5-4 衝突の寸前
こんにちばんわ!オレオです!
活動報告にもちょろっと書きましたが、ある事件が起こって環境の変化と心境の変化がありました。
いままでオレオの豆腐メンタルを気にしてくれて感想やブックマークを自制していてくれた方々へは本当に申し訳ありませんでしたが、これからはそんな事は気にせずにどしどし受け付させていただきます。厳しいお言葉も真摯に受け止めようと思いますので、誤字脱字の報告を含めてちょっとした事でも感想欄に書き込んでください。
何故、こんなにも急に強気オレオに変身したかと言うと・・・。おっと、話が長くなりますね。ちょうど物語も第3部のいい所に突入しておりますので、続きは「他の場所」にでも書きこませていただきます。では!
日の出とともに両軍が動き出す。エレメント魔人国軍総勢2万の中には少数であるがヴァレンタイン王国の精鋭が混じっていた。シルフィード騎士団アイシクルランス40名、レイクサイド召喚騎士団およびレイクサイド騎士団総勢200名、そしてその他には新設されたカヴィラ騎士団の総勢200名もいた。
「できる事はやった。被害が出るのは仕方がないが、あとは総力戦だ。」
ヴァレンタイン軍全体を指揮するのは「大召喚士」ハルキ=レイクサイドであり、宰相ジギル=シルフィードも来ている。ここの平原を抜かれると帝都エレメントまで障害となるものは存在しない。帝都に籠城する案も考えられたが、新兵が中心のエレメント魔人国軍が前回の帝都方針の傷跡がいまだに癒えていない帝都に籠城したところで耐えきれるものではないと判断された。さらに援軍が期待できないという事情もある。
「ついに総力戦か。」
移動するカヴィラ騎士団。指揮はオクタビア=カヴィラ領主自らが行う。
「まずは「邪国」の突撃をなんとかしないといけないな。だが、ハルキ殿は対策を立ててるのだろう?」
ハルキ様の立てた対策はこうだ。まず両軍がぶつかったのちにおそらくは「邪国」の遊撃隊の突撃が敢行される。今まで手に入れた情報ではその突撃を防ぐことのできた軍は存在しない。サイド=ネイル12世がこの作戦をとってこないはずがなかった。そして、その突撃に合わせてヴァレンタイン軍が動く。具体的にはアイアンゴーレムで作る「壁」と、その隙間から繰り出される「氷の雨」で遊撃隊を撃滅させようというのだ。突撃を止めて一撃加えた所で、敵が浮足立つ。そこにフェンリルとワイバーンで構成したこちらの遊撃隊で反撃に出るという寸法である。
数で勝るネイル国軍をどうこうするよりも、「邪国」を徹底的にたたく方がより効果的であるとハルキ様は判断した。
「さすがにエジンバラ領の落ちこぼれで構成されているカヴィラ騎士団には活躍の場は少ないと思うが、できる事をしっかりとするとしよう。」
オクタビア様は常に前を向いている。
朝日が相手の軍全体を照らす。数万と数万の戦いであり、これほどの規模の大きな戦いが連続して起こっている北の魔大陸はすでに民が疲れ果てている。昨日の作戦会議では、これで終わりにするつもりだとハルキ様は言った。
「マジェスター、ナノは帰ってきてないのか?」
「はい、いまだに敵陣内に潜入しているのではないでしょうか。ですが、あいつがそう簡単に死ぬとは思えません。」
「死ぬなんて思ってないさ。」
当たり前だ。ナノは俺たちと一緒にいろいろな所に行った。十分強くなっているはずだ。一緒に稽古も沢山したしな。
「もうすぐ、戦いが始まる。お前も死ぬなよ。」
「はい、かしこまりました。」
もともと人類最強を名乗っていたのはシルフィード騎士団アイシクルランスであった。騎士団長ロラン=ファブニールは「マジシャンオブアイス」の称号を持ち、いままで2人のエレメント魔人国の将軍を討ち取った功績のある大英雄である。単純な攻撃力でアイシクルランスの右に出る者はいない。
「レイクサイド領には後れを取るなよ。」
アイシクルランスの位置するのは最右翼である。激戦が予想される中央からは距離があるが、もっとも崩れてはならない場所に配置されていた。
「この一番外側から後ろを気にせずに薙ぎ払ってくれる。」
アイシクルランスが退化したとは思っていない。たしかに昔にハルキ=レイクサイドの召喚したコキュートス1体に手も足もでなかったのは事実であるが、その弱点が露見しさらなる進化を見せたとロランは考えている。この戦いでもっとも功績を上げるのはアイシクルランスである事を信じて疑ってない。
「さて、そろそろか。」
敵軍の横に広がった部隊がすぐ近くの所にまで来ているのが見えた。もうすぐ、破壊魔法の射程距離に入る。距離があると威力が半減するが、牽制の意味ではまずは撃ち合いが始まるだろう。もうすぐだ。「マジシャンオブアイス」は武者震いと笑みが止まらない。部下にばれないようにするのにいつも必死である。
「とくに、「邪国」の遊撃隊を率いているもの。四騎将は私が討ち取る事としよう。」
目標を定めるとあとはそれに向かって突き進むだけである。決めた目標は全て屠ってきた。今までそれを止められたのは、妻に獲物を横取りされた時のみである。
レイクサイド領はさすがに歴戦であり、浮足立った者は皆無である。今回は特に戦闘力に優れた200名を厳選して連れてきており、各部隊長を含めて纏っている雰囲気からして他の部隊とは違って見えた。
「アイアンゴーレムを召喚できるものを前に出せ。騎士団と遊撃隊はその後ろだ。」
筆頭召喚士フィリップ=オーケストラは朝日とともに現れた軍を睨みつける。
