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5-5 邪王シウバ=リヒテンブルグ

あなた!読者の方からクレームよ!勝手に茶番劇消したんでしょ!

それにこれから前に出て宣伝とか頑張るって言ってたじゃない!はやく出てきなさい!

え?頑張るって言ったら、皆激励の言葉をくれると思ってたのにって?

心配しなくても激励のお言葉くらいいただけるわよ!そのうち!あなた最近小鳥〇エム先生の作品ばっかり読んで自分の感想欄読んでないんじゃないの?ズッキーニって何の事?ここで身内ネタはやめなさい!

え?向こうは身内と思ってないだろうって?まあ、そうね・・・。どんまい。


あら?感想の返事は基本的に10分以内にしてるわね・・・。むしろどれだけ張り付いてるのよ?え?仕事待機中で暇だから?日曜日にも仕事してるのはいいけど、きちんとした仕事しなさいよ!


え?世界地図書いてるですって?みてみん登録した?あら、そう。


挿絵(By みてみん)


「シウバ様ぁぁぁぁあああああああ!!!!!!!!!」

 あと十分ほどで戦闘が開始されるであろうという時だった。なんと、テンペストウルフが自陣の中を走っている。乗っているのはナノであり、その後ろには・・・ライレルが乗ってる!?

「ええい!俺は味方だ!伝令だぁ!!」

 テンペストウルフという事で敵と間違われまくってきたのだろう。それでもナノはシウバの所までなんとかたどり着いた。

「えぇ!?どうしたんだ!!?それにライレル!?」

「魔王様!お久しゅうございます!」

「挨拶してる場合じゃないですよ!!「邪国」はリヒテンブルグ王国なんです!あいつらが!」

・・・は?「邪国」はリヒテンブルグ王国?・・・は?

「はやく止めないと!ローレ様の部隊が突っ込んできちゃいますよ!」

「うむ、あのバカ者はたまに伝令を無視するからな。」

「・・・・・・いや、ちょっとあまりにも・・・え?」

 気が動転しすぎて何をどうしたらいいか分からない俺にユーナが声をかけた。

「シウバ!止めなきゃ!皆が殺し合い始めちゃうよ!」

「そうだね!でも、どうしたら・・・。」

「シウバ様!」

「シウバ様ぁ!」

 落ち着け、どうすれば・・・。そうだ、俺にはこんな時のためにこれがある!スキル思考加速!


 まずは落ち着いて現状の確認だ。「邪国」は実はリヒテンブルグ王国だった。そうか、西の大陸でテンペストウルフに乗った四騎将・・・なんで気付かなかったんだろう。あいつら頑張って北の魔大陸まで進出してきてたんだ。それにかなりの大活躍である。あとで誉めてやろう・・・いや、「邪国」ってなんだよ、だいたいそれなら「邪王」って・・・まさか俺の事か?誰だ?そんなダサい名前付けたやつは?これは後で説教だ。

 そして現状を解決しなければならない。今のままではローレの部隊がフィリップ様たちのアイアンゴーレムの「壁」に激突する。どう考えてもあの「壁」を抜けるわけなく何人も死んでしまうし、抜けたとしたらレイクサイド召喚騎士団に死者が出るという事だ。戦闘が開始されてしまったら身内のどちらかが死ぬ。


 そんなのは嫌だ!どうすればいい?今俺にできる事はなんだ?くそっ、無力なのが恨めしい。もっと力があったならば、こんな戦争止めることができたならば・・・。もっと力が!しかし俺には力がない・・・俺には・・・。


 今から伝令を飛ばしたとしても戦争を止めてくれるわけもない。この戦いにお互いの将来がかかってるんだ。でも、身内が死ぬのは絶対に嫌だ。どうすれば・・・。


「シウバ!かなり近くなってしまったぞ!向こうはすでに突撃体勢だ!」

 オクタビア様が叫ぶ。どうせなら知らずにいたほうが良かったのではないかと思うような最悪な状況だ。こんな最悪な状況はいままでなかった。いつもは皆の力を合わせてなんとかできてたし、身内同士で争うような事はした事がない。頭の中に「嫌だ」という感情のみが渦巻いている。どうやったら、こんな状況解決できるというんだ!

「シウバ様!」

 皆の叫び声がむなしく響く。回避できないのか?すくなくとも死者を減らすことはできないのか?死なせずに・・・。死なせずに?


「そうだ!!」

 これが上手くいけば俺は神にだって感謝してやる!

「マジェスター、エリナ!手伝ってくれ!他の皆は・・・落馬とかした奴の回復を!騎獣からは降りておくんだ!」

「落馬・・・?」


 ワイバーンを召喚して3人で無理やり乗り込む。

「シウバ様ぁ、どうするんですか?」

 エリナはワイバーンの後ろに乗っている。体が小さいから俺とマジェスターに潰されて外から見たら2人に見えるかもしれないくらいだ。なんて事を考えるのは逆に余裕がないからだろう。

「説明は後だ。」

 両軍が激突するのはあと5分後程度ではないか?そんな距離だ。数万規模の戦いを上空から睨む。

「ワイバーン!中央へ!」

 破壊魔法が飛んでくるかもしれない。でも、俺がやるしかない!




