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3-4 それぞれの国の動向

前回までのあらすじ


たまに電話でいいから愚痴を聞いてもらいたい時ってあるよね。


ガラケーは生産中止らしい ← イマココ!

「なんであんたが帰ってきてんのよ、しかも一人で。」

「私は心はすでに祖国にはない。魔王様にお会いできる時までここにおいていただけないだろうか。」

彼自身、自分の行動を理解できていなかった。本来であれば祖国に帰るとともに責任をとらなければならない立場であり、愛弟子が守っている国を共に守らなければならない立場であった。

「ヨシュア、それでいいのか?」

「ああ、ライレル殿。どちらにせよ、祖国に帰れば私は責任をとって引退だ。それよりかはこの国の行く末に興味がある。」

実際は精鋭6000を無事に帰還させる事が出来れば引退は免れるだろう。だが、ヨシュアにはそんな事をするつもりはなかった。優秀な部下に任せて単身、リヒテンブルグ国へともどったのだった。

「ここにいるんだったら、あんたにも働いてもらうわよ。」

「もちろんだ、アウラ殿。」

「それにそのままの名前だと色々とやりにくいわ。改名なさい。」

「分かった。助かる。」

こうしてネイル国筆頭であったヨシュア将軍は名前を変えてリヒテンブルグ国へと帰順した。魔王の名前を知っている唯一のネイル国の人間が帰らなかったために「邪王」は当分「邪王」のままである。

「おっ!新しい名前は俺がつけてやろうか!?」

「さすがにそれは遠慮する!!」

全力で拒否されたローレは半日落ちこむ事となるが、誰もそれを気にかけない。

「では、今から私はハサウと名乗ろう。」

「ハサウか、分かった。よろしくな。」

ヨシュア改めハサウはライレルの部隊に所属する事となった。後に戦場ではヨシュアである事がばれないように口元を完全に覆った兜をつける彼は「痛撃」のハサウとして二つ名をつけられるほどとなる。


「さて、そろそろフェルディたちが帰って来る頃ね。」

四騎将の最期の1人「策士」アウラが上陸してからというもの、リヒテンブルグ王国軍は食糧調達に励んでいる。これからの季節、食糧が少なくなるために冬越えに十分な量を確保する必要があるためだ。

「しかし、西の大陸に比べて食糧が豊富だねえ。」

西の大陸を制覇したアウラはある程度の統治を行ってから海を渡ったために他の3人よりも時間がかかってしまっていた。その甲斐あってか、西の大陸ではそれぞれの集落の行き来と魔物の狩猟が管理され、「パラライズ」を操る部隊を中心にいまでもテンペストウルフを中心とする騎乗を行う事のできる魔物の捕獲と、食糧となる魔物の狩猟が行われている。もともと魔物の襲撃で命を落としたり食糧難となたったりする事の多かった土地であったので、魔物の管理さえできれば安全を確保できたようなものだった。それにより占領し降伏させた集落からの不満の声というのはほとんど出てこず、むしろ生活水準を向上させたために感謝される事が多かったという。

「あの方の方針に感謝しな!」

行く先々で魔王の宣伝をした甲斐もあり、西の大陸の団結力はバカにできないほどだ。死人がでる事も少なくなったために、その分をこちらの大陸に回す事もできる。西の大陸で魔物の調達と調教、そしてそれを船を使って海を渡り、北の魔大陸の勢力拡大に使う。これが4騎将が考え出した戦略だった。そしてそれは今のところ順調に進んでいる。アウラは春をも待って再度南への侵攻を画策していた。そして、その最終目的は純人の国との接触であるという事を周辺の国々は知らない。



 ネイル国ではリヒテンブルグ王国から解放された約6000人が帰ってきていた。しかし、それを率いる将軍はおらず、側近が指揮するという形になっていた。

「ヨシュア将軍は、ヨシュア将軍は死んだのか?」

ミランダ将軍の第一声はそれだった。もはや同僚というよりは師に近い将軍の安否が今後の国の方針に深くかかわってくる。

「ヨシュア将軍は、合わす顔がないと。このまま出奔するためお前たちが軍を引き連れて国に帰れとおっしゃいました。翌日にはすでにお姿がなく・・・。」

死んだわけでもなければ責任を果たすわけでもない。普段のヨシュアからは想像ができない行動であった。

「ヨシュア将軍がそんな事をするわけがないだろう!何が起きたんだ!」

「おそらく・・・。」

側近はリヒテンブルグ国との戦いで右腕を切り落とされた事から、その後のヨシュア将軍の行動を語った。心情の変化が周囲にも伝わっていたのであろう。できる限り人を殺さない軍にヨシュア将軍が感銘を受けていた事、四騎将と常に共に行動していた事、「邪王」にしきりに会いたがっていた事、事細かに語った側近にはヨシュア将軍の心の変化が理解できていたのかもしれない。

