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3-5 両刃の斧の重み

前回のあらすじ!


いろいろあったけど


シウバはテツヤに戦場に連れ出されていた! ← イマココ!

「「神の鉄槌を!!」」

正面には3500のスクラロ国軍、そのすべてが「魔装」で鎧を身に纏い、各々の武器を召喚した。

「やばいっ!」

こちらもドーピングをして補助魔法をかけていく。普段は使わないディフェンスアップも重ね掛けだ。

「うおぉらぁぁぁ!!!行くぜぇぇぇ!!」

ノリノリで突っ込んでいくテツヤ様を横目にどうやったらこの3500をなんとかできるかを考える。思考加速のスキルは今日も俺を助けてくれるはずだ。


 が、・・・何も思い浮かばねえ。これはとりあえず死んだか?


「えぇい!こうなりゃ自棄だ!!」

両手の剣に魔力を通して舞う。当たらなければ死ぬ事はないはずだ!問題は囲まれない事。機動力が重要になってくる。

「どうらぁ!!」

先にテツヤ様が戦闘の集団に接触した。出合い頭に次元斬で斬りつける。・・・あれ?斬れてる?

「ぎゃあぁぁぁ!!」

魔装ごと斬られたスクラロ族が叫んだ。

「次元斬が効くんですね!!良かった!」

こちらにも数名のスクラロ族が突撃してきた。剣や槍を持っているが、意外にも変わった武器を持つものは少ない。飛んでくる破壊魔法を潜り抜けて数名の鎧の隙間に剣を差し込む、そして離脱する。

「いや!次元斬は効いてねえ!!これは自力で斬っている!」

そう言いつつもガンガンと周囲の敵を切り伏せていくテツヤ様。そういえば、いつも持ってる刀ではなくて厚手の大きなの片刃の剣だな。でっかい鉈といった方がいいか・・・つまり、あれは次元斬ではなくて鉄の塊で殴っていると表現した方がいいのかもしれない。

 隣で鉄の塊が何かにあたるドガンとかバゴンという音を聞きつつ、こちらに殺到するスクラロ族と交戦する。包囲されないように徐々にテツヤ様から離れていかざるを得ないのが不安であるが、仕方ない。こちらは機動力重視でなんとかしよう。


「やはり!私も参戦いたしますぞぉぉ!!」

マジェスターが後方からアイスストームをぶっ放つ。青竜にも効果のあった氷の破壊魔法は魔装にも効果があるようだ。

「パラライジーズ!!」

そしてエリナのパラライジーズが効いたようだ。俺の周囲に群がっていた数名が麻痺して動かなくなった。そこにマジェスターの氷魔法が飛んできて突き刺さる。このコンビは相性がいい。ナノはエリナの護衛として前に立ってくれているようだ。

「死ね!害虫どもめ!!」

ユーナの召喚したケルビムがスクラロ族の集団に突っ込んでいった。あの防御力はスクラロ族でもなかなかダメージを入れられないようで、暴れまくっているケルビムの周囲のスクラロ族は次々と倒れていく。


「ヴェノム・エクスプロージョン!!!」

テツヤ様のいた方角でかなり大きめの爆発が起こった。数百人規模でスクラロ族の兵士たちが吹っ飛ばされていく。あれ、最初から使えよな。

「シウバ!囲まれる!下がって!」

フェンリルに騎乗したユーナがやってきて言った。確かに左側にもスクラロ軍が押し寄せている。テツヤ様のように広範囲爆発系の魔法なんてもってないから包囲されたらなす術なくやられてしまう。

