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3-2 遊撃隊の謎の人物

本日の少量投下第3弾!諸事情により、これで打ち止めです。

 エレメント魔人国の北東には肥沃な大地が広がっていた。魔王アルキメデスが戦死したのちにネイル国のイレクト将軍率いる軍隊が占領していたが、「邪国」に蹂躙されていた。そしてその「邪国」は北へ去った。自然とそこは空白地帯となる。籠城で占領軍を出す力のないネイル国を置いて、エレメント魔人国とトバン王国が取り合う形となり、それぞれ軍を進めていた。


「ジェイド将軍、「邪国」の軍とは結局交戦したんですかい?」

派遣されているのはジェイド将軍率いる第1軍とホーリー将軍率いる第2軍である。本国は魔王ベナ=トバンと第3軍を率いるラッセ将軍が守っている形だ。

「あれとは戦わずに終わったが、偵察部隊は帰って来なかったな。おそらくはやられたんだろう。戦っていたらまずかったかもしれん。」

「でもヨシュアが「邪国」に降るとは思いもしませんでしたな。」

「何かがあったのだろう。それが何かは分からんがな。」

トバン王国の率いる軍は総勢1万5千に及ぶ。同時に進軍しているエレメント魔人国の軍は8千だというから、数の面では負けるわけがない。しかし、帝都包囲戦でも思い知ったように、戦いは数で決まるわけではなかった。この二人に慢心は欠片もない。

「そろそろ国境を超える。いつ交戦してもおかしくないぞ。」

「分かってますって。今回もどうせブルーム=バイオレットが遊撃隊を率いてくるんでしょう。総大将は、もしかしたらリゼ=バイオレットが自ら率いてくる可能性もありますしね。」

実際、今のエレメント魔人国で多くの兵を率いることのできる将校は少ない。次世代が育つまでにはもう少し時間がかかるだろう。その点、トバン王国は若い世代の将校が豊富である。

「しかし、今我がトバン王国と戦って、エレメント魔人国は勝てるはずがないのだが・・・。」

帝都包囲戦までの間に多くのエレメント兵が死んでいった。戦争開始時であればまだトバン王国とも拮抗した戦力であっただろうが、今現在は大きく差が開いてしまっている。もはやネイル国との同盟の必要性がないのだ。「邪国」に蹂躙された領土を有難くいただいた後にはネイル国をも攻めるつもりである。

「たしかに、何らかの切り札があってもおかしくないですな。」

それが何かは予想もつかなかった。



「母上、トバン王国の部隊は総勢1万5千であるようです。」

エレメント魔人国は8000の軍を出していた。率いるのは魔王代理リゼ=バイオレットである。そしてその内500の遊撃隊は息子のブルーム=バイオレットが統率していた。

「ではこのまま進軍だ。増援がない事は確認できたか?」

「諜報部隊からは魔王軍も第3軍も本国に残っているのが確認できたとの連絡がありました。」

「分かった。遊撃隊は敵の背後をつけ。目的は攪乱だ。機会があれば将の首の一つや二つ取って来てもかまわんぞ。」

リゼ=バイオレットは第3混成魔人部隊の将軍としてここに来ているつもりでいる。開戦時は他の部隊の兵が多く、指揮系統に不安があり、実際に勝手な行動をする将兵が多かった。結局、それらを御しきることができずにネイル国とトバン王国に後れをとってしまった形となったが、第3混成魔人部隊の損害はさほどでもない。この軍ならば、手足のように動かせる。そして、リゼには奥の手もあった。

「貴様らの力も利用させてもらうぞ。」

「もちろんッス!そのために来たんスから!」

今回に限っては、遊撃隊が2部隊ある。そして、数は少ないにも関わらずその実力は自慢の息子の部隊など相手にならないほどだ。認めたくはないが。

「さて、魔王としては未熟であるが将軍としては歴戦だという事をトバン王国の若造どもに示さねばならん。ここはただでくれてやるほど安い土地ではないぞ。」

かつてここにあった王国はエレメント魔人国との戦争中に魔喰らいが発生したために滅んだ。今、魔喰らいがいなくなって肥沃な土地に戻っている。エレメント魔人国の再興には必要不可欠だった。



「ホーリー将軍、エレメント魔人国の軍勢が確認できたようです。数は約8000、10時の方角でこのままだと約半日の距離だそうです。」

「8000!どうしちまったんんだ?リゼのおばちゃんは!?」

トバン王国軍は第1軍と第2軍を合わせて約1万5千。この規模は別に奇をてらったものではなく一般的な数だと思っている。今のトバン王国では問題なく派遣できる軍勢だ。対してエレメント魔人国は少なくとも1万。できれば同数をそろえてきたい所だと思われた。しかし、8000。約半数の敵であれば戦術すら必要としない事が多い。であれば、何かをしてくる可能性があるが、その何かというのは予想がつかないものである。

