2-1 裏切りの精鋭
前回までのあらすじ!
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「つまりはその「ブレインウォッシュ」をかけられたと思われる奴の特定ができないと。」
俺たちはヨーレンから事情を聴いた後に王都ヴァレンタイン滞在中のハルキ様の所へ行った。むしろレイクサイド領ではしない方がいい話も混ざっている。誰が裏切り者なのかを疑いながら生活するなんていい事が起こるとは到底思えない。ハルキ様の指示の内容次第では当分レイクサイド領に帰らない方が無難な気がしてきた。
「はい、ヨーレンの話では、他に失踪中の何名かがそのクロノスという男の「ブレインウォッシュ」をかけられたようですね。他にも洗脳状態のままでレイクサイド領に残っているやつがいるようです。」
ヨーレンはレイラや他の洗脳された味方が気になるからとスクラロ島へ帰っていった。ひとまずは洗脳された振りを続けるそうだ。それに洗脳を解く方法も探してみるらしい。
「「ブレインウォッシュ」か・・・。・・・まさかな。」
ハルキ様でも洗脳の解除方法は知らないようだった。
「シウバ、引き続きこのまま第6特殊部隊は他と連携をとらずに単独行動してもらおう。それに相手が「ブレインウォッシュ」をかけた可能性があるのであれば絶対にそれがかかってない奴しか信用できない。あと数名臨時で参加させよう。スクラロ島への潜入準備をしておいてくれ。2日後にここに集合だ。」
「分かりました。」
スクラロ島への潜入か。おそらくは少数精鋭での行動となるんだろう。俺とユーナと・・・。こんな時にマジェスターとエリナがいないなんて。他は誰が来るのだろうか。アレクもいないしな、むしろあいつは敵だ。
「とりあえず、薬草集めに行ってもいいかな?」
「うん!私も付き合うよ!」
こうして俺とユーナは2日間薬草集めを行う事にし、少し多めに薬を作っておく事とした。この行動が後に俺たちを助ける事になるはずだ。準備はいつも万端にしておく事だ。こんな所にも両親の教えが生きていると信じたい。
しかし、事態は急変する。
「シウバ!ユーナ!乗れぇ!」
待ち合わせ場所に現れたのはハルキ様のウインドドラゴンだった。その後ろには3頭のウインドドラゴンが追ってきている。
「ハルキ様っ!世界のためです!お覚悟ぉぉぉ!!!!」
「ハルキ様!大人しく諦めてください!」
「死ねぇぇぇ!!!ハルキ様!」
やってきてるのはフィリップ様にテトにリオンの3人のようだ。そのウインドドラゴンには他にヘテロ殿やシルキット団長までが乗っている。おもむろにシルキット団長が得意のフレイムレインを放つ。それをすべてかわした後にハルキ様のウインドドラゴンが俺たちの前に降り立った。ものすごい爆風がして体勢が崩れそうになるがそれどころではなさそうだ。
「掴まれっ!!」
俺とユーナはハルキ様のウインドドラゴンに飛び乗った。急いで鞍についているベルトを巻く。でないと急発進で振り落とされそうになるからだ。
「これはどういう状況なんですかっ!?テトに死ねとか言われてますよ!」
「2日間でかなりの人数がやられたみたいだ!とりあえず追って来てるのは全員ブレインウォッシュ済みってことだな!」
「なんっ!?」
なんてことだ!部隊長クラスがことごとく敵にまわってるじゃないか!まさかこいつらと戦わなきゃならんのか!?さすがにそれは厳しすぎるぞ!