「我らが力を示せば、この戦いは終わる!後れを取るな!」
人類最強を自負する集団が静かに準備を進めていた。陣取る位置は中央からやや右翼寄りの場所である。最も激戦が予想されると思われる場所の一つであり、ここで「邪国」の突撃を止める事ができればその戦術的価値が計り知れない。実際、フィリップ=オーケストラはいくらテンペストウルフに乗った騎兵部隊であろうとも自慢のアイアンゴーレムが抜かれるなどとは毛頭思っていなかった。
「効率よく敵を倒せ。慈悲は与えるな!」
一度ぶつかったら、どんな部隊でも損害は計り知れないものとなるだろう。そして、その要となるアイアンゴーレムは敵が近づくまで出現する事はない。
「さあ、やるッスよ!今回の敵はマジで歯ごたえがありそうッス!」
「あんまり、人が死ぬのは好きじゃないんだけどね。でも味方が死ぬよりはいいから、僕も今回はリリスを召喚する事にするよ。」
「マジッスか・・・。前回は3か月も還ってくれなかったんじゃなかったッスか?」
「大丈夫、だと思う。別に、嫌いなわけでもないんだよ。」
「それは知ってるッス!」
「えぇ!?」
部隊長同士の会話には緊張感に欠けるものがあるが、その部下たちの気が緩むわけではない。
「ウォルター、あなたの所の部下は帰ってきたの?」
「いや、まだな奴らが何人かいる。もしかしたら間に合わないかもしれないな。ヒルダの所は準備できたのか?」
「うちは基本的に後方支援ですもの。召喚士本体を守るのが役目、特に必要なものはないわ。」
「そうだったな、しかしアレクすら帰ってこないのが気になる。」
信頼している副隊長がいまだに定時連絡をしてこない。他の何名かの部下は予定通りだ。「邪国」の遊撃隊の配備状況すら分かっている。予定どおり、第1部隊を中心としたアイアンゴーレムの「壁」に突撃してくるはずだ。
「なにやら、嫌な風だな。」
やや高めの気温を乗せて緩やかな風が吹く。すべての状況が整い過ぎていることに不安を覚えるのは考え過ぎなのであろう。
「アレク様が帰還しました。」
部下の一人から連絡を受けたウォルターは本営を目指していた足を止める。
「分かった。すぐに行く。」
「ウォルター、これからすぐに戦いが始まるわよ。」
「アレクだってそれを分かって呼んでるんだろう。すぐに帰るさ。」
「ライレルがまだ来ないだとぉ!?まあ、いい!どうせ最初は俺たちの隊の突撃からだからな!」
「魔卒者」ローレの部隊はすでにいつでも突撃体勢に入れるようになっている。他のリヒテンブルグ王国軍は昨日合流した「調教者」フェルディと「策士」アウラがまとめており、「斬空」ライレルの部隊は後方から第2の遊撃隊としての役割を担う事となっていた。
堅固な陣形をあえて正面から破る事によってその陣形の中心を機能不全に陥らせる作戦は取りたくても取れるものではない。しかし「魔卒者」ローレと彼の率いる遊撃隊はそれを可能にしていた。全てはテンペストウルフを初めて操ったあの日から始まったのである。
「あの程度の奴ら、軽く捻ってやらねえと大将に顔向けできねえからな!エレメント魔人国を潰せば純人の国までもうちょっとってわけよ!」
意外にもこの無骨な男も魔王との再会を待ち望んでいる。
「ちょっとローレ!さすがに気をつけなさいよ!そろそろあんたのそのバカ正直な突進も予想されてる頃なんだからね!」
「策士」アウラが叫ぶ、だが、「魔卒者」ローレの自信は揺らぎない。どんな「壁」であろうとも食い破ってみせる。でなければあの方の期待を裏切る事になってしまうと信じている。この戦いに勝てば、会う事ができそうなのだ。ヴァレンタイン大陸へ行くことがリヒテンブルグ王国四騎将の願いなのである。
「こっちから大将に会いに行けばびっくりするかな?」
「意外と向こうから会いに来ちゃうかもよ?あの人の考えてることはあたしたちでは予測がつかないわ。」
「はっはっは、違えねえ!!」
暦の上では4207年、春の季節、花の月、第5の日。待ち構えるはエレメント魔人国およびヴァレンタイン王国連合軍、総勢19032名。攻めるはネイル国軍およびリヒテンブルグ王国軍、総勢23020名。夜明けから半刻程度の時間帯に両者は激突した。後世の歴史家たちが語るこの戦いは、後にも先にもない史上最大数の人数がたった1人の手によって蹂躙された戦いとして有名であるがその詳細は残っていない。その蹂躙に抵抗する事ができたのは「大召喚士」ハルキ=レイクサイドただ1人であり、両者の一騎打ちの後に今の世界は形成されたといってもよい。しかし、歴史書に「彼」の記録が登場したのはこの「エレメント平原の戦い」が初めてであり、その後も全く記録される事はなかった。
純人の記録で言うところの「アイオライの治世」が始まって数年後に発足する「大同盟」はヴァレンタイン王国、エレメント魔人国、ヒノモト国、リヒテンブルグ王国を主軸として形成され、後年にトバン王国とネイル国も参加することになる。その架け橋となるのが「彼」であったとされている。
「邪王」シウバ=リヒテンブルグ。
世界は彼の想いを知り、彼の志を受け入れる。
彼の下では魔人も純人も亜人も獣人も関係なく「弱者」である。
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前書きと後書きの修正を行ってます。茶番が消えてしまう事になりますが、申し訳ありません。