「だからと言って、委縮するのもどうかと思うんだがな。」

エレメント魔人国は昔から変わった武装をする部隊が少ない。特に第3混成魔人部隊は一般的な歩兵が多く、魔獣に騎乗する遊撃隊の数も少なめであった。その代わりに防衛戦ではかなりの力を発揮するのであるが、今回は野戦である。ブルームの遊撃隊がいるとはいえ、前回ホーリーにやられている程度の実力という事もあり、そこまで警戒する相手でもない。将来は分からないが。

「あのおばちゃんに限って、自棄っぱちになるなんて事はないと思うんだがな。」

しかし、答えがでるわけもなく、ここはそのまま行軍を続けるという正攻法をとる事にしたホーリー将軍であった。たしかにこの時点での戦力差を把握する事は不可能である。トバン王国がヴァレンタインと同盟を結んだと言うのは極秘裏にすすめられていたし、参加している人数も数十人、全て魔族に変装する魔道具を装着しての参戦であった。



「さあ、行くッスよ!」

「お待ちください!この状況でですか!?」

「今が好機ッス!それが分からんなら置いて行くッスよ!俺らだけでも十分ッス!」

「なっ!もちろんついて行くに決まってます!」

行軍するトバン王国、伸びきった隊列はこの先の広がった場所で整えられ、前方のエレメント魔人国本隊との戦いに備える予定であった。

「狙うはあのエラそうな奴ッス!でも首を飛ばす必要はないッスよ!これは、ここで襲われるという事を教えるのが目的の襲撃ッスから!では、行くッス!」

黒い大型の狼に騎乗した数人が先頭となって崖を降る。その後ろにはさらに黒狼に騎乗した者たちが続くが、こちらは2人乗りである。そしてその後から魔獣に乗ったブルームの率いる500の遊撃隊が続いた。

「ぐっ、速い!」

フェンリルに引き離される魔獣たち。そしてその先頭のフェンリルに乗った男は伸びきったトバン王国の隊列に突撃する。


 大型の矛を振り回すたびに吹き飛んでいくトバン王国の兵士たち。破壊魔法で応戦しようにも照準が定まらない速度で突撃を敢行する。そしてその後方からは黒狼の後ろ側に乗った人間が放つ破壊魔法で戦場は混乱する。

「ブルーム!こっちッス!早く付いて来るッス!」

大型の矛を持った先頭の男がトバン王国第1軍将軍ジェイドへたどり着く。護衛はあっという間に矛で屠られていた。

「何者だ!貴様ぁ!!?」

「死んでいく者に俺の名前は関係ないッス!召喚!」

「なっ!!?召喚魔法だと!ヴァレ・・・。」

「うるさいッス!!」

両脇をアイアンドロイドで固められ、魔法を繰り出す暇もなく利き腕を矛で落とされる。

「ぎゃああぁぁぁ!!!」

「将軍のくせに見苦しいッスよ!ブルーム、あとは任せたッス。好きにしていいッスよ!俺は残りを蹂躙するッス。」

「へ、ヘテロ殿・・・。」

「本質を見極めるッス。今必要なのはブルームの功績と名声ッスよ。気に入らないなら自分でできる実力をつけてから文句言うッス。ブルームのお父さんはこの程度は余裕でしたッス!ハルキ様がいなければ今頃はエレメント魔人国ヴァレンタイン領ッスよ!」

そういうとその人物は周囲のトバン王国兵を刈り取るように蹂躙し始める。

「ヨーレン!将の首が飛んだら撤退ッスよ!お前が殿ッス!」

「げぇ!マジっすか!?」



「ジェイド将軍がブルーム=バイオレットの遊撃隊に襲撃され戦死!!」

「なんだとぉぉぉぉ!!!?」

エレメント魔人国本隊との交戦の準備をしていたホーリー将軍は前線で驚愕の報告を聞いた。

「どこまで強くなってんだ!?あいつ!!」

前回の戦いではジェイド将軍を討ち取れるほどの実力はなかったはずだった。完全に戦力を見誤ってしまった結果がこれだ。慢心などしていたつもりはない。向こうの成長が想像を超えた物だったのだ。

「第1軍は崩壊していないか?」

「数は保っておりますが、将校を中心に打ち取られた模様です。指揮系統が機能しておらず、混乱が収束できていません。」

「・・・撤退だ!第1軍を収容して国境まで行くぞ!」

トバン王国は西への進出をくじかれた形となった。ブルーム=バイオレットの名声はここで大きく宣伝され、次期魔王候補として周知されるようになる。ただ、本人の表情は曇ったものであり、その理由を知っているのはごくわずかな側近のみであった。


「くそがぁ!!なんでこう撤退戦ばっかり上手くなってんだよ!!」

トバン王国第2軍ホーリー将軍はエレメント魔人国の追撃を防ぎつつ、最小限の被害で国境まで撤退する事に成功する。エレメント魔人国は北東地方を奪還し、トバン王国は第1軍将軍であるジェイドを失うという大敗北であった。


謎の人物とは誰なんだ!新キャラか!?

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