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1-6 災厄の塔

飲み過ぎオレオです。


え?5時投稿じゃないじゃないかって?そりゃ、帰って来たの朝の4時だもん。まさかあそこまで連れまわされるとは思わなかったけどな!めっちゃ頭痛い。


 それまでの俺は、世界に満足してしまってたんだ。


「あれ?語りだしたぞ?」

「うん!たまにこうなるの!でもいつもは誰も聞いてないから放っておけばいいんだけど。」

「でも、エリナの事を聞かなきゃなんないよね。」

「・・・シウバ!がんばって!」

「え?」


 もともと自分に全く自信のなかった俺はレイクサイド召喚騎士団へ入団した事で生きがいという物を見つけることができた。ハルキ=レイクサイド様の下で、そして第5部隊ヘテロ=オーケストラ隊長の下で働けるという事に誇りを持つことができた。

 しかし天は二物を与えず。俺は任務において優秀であったが、見た目が良くない。二物どころか足りない箇所がある。周りに二物を与えられたやつらが溢れ返っているのにも気付かずに、こんなもんだと思っていた。しかし・・・。

「あんた見てると勇気が湧くわぁ。」

と、俺の頭をペチペチと叩きながらため息をつく無礼者がいた。そいつの名前はレイラと言った。


「ちょ、レイラの声の真似が上手過ぎるんですけど。」

「昔から変に器用なのよね!」


 最初は鬱陶しかった。そりゃそうだ。俺の弱点であり、象徴ともいえる頭部の装甲の薄い部分をペチペチ叩くのだ。怒りが湧き起こるが、俺は女に手を上げるような男じゃねえ。俺の葛藤を知ってか知らずか、彼女は何か落ち込む事がある毎に俺の頭をペチペチと叩くようになった。

 ある時はハルキ様相手に失態してしまい第5部隊の一般兵へと左遷された時、ある時は親友のミアがヘテロ隊長と結婚した時、ある時は部下だったリオンがフィリップ様と結婚した時、ある時はライバルだったユーナがシウバと結婚した時。


「おい、誰かが結婚した時に落ち込む割合が異常に高くないか?」

「うーん、レイラ悩んでたのね!すぐに30歳越えちゃうもんね!」


 ある日、レイラはテト班で自分だけがウインドドラゴンの召喚契約を行っていない事に気付いた。しかし、ウインドドラゴンだ。召喚できないレイラが落ちこぼれているのではなく、召喚できるテト隊長やリオンがエリートなのだ。しかし、レイラは素質としては十分だった。俺は心に決めた。レイラにウインドドラゴンの召喚契約素材をプレゼントしてやろうと。

 この頃、俺は頭部が軽装である事をすでにアイデンティティとして確立させていた。ここが重装備だと、警戒して近づいて来ない奴が多い。しかし、ここが軽装であれば俺に対して気を抜くのだ。毛を抜くのではない。気を抜くのだ。決して男として見られていないわけではない。悲しい事にきちんと男性に対する拒絶反応だけはしっかりとある。このアイデンティティが俺とレイラの距離を近づけた。俺はこのアイデンティティに誇りを持ち、感謝するようになった。

 この「奈落」には召喚契約に必要な素材がいくつかあった。俺はたまにここに来る事にして素材を集めた。ちょっとズルしてダイアウルフの皮は購入したが、それも俺のポケットマネーから購入したんだ。レイラは喜んでくれると思った。だが、ここでハルキ様が昔言われていた格言が頭をよぎる。


『ただしイケメンに限る』


 苦悩した。いままでの人生で最も苦悩したのがこの時だ。

 女性は男性からプレゼントをもらえば嬉しい、ただしイケメンに限る。

 男は見た目じゃなくて中身だ、ただしイケメンに限る。

 私押しに弱いんです、ただしイケメンに限る。

 全ての言葉にまとわりつく世の中の真理が俺の目の前に立ちはだかった。苦悩しすぎて禿げるかと思ったが、これ以上進行の仕様がなかった。


「・・・・・・。」

「そんな事ないわよね!シウバ!」

「・・・・・・。」


 しかし、俺も男だ。意を決してレイラに召喚素材をプレゼントした。これは「エレメント平原の戦い」から帰ってから2日後の事だ。召喚騎士団のほとんどがエリナのパラライジーズにやられてしまって、レイラも落ち込んでいたからな。