「とりあえず逃げる!掴まってろ!飛ばすぞっ!」
「ハルキ様!お待ちくださいっ!」
3頭のウインドドラゴンが迫る。いつの間にかヘテロ殿はワイバーンに乗り換えてこちらに迫っていた。
「俺が討ち取るッス!覚悟ッス!」
「甘いわぁ!!」
ハルキ様がアイアンドロイドを召喚してヘテロ殿のワイバーンの動きを止める。だが、それを予測していたかのようにヘテロ殿は跳躍した。
「そう来ると思ってたッス・・・ぶへぁ!」
「俺もそう思ってた!」
跳躍した先に前もって唱えられていたハルキ様の炎系破壊魔法がヘテロ殿を襲う。威力は極小であるためにダメージはないが、着地地点がずれてここまでたどり着けずにヘテロ殿は地上へと落ちて行ってしまった。ただし地上に落ちるまえにワイバーンを召喚している。
「くそぉ!俺の全力のフレイムをくらっておいて無傷だと!?」
あれ、全力だったのか・・・?
「行かせないよ!ハルキ様!大人しく僕に討たれてよ!」
しかしテトやフィリップ様のウインドドラゴンが行く手を阻む。そして後ろからはシルキット団長を載せたリオンのウインドドラゴンが迫って来ていた。団長がフレイムレインの構えに入る。この距離からではかわせられないかもしれない。
「くっ、さすがにうちの精鋭は質がいいな!」
これは本気でまずい。俺はドーピング薬をあおり、自分にマジックアップをかけた。そして・・・。
「頼みます、ハルキ様!マジックアップ!」
ハルキ様ほどの魔力でドーピングをかけたらその召喚された召喚獣はどのようになるのだろうか。ウインドドラゴンなんかは速度が上がるのではないかと思ったし、実際にそうだった。しかし、俺は後で猛烈に後悔する事になる。
「うぉぉ!!これはすごい!行くぞ、ウインドドラゴン!」
『承知!』
そしてその溢れんばかりの魔力を帯びたウインドドラゴンが錐もみ回転しながら暴風で周囲をなぎ倒していく。その速度は他のウインドドラゴンとは比べ物にならず、暴風の威力も段違いだ。
「ぐぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!」
「きゃぁぁぁぁぁあああああ!!!!」
「おぼろろろろろ・・・・。」
ちなみに悲鳴は俺とユーナのだ。こんな超速度で錐もみ回転なんてしてるんじゃねえよ!というか、ハルキ様の吐しゃ物が遠心力で回転と共に空中にまき散らされているという悲惨な光景になっている。
「何て速さだ!?そして汚い!」
「くそぉ!!待て!あっ!ひっかかった!」
ハルキ様のウインドドラゴンは他の3頭を完全にぶっちぎり、はるか彼方に消えた。そして、その時には俺たち3人の意識も消えていた。
「・・・もうだめだ・・・死のう。」
そしてここは良く分からない土地である。気がついたら見知らぬ土地の上を飛んでいた。何時間飛んでいたのかが不明であるが、ここはそんなに近い土地でない事だけは確かである。ウインドドラゴンによるとかなり南に飛んできたとの事だった。火山とか、生まれて初めて見たんですけど。
そして見た事もない魔物がうろうろしている。あれは何だろうか・・・?天災級の魔物だった青竜と大きさもだいたい同じだな。つまりどういう事だ?分からんが、できるだけ見つからないように行動するというのは決定した。
ハルキ様はいつもどおり落ち込んでいる。手塩にかけた精鋭に裏切られた事よりも吐きながら逃げるという醜態の方が堪えているらしい。まあ、それはこの際どうでもいい。
「シウバ、ここ何処なんだろうね?」
「さあ、俺は今ユーナと一緒で本当に良かったと思ってるよ。だって帰れるかどうか分かんないもんね。」
「洒落になってないわよ!」
「うん、ごめんね。とりあえずハルキ様落ち着くまで待ってようか。」
俺はなんとなくここは「最果ての南の大陸」ではないかと思った。魔人族の伝承にあった近寄っちゃだめなやつだ。はやく、ここを出る計画をしたほうがいいけど、ハルキ様が立ち直るまで待たなきゃならんのかな?最近、ちょっとやそっとの事では動じなくなってきた自分が悲しくなってきた。
薬(×2)マジックアップ(×2)マジックアップ(×2)で8倍の魔力ですかね。適当ですけど。