「ハルキ様、そろそろ戦闘が開始されます。」

「うん、アイアンゴーレム召喚開始して。損害はできるだけ少なく、陣形維持が最優先で深追いは厳禁ね。」

 ヴァレンタイン王国軍本営はエレメント魔人国軍の本営のすぐ隣に設置されていた。

「あのワイバーンは?」

 護衛のソレイユが指差した先には1頭のワイバーンが。誰が乗っているのか?命令違反である。

「あ?誰だ?あのバカは。」

 しかし、すでに数万規模の戦いが開始されようとしている所。あんな所に1頭いたとしても大局には全く影響しないはずである。ハルキ=レイクサイドは放っておくことに決めた。それよりももう戦闘が開始される。徐々に自陣にアイアンゴーレムが召喚され始める、そしてそこに突っ込んでくるテンペストウルフの群れ。どちらが強いのか。ハルキ=レイクサイドはテンペストウルフを知らないが、情報からすればアイアンゴーレムを抜けるほどの強さはないはずである。情報戦ではこちらが数段上のはずだった。

「やれ。」

 この号令ですくなくとも数千人が死ぬ。そしてその覚悟もある。しかし、現実にはそうはならなかった。



 最初に感じたのは何かしらの魔力が戦場全体に満ちていく感覚だった。

「ぐっ・・・。」

「がはぁ・・・。」

 その魔力の波を受けて次々と兵士たちが倒れていく。いまから召喚しようとした召喚士たちも動きが制限されたのか地に伏しだした。動けるものはほとんどいない。

「な、なんだと!?」

 魔力を振り絞って「それ」に対抗する。ハルキ=レイクサイドは抵抗する事が可能であったが、護衛も含めて他のものは誰ひとり動けなかった。

「ウインドドラゴン!」

 大召喚士は風竜を召喚して上空へと舞い上がった。見ると自軍だけではなく、全ての者が地に伏している。総勢4万を超える人間が一度にやられたのだ。そこにたたずむのは先ほどのワイバーンのみ。

「まさか!神楽か?」

 思い当たるのは奴ぐらいのものだ。こんな大規模な力を振るえる存在なんて知らない。両軍合わせてハルキ=レイクサイドほどの魔力があるものは誰ひとりいなかったようだ。魔物も全て力なく倒れている。かなりの数の人間が落馬しているようだ。

「レッドドラゴン!」

 2体のレッドドラゴンを追加で召喚する。

「さ、さすがはハルキ様。」

 それを見ていたヴァレンタイン軍は多い。無理やりに体を動かそうとしても首を曲げる程度しかできないが。

「ええい、こんな状況でなんて!」

 3頭の竜を召喚しながらもハルキ=レイクサイドは焦っていた。正直予想外すぎる登場で対抗策が浮かばない。3頭の竜で神楽に勝てるとも思ってなかった。ここにはテツヤもいない。

「・・・神楽じゃない?だれだ?・・・あ?」



 戦場の上空ではヴァレンタイン王国の希望である大召喚士がこの事態を引き起こしたと思われる者に対して迫っている。しかし・・・。

「レッドドラゴンが!!強制送還されただと!?」

 上空にむかったハルキ=レイクサイドと3頭の竜。待ち構える場所にいたワイバーンが小さく見える。そして両者が接触した。何が起こったのか分からなかった者が大半である。しかし、ワイバーンの周辺を飛んでいたレッドドラゴン2頭があっという間に強制送還されたように消えたように見えた。

「まさか!?」

「ハルキ様!!」


 そして残酷にも事実を告げるものがいた。その者は動けるようである。

「リヒテンブルグ王国軍の者よ!あれなるが魔王シウバ=リヒテンブルグ様である!魔王様はこの戦争を止めに来られた!我らは魔王様の御意向に従い退く事とする!動けるようになった者は周りの者を助けて撤退だ!!」