「えっ、本当に?」

 勇気を出した甲斐があり、レイラは喜んでくれた。ウインドドラゴンの事は悩みの一つだった。俺は知っていた。


「ちょっと、レイラ出てくる度に真似するのかな?あの顔でやられると気持ち悪いんだけど。」

「シウバ!ふぁいと!」


 数日後、召喚契約は俺とレイラの二人きりで行った。俺は達成感に満たされた。ただしイケメンに限るという事は忘れていない。彼女の悩みが一つ減る。それだけで俺は満足していた。しかし、そんな時に奴らはレイラを襲おうとした。そして俺もそれに巻き込まれる形で襲撃された。


「おぉ、ついに。」

「前置きが長かったわね。」


 襲撃者はアレクとナトリ=スクラロとクロノスとスクラロ族のもう一人の全部で4人だった。皆を驚かせてやろうと思って、召喚契約をするために郊外に出ていたこともあり、多勢に無勢だった。そこに通りかかったのがエリナだった。お前のために薬草の採取をしていたらしい。ドーピング薬が残り少なくなってたんだろう?彼女がそこにいたのは本当にたまたまだった。実際、アレクやナトリは驚いていたな。2人ともエリナのパラライズの威力は身を持って知っていたから俺たちに逃げられると思ったんだろう。


「エリナは生きてるんだよな?」

「シウバ、たぶんこっちの話は聞いてないわ!」


 アレクは魔装が使えるようになっていた。普段から召喚魔法の訓練をしている俺たちにとって、コツさえ分かれば魔装はすぐにできるようになるんだ。そして魔装を使いこなすアレクも強敵だったし、ナトリ=スクラロやクロノスも強かった。しかし、俺たちは勝てはしなかったけどエリナのパラライジーズで3人の動きを止めることに成功して逃げようとした。アレクの裏切りは最重要事項だから早く知らせなければならない。でも、その後が信じられなかった。

 もう一人のスクラロ族がパラライジーズに抵抗したんだ。そいつはすぐに3人を回復魔法で動けるようにしてしまった。パラライジーズが抵抗されたのを知ったエリナは俺たちにこう言った。

「逃げて!こいつは放っておけない!」

 

「ついにエリナの真似までしだしやがったな。若干殺意を覚えるんだけど。」

「仕方ないのよ、シウバ。」


 エリナは、そいつに向かうと何かのスキルを使った。次の瞬間にはそのスクラロ族とエリナが消えてたんだ。ナトリ=スクラロの動揺は激しかったけど、クロノスとアレクがその隙に俺たちに襲いかかってきた。俺もレイラも善戦したが、最後はナトリ=スクラロにやられてしまい、レイラがクロノスにブレインウォッシュをかけられた。それを見て、俺もブレインウォッシュにかけられた振りをしたんだ。そうでないとレイラを護る奴がいなくなるからな。


「エリナはどうなったんだ?」


 エリナがどうなったかは分からない。消えたとしか思えないが、死んだとも思えない。ナトリ=スクラロは部下の心配をしていたが、クロノスは1人いなくなっただけで計画に支障はないと言った。むしろエリナはあちらにとっても厄介な相手だと認識されていたからな。

 洗脳された振りをしてやつらの仲間になった俺はやつらの目的を聞き出した。奴らの目的は・・・。



「世界樹の塔の建設であり、その島は世界中の魔力を吸い上げるようだ。そして、その魔力でヨシヒロ神を復活させる。それがあいつらの目的だ。」

 

ただしイケメンに限る!

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