秀な部下がなんとかしてくれるよ。あははは。」

「・・・・・・。」


「シウバ!シウバ!ちょっと・・・!」

「どうしたの?ユーナ。」

「たぶんね、ハルキ様はいつも以上に落ち込んでるよ!見てよあの自暴自棄な死んだ魚のような目!すでに思考放棄しちゃってるんじゃないかな!?」

「確かに・・・明らかに反応が軽い。いつもだったら、「もうだめだ」からの「死のう」までが見られてもおかしくない状況だってのに。」

 隣でまだ床を叩きながら爆笑している魔王をちらっと見て納得する。ハルキ様が「お前ら、聞こえてるんだけど」とか言ってるのは無視だ。

「むしろ、その先に行っちゃってるよね!洗脳とはいえ裏切りとか一番耐性なさそうだし!」

 たしかにこの領主、メンタルめちゃ弱い。

「・・・2人で行くことにしようか。・・・シン殿。ハルキ様お願いしてもいいですか?」

「あ、あぁ、いいよ。それぐらい、普段の借りがあるしね。魔王館でだらけさせておくけど。」

「えぇ、普段は激務ですから休ませてあげてください。あと、おいしい物食べさせてあげてくださいね。」

「了解。オーブリオンついたらハルトに会ってよ。事情を説明する手紙書いてあげるから待ってて。」

「ありがとうございます。」

 こうして俺たちはまたオーブリオン大陸へと向かう事になった。



「で、シウバたちと別行動してどこ行くつもりだ?」

「あら?ばれてた?」

 シウバたちがいなくなり、テツヤに指摘されるとすっと素にもどるレイクサイド領主。最近はこんな腹芸もできるほどに嫌な世界にどっぷり身が浸かってるのを本人は嫌がっている。

「標的が俺だけみたいだというのは事実なんだよ。だからあいつらと一緒に行動してると危険なのは向こうの方であって、身動き取れなくなるのは嫌なんだ。それに、あいつら優秀だからさ。多分、放っておいても解決しちゃうよ。大丈夫。」

「で?」

 それでは解答になっていないとばかりに魔王が詰め寄る。

「今回の騒動の前の段階で、どうやら神楽が復活したんじゃないかと思えるような所があってさ。」

「・・・神楽先輩が?まじか。」

「お前、直接の下手人だしな。記憶が残ってるとしたら絶対恨まれてるぞ。「神殺し」なんて名乗ってるしな。」

 前世が人間である魔王は青ざめるが、魔人族の顔色では青ざめるという表現は正確ではない。

「それで、どうすんの?」

「まずは、神楽がいるとすればスクラロ島だろ?」

「え?行くの?」

「もちろん「神殺し」であるお前もな。」

「・・・・・・。」



 ヒノモト国に1泊してから俺たちはオーブリオン大陸へと向かった。

「シウバ殿!久方ぶりだな!」

 廃都オーブリオンにはハルト=オーブリオンをはじめとして旧オーブリオン騎士団のほとんどが常駐している。北のスクラロ国の侵攻に備えているのが現状であるが、そのために急ピッチで開発された都市は依然の面影を少ししか残していなかった。

「ハルト殿!今回は、頼みがあってやってきました。」

 俺はシン=ヒノモトからの手紙を渡して簡単に現状を説明する。

「ハルキ殿は大丈夫だったのですね。こちらでは「ブレインウォッシュ」について知っている回復師を集めていますが、なかなか実際に治療したという者はいないですね。ほとんどが文献で存在を知っている程度の者です。ですが、ランドルフにできそうな人物の心当たりがあるとかで。」

 ランドルフ=マートンは旧オーブリオン騎士団の一員である。一旦引退していたが、ハルト=オーブリオンのお目付け役として復帰していた。

「はい、実は私の末の愚息が回復師でしてな。他は全員騎士として白虎との戦いで討死したのですが、回復師なんぞになったあれだけが生き残りまして。回復師としては優秀でした。もしかしたら洗脳も解けるやもしれません。」

「という事でランドルフの息子を探しに行こうと思っていた所なんです。是非、シウバ殿もご同行願いたい。」

「もちろんです。」

 ランドルフさんの息子はパティ=マートンというそうだ。今はマルセインあたりにいるのではないかという事だった。そのため、その日のうちにハルト殿とランドルフさんを載せてワイバーンでマルセインへ移動する。パティ=マートンはすぐに見つかった。以前と同じ場所に診療所を開いていたようだ。しかし、それからが長かった。


「くぉのクソ親父が!よくもノコノコと顔を出せたなぁ!」

「うるさい!このバカ息子がぁ!白虎に向かって死んでいった兄たちに謝れぇぇ!!」

「よい、ランドルフ。下がっておれ。パティよ、私からの願いを聞いて欲・・・。」

「お前もう王様じゃねえんだろうが!偉そうにしてんじゃねえよ!」

「・・・ブチッ!貴様ぁぁ!!ハルト様に何て口のきき方をぉぉぉ!!!」

「うっせえよ!患者が大量に待ってんだ!お前らもうどっか行けぇぇ!!」


 と、いう感じで数時間が経とうとしていた。

 

「シウバ殿、申し訳ない。我らでは力不足のようだ・・・。」

 がっくりとうなだれるランドルフさんと、すでにぐったりとなってるハルト殿。なんだかすげえ人を相手にしなきゃならんみたいだ。だが、この人が洗脳を解除できるというのであれば説得は必要である。


「シウバ!ファイト!」

 いつもどおりユーナの前で恰好いい所を見せねばなるまい。レイクサイド領で待つ多くの仲間たち。そして洗脳に苦しむ仲間たち。すでにクロノスの手によって仲間に矛を向けるという事を強いられてる。一刻も早く、彼らを解き放つ必要があるのだ。そしてこのままでは世界樹の塔の建設にヨシヒロ神の復活を阻止できなくなってしまう。この説得に世界がかかっていると言っても過言ではあるまい。俺はパティを説得することとした。どんな人でも話し合えば分かり合えるはずだ。



「パティ=マートン殿、私はシウ・・・。」

「純人は死ね。」


 そして瞬時にプランBが発動して、パティ=マートンは俺のワイバーンに括りつけられて輸送する事にした。もちろん尻尾側の羽ばたく度に上下する場所に決まってる。


「貴様らぁぁぁぁ!!許さんぞぉぉぉ!!」


 ヒノモト国オーブリオン領の領主様に逆らうのが悪い。こっちは急いでんだ。この後、廃都オーブリオンで個室に監禁した後にいろいろと「説得」したら洗脳解除の方法を喋ってくれた。もっと早く喋れば良かったのにと言ったけど、なぜかハルト殿が目を合わそうとしてくれないのはなんでだろうか。


あれ?パティ=マートンって没キャラじゃなかったんですか?

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