 宣言したのは四騎将「斬空」ライレル。

「魔王様!?初めてみた!」

「シウバ様じゃぁぁ!!!!」

「うおおおぉぉぉぉぉ!!!」


 徐々に動きが回復していく兵士たち。そしてリヒテンブルグ王国軍は撤退を開始する。

「なんて強大な力なんだ!?」

「全部で4万を超す人間を動けなくするなんて!」

「死者がいない・・・?誰も死ななかったのか!?」


 対してエレメント魔人国ヴァレンタイン王国合同軍の動揺も激しい。

「あれが・・・邪王!?あんなのに勝てるわけがない!」

「ハルキ様・・・!」

「あっ、ウインドドラゴンがこっちへ!もしや・・・ハルキ様でも勝てなかったのか!?」

「ハルキ様が一騎打ちで負けるなんて・・・あの方は1人で朱雀を討伐した方だぞ!?」

「しかしレッドドラゴンが一瞬でやられてしまった。ハルキ様も生かされただけかもしれない。俺たちのように。」

「たしかに、あれだけの力があれば俺たちを皆殺したほうが簡単だっただろう。」

「邪王シウバ=リヒテンブルグか・・・ん?どっかで聞いたことがあるような・・・。」


 強大な魔力で敵味方全ての兵を殺さずに黙らす事のできた者はいままで誰一人いない。あまりの格の違いに停戦に異議を申し出る者は皆無である。エレメント魔人国魔王代理リゼ=バイオレットもネイル国魔王サイド=ネイル12世もふくめて全ての者が動きの悪くなった身体を引きずり、命が残っていた事に幸運を覚えるのみであった。恐怖が戦場を埋めつくす。その割に誰ひとり死んでいないという事に気付けたのは少数である。


 総勢4万の軍はその戦闘行為を中止せざるをえず、両軍ともに邪王にやられた兵士を助けながらも退いて距離を取った。後にリヒテンブルグ王国より停戦の申し出があり、邪王の強大な力の前には全ての国に拒否権はなかった。ここに「エレメント平原の戦い」は戦いを行わずに終了するという誰もが予測できない終焉を迎え、リヒテンブルグ王国軍は西の大陸へと帰還し、北の領土はネイル国に譲渡するという事で戦争はたった一人の魔王の意向で強制的に終結させられたのだった。


 


 しかし実際は少し違う。


「あ?あれは・・・シウバたちじゃねえか?」

 そこにいたのは自分の部下である。レイクサイド召喚騎士団第6特殊部隊隊長「剣舞」シウバとその部下マジェスター=ノートリオにエリナ。

「あ!?ハルキ様!すいません!」

「何してんだよ!?それにこれはどういう事だ!?」

 竜は基本的にホバリングができない。お互いに旋回しながら状況を説明する。維持魔力がもったいなくなったハルキ=レイクサイドはレッドドラゴン2頭を還すこととした。これが傍目から見ると接触と同時にレッドドラゴン2頭を強制送還されたと勘違いさせた原因である。しかもホバリングしておらず旋回してお互いに話してるために戦闘行為を継続しているかのようにも見える。

「あの!さっきようやく知ったんで、こうするしかなかったんですけど!「邪国」ってのはリヒテンブルグ王国だったんですよ!俺たちが魔大陸でまとめてた集落の連中で!あいつら頑張って北の大陸まで来てたんですね!」

「はぁ!?」

「それで今さっき突撃かまそうとしてた奴とか四騎将は俺もよく知ってるやつで!と言うか身内みたいなもんなんですよ!それで必死に止めようとして!」

「それで、なんで4万が止まるんだよ!?」

 お互いに旋回しながらであるから声が届きにくく大声になってしまう。しかし上空であるために戦場にまでは全く声が届かない。

「マジェスターが俺にドーピング・マジックアップかけてですね!それ状態で俺がエリナにさらにドーピング・マジックアップかけた2段重ねドーピング・パラライジーズです!」

 マジェスターもマジックアップを習得したのはこの前である。オフェンスアップのついでに教えておいたのがよかったのだろう。

「なっ!なんつー事を!!?」

「きゃははは!!これ、すっごいですぅ!パラライジーズぅ!!!」

 そして鬼のような威力でさらに超広範囲のパラライジーズを連発しまくるエリナ。もういいよとシウバに止められている。

「お前っ!?・・・はぁ。ほんと規格外だな・・・。」

「それ、4万の中で自力で唯一抵抗したハルキ様だけには言われたくないです。」

「・・・じゃあ、「邪王」ってもしかして・・・。」

「・・・あ、多分俺の事ですね。」

「・・・だっさ。」

「言わないでください。あとで命名した奴をシメトキマスンデ。」

「まあ、事情は理解した。それにこれじゃあもう戦争どころじゃないな。むしろ良くやった。お前はリヒテンブルグ国の連中を下がらせて停戦させろ。」

「はい、分かりました。」

「じゃあな、「邪王」・・・ぷぷっ。」

「ぐっ・・・。」

 そしてハルキ=レイクサイドは自陣に戻る。下では「斬空」ライレルがリヒテンブルグ王国軍を撤退させ始めていた。

「はぁ、じゃあとりあえずあいつらに会いに行くか。」

 誰も死ななくて良かった。それをとりあえず喜ぶ邪王であった。



 そしてその日の昼過ぎに「邪王」と「邪国」の命名者である「魔卒者」ローレは魔王の怒りに触れたとか。その折檻の目撃者は誰もが口をつぐみ、内容を教えてくれる事はないという。


かなり長めでしたが第3部終了しました!

もう戦争編はいいかな。次からはまた日常の冒険者編にもどれると思います。・・・多分。


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