「ありがとう!ユーナ!」

左の集団に牽制のフレイムレインを放ち、ユーナのフェンリルの後ろに乗った。

「すこしテツヤ様の方へ寄ろう。このままじゃ包囲されてしまう!いや、むしろ後退だな!5人でこんな人数を相手にできるか!!」

後ろではヒノモト国の軍勢が突撃体勢に入っていた。

「あの突撃を一緒にくらうわけにもいかんし、あと何発かいれたら離脱するぞ!テツヤ様は大丈夫だろ、放っておく!」

「かしこまりましたぁ!!はーっはっはっは!」

マジェスターがアイスストームを乱発しながら答える。こういう対部隊戦になると急に強くなるのがマジェスターなのかもしれない。

「よし!ワイバーン召喚だ!先に離脱しろ!」

ユーナ達を先に離脱させて、俺もワイバーンを召喚しようとした。


 しかし、その時あり得ないものを視界に入れることとなる。


「ぐっ、馬鹿な・・・この私が虫けらごときに・・・。」

光と共に強制送還されるケルビム。そしてそこに立っていたのは漆黒の鎧に身を包み、両刃の長い柄の斧を持ったスクラロ族だった。

「お前は強そうだなぁ!!!」

そこに斬りかかるテツヤ様。巨大な鉈を斧で受け止めるスクラロ族。やはり次元斬は効いていないようだ。

「テツヤ=ヒノモトだな!!我が名はナトリ=スクラロ!神に選ばれし者だ!!」

「お前が魔王ナトリ=スクラロか!会いたかったぜぇ!!」

そして始まる鉈と斧での斬り合い。まるでレイピアでも振っているかのような速度でお互いの武器にぶつかり合うが、その度に重低音があたりに響く。あまりの迫力に周囲のスクラロ族も戦闘に加われずに見守るだけとなってしまっている。無論、俺もだ。

「この程度で神を殺したなどとよく言えたものだ!!」

ナトリの渾身の斧の一撃を鉈で受けるテツヤ様。

「実際そうなんだから仕方ねえよ!ただ、あいつは本当の意味で神ではなかったけどな!」

「神を愚弄するか!?死して償え!!」

ナトリの斧に魔力がさらに上乗せされ、大きさが変化する。あれ、どうやってんだ?

「うらぁぁ!!!」

対するテツヤ様もその剣速を上げる。再度斬り合いが始まり、その音と衝撃もかなりのものになってきた。

「はーはっはっは!楽しいなぁ、おい!!」

「戦いを楽しむな!!」

「知らねえよ!魔人族はこんなもんだろうが!ヴェノム・エクスプロージョン!!」

ナトリの周囲の空間が爆発する。避けなかったはずだが、ナトリはびくともしない。

「神の鉄槌を!!」

ナトリが魔力を込めると両刃の斧の周辺に何かだ漂い始めた。

「くらえ!!」

そしてその斧で斬りかかると当たってもいないのに周囲に衝撃波が発生する。

「なんだぁ!?」

避けてもその衝撃波で体勢が崩れる。地味にダメージも入っているらしい。

「ぐはっ!」

遂にナトリの斧を避けきれずにテツヤ様が剣で受けた。発生する衝撃波に傷ついて行くテツヤ様の体とキモノ。

「うおおぉぉ、これはまずいかもしれん!」

切り上げる形で振るわれた両刃の斧がテツヤ様を吹き飛ばす。

「がはぁっ!!」

「神を愚弄した罪だ!!」

そして完全にたたき上げられたテツヤ様めがけてナトリの両刃の斧が振り落とされた。


 ここで何故か俺はスキル・思考加速を発動していた。いや、どっちにしろ今から何をしようにもテツヤ様の所まで間に合わないし、そもそもあのレベルの戦いに俺が加わったところで時間稼ぎがいいところである。考えるだけ無駄のような気もする。だいたい、あの「魔装」に関してはこちらからダメージの通る攻撃ができそうにもない。前線に立ってた兵士レベルでさえ、鎧の部分には俺の剣舞すら効かなかったのだ。まあ、鎧の隙間にしっかり剣を突き刺してやったからこちらでは十分に戦えてたのだけども。しかしあのナトリ=スクラロはその漆黒の鎧のつなぎ目の所がうっすらと光っている。つまりはあれは隙間がないという事だろう。他の部分よりは弱いのかもしれないが、前線の一般兵士の装甲部分と同程度と考えるとテツヤ様の巨大な鉄の塊くらいでなければダメージを与えることはできそうにもない。そしてその隙のない魔装の男が今飛び上がって、たたき上げられたテツヤ様を両断しようとしているのだ。両断できないにしても大ダメージは確実だろう。誰があの魔王がやられるとか考えたんだ?あ、でも剣を正面に持ってこようとしてるから直撃はないな。でも、衝撃波があるからどっちにしろ大ダメージじゃねえか。そもそもあの衝撃派もなんなんだ?いくら魔力が通っているからって攻撃を延長させるとか卑怯じゃねえか。え?俺か?俺はいいんだよって、たしかに俺の技に似てるな。おそらくは補助魔法の系統だろう。でも物質を具現化させるなんて、召喚魔法みたいだな。召喚魔法で自分の魔力を召喚してたりして。そして補助魔法を上乗せするとああなりそうだ。こんな感じに・・・。