「くそっ!!なんだ!?なんだというのだ!!」

いままでともに戦って導いてきた仲間を捨てるという気持ちが理解できない。確かにリヒテンブルグ軍はむやみに人を殺すことはなかったが、それでも数千人の部下たちが殺されている。首都は陥落寸前であった上にイレクト将軍が攻め取った領域はエレメント魔人国に奪い返されてしまった。しかもその戦場にネイル国の軍は派遣すらできていない。憎む気持ちがあったとしても、恭順する何かを感じ取れるわけがなかった。

「ミランダ将軍。」

「はっ、王よ。」

「まずは冬を乗り切るのだ。冬になれば「邪国」も攻めてはこないだろう。そして、春までに力を蓄えよ。どちらに攻め入るかを検討しなければならん。」

ネイル国はこのままで終わるつもりはない。北の「邪国」もしくは南の「エレメント魔人国」のどちらかと結び、どちらかに攻め入ろうというのだ。

「王よ・・・。」

長く続くネイル国の魔王の血筋が開花しようとしていた。



 ヴァレンタイン王国王都ヴァレンタイン。

「まさかあんなにあっさりトバン王国が退くとは思わなかったな。」

現王アイオライ=ヴァレンタインには一つの策があった。エレメント魔人国を北で戦わせている間に国力を増強させる事はもちろんの事、ヴァレンタイン大陸を戦禍に巻き込まないようにするためには北の魔大陸にヴァレンタイン領が必要であるという事だった。

「トバン王国の軍を退けることができればという条件はいささか簡単すぎましたな。」

献策したのはジギル=シルフィード宰相であり、実行はレイクサイド召喚騎士団である。人選の理由は魔人族に化ける事のできる魔道具をレイクサイド召喚騎士団が所有していたためで、アイオライとしてはできる限りヴァレンタイン王国が戦争に参加している事を知られたくはない。

「これから召喚騎士団の波状攻撃が始まるところだったんですがね。」

レイクサイド領主はそう愚痴る。だが、お互いの損害が少なくて済んだのを最も喜んでいたのはこの男だった。

「いずれにせよ、これでエレメント魔人国の一部を譲渡させる事ができそうだ。どうせあまり肥沃な土地ではないだろうが、軍事目的の領地だ。問題ない。」

宰相の頭の中にあるのはエレメント魔人国への援軍を主な生業とするいわゆる傭兵業である。常にエレメント魔人国の戦力を上回る必要があるが、それに関しては現在の所何の問題もない。それだけヴァレンタイン大陸への侵攻でエレメント魔人国が受けた損害はひどいものであった。

「東もなにやらヒノモト国が大きな戦争になるようだな。」

ヒノモト国が東へ向かっているというのもジギルの中ではありがたい事であった。もしエレメント魔人国を攻め取ろうとしているのであればヒノモト国が大きくなりすぎる。バランスが崩れれば今後の同盟もどうなるかが分からない。外交では常に相手の先を読む必要があった。

「あ、そういえばテツヤの所にシウバ達を派遣したままだったわ。忘れてた。あいつら巻き込まれてなけりゃいいけど。」



オーブリオン大陸バンシの町の北部平原。ここにはスクラロ王国の3500の軍隊が布陣していた。対峙するのはヒノモト国と旧オーブリオン王国の騎士団合わせて約3000。数の上ではスクラロ王国が多く、しかもスクラロ王国の兵は「魔装」と呼ばれる魔力で編み出した装備を着用している。生半可な破壊魔法であればはじき返すこの軍を前に今まで勝てたものはいなかった。しかし、ヒノモト国の軍勢の前には2人の人物が突出して立っている。「神殺し」の魔王テツヤ=ヒノモトにレイクサイド召喚騎士団第6特殊部隊隊長「剣舞」シウバである。

「ちょっとぉぉぉぉぉおおおおお!テツヤ様!なんで俺まで!」

「あいつら次元斬が通用しねえみたいなんだよ!そしたら3500はちょっと数が多い!半分手伝えって!!」

「待って!待って!なんで2人で突っ込む事になってんですか!?後ろの軍隊は!?」

「あいつらはいつも俺が突撃して混乱してからが出番だ!じゃないと損害が増えるだろ?それにユーナ達にももしもの事があったらハルキに悪いからな!」

「俺はいいの!?そして2人で突撃したら確実に1人損害が出ますけどぉ!!?」

「お前なら大丈夫だ!!ほら!いくぞぉぉぉ!!!!」

「まじかぁぁぁぁぁああああ!!!!!?」


 決戦の火蓋が切って落とされた時、太陽はちょうど真上に位置していた。


やっと、やっと、シウバが主人公らしくなってきた・・・・・・え?主人公らしくはない?ただ出番が回ってきただけだって?そんなバカな!?

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