 振り下ろされた両刃の斧が盾に阻まれる!ガキィィン!という音がして盾は二つに割れて消滅しまった。しかし、その間にテツヤ様が体勢を立て直す。

「なんだとぉ!!」

ナトリが驚愕の表情でこちらをみた。

「あ、あれ?」

とっさに思いついたのはテツヤ様を護る盾のイメージだ。奴らの魔装を真似して召喚してみたら、なんとできてしまった。しかも、意外にも簡単に。これは俺が普段から召喚魔法や補助魔法を「魔装」のように使っていたのが原因だろう。寒がりだし、隠れてウォームも使っていたりする。

「貴様!まさか貴様も神に選ばれしものか!?」

「え?神?何のこと?」

「では、神の御業を盗んだのか!!?万死に値する!!!」

ちょっと!なんで標的が俺になってんの!?ちょ!待って!ぎゃぁぁ!!

「吹き飛べぇい!」

「嫌だぁ!!」

衝撃波が半端ない!こんなに距離とって避けてるのに普通に痛い!両刃の斧を避けながらたまに反撃するが、やっぱり予想通り関節部分の隙間にも魔力が通っていて刃が通らない。これはジリ貧ってやつか!?誰か助けて!

「パラライズ!!」

次の瞬間、先にワイバーンで離脱していたエリナが帰ってきており、パラライズをナトリに向けて放った。

「ぐっ・・・。」

効いてる!?もしや以外にも幻惑魔法の耐性が低いのかもしれないのか!?

「シウバ様ぁ!こいつ、めっちゃ魔力多いです!すぐに回復するから早く逃げましょおぉ!!」

パラライズの効きはむしろ悪かったのか・・・。

「よし!離脱だぁ!」

「ま、まて・・・。」

吹っ飛ばされたテツヤ様がなんか言おうとしてたけど、人攫いポジションに抱えてワイバーンに飛び乗る。

「シン殿!撤退の指揮は任せた!」

「うん!任せといて!テツ兄をよろしく!!」

ヒノモト国軍は突撃を中止し、整然と撤退を開始した。

「マジェスター!ナノ!麻痺ってるあいつに魔力ギリギリまでぶち込んでおけ!ユーナたちは2人の回収よろしく!」

「「はっ!」」

「了解!」

そして麻痺して動けないナトリに向かってマジェスターとナノが破壊魔法をありったけぶち込む。回収はユーナとエリナに任せて俺はテツヤ様を乗せてバンシの町へと逃げ込んだ。

「シ、シウバ・・・てめぇ。」

「今は黙っててください!戦略的撤退を開始しますよ!!」



 最後にマジェスターとナノに無理させたのが効いたらしい。スクラロ国軍はその日はバンシにまで攻めてはこなかった。あれでナトリ=スクラロが死んだとは思えなかったが、何かしらの負傷はさせられたようだ。

「テツ兄に勝てる奴がいたとは誤算だったよ・・・。」

「あれは相性の問題だ。」

「最初から次元斬が効かないのは分かってたじゃないか。」

「くそ、負けるとつまらんな。だが、次は勝つ。ちなみにこちらの損害はゼロだ。ゼロ。つまりは勝ちだな。」

「・・・・・・。」

ヒノモト国軍は廃都オーブリオンまでの撤退を決定した。そして本国から援軍を引き連れてくるという。ヒノモト国軍と旧オーブリオン騎士団が去ったバンシはスクラロ国軍に占領された。俺たちは廃都オーブリオンの防備を固める事になった。



これから当分シウバの話に戻ります。

話がごちゃごちゃしててすいません。

つまり、「北でごちゃごちゃいてるけどシウバいない」が分かればついて行けるはず!

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