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1-3 エレメント魔人国将軍の葛藤

前回までのあらすじ!


あいつ、雑用係だったよね? ← イマココ!

 中央魔大陸屈指の魔人国「エレメント」。最盛期には魔王アルキメデス=オクタビアヌスを筆頭に優秀な将軍が各方面へと侵攻し、全部で4軍の大部隊を有していた。中でも第1混成魔人部隊と第2混成魔人部隊は主戦場である北部ネイル国と、北東に位置するトバン王国との戦闘に明け暮れる日々が続いた。

 第2混成魔人部隊を率いる将軍ニルヴァーナ=クリスタルはこの2か国に対して苛烈な攻めを見せ、特にジン率いる遊撃部隊はこれらの国々の主だった武将たちを殺戮していった。多くの領地がエレメント魔人国に占領されることとなり、領地拡大に歯止めが効かなくなったエレメント魔人国は帝国として覇権を唱えるようになる。西や南にも侵攻し、数十か国の魔人族の国々を併合したエレメント帝国の勢いは止まることがないと言われていた。

 しかし、第4混成魔人部隊が遠く南のヴァレンタイン大陸であろうことか純人相手に敗北したころから歯車はかみ合わなくなる。主力を北部に集中させていた魔王アルキメデス=オクタビアヌスは第2混成魔人部隊に大軍を与え、雪辱を削ぐため送り出した。しかし第2混成魔人部隊は数万の兵とともに壊滅、数年後に魔王自ら第1混成魔人部隊を率いて再度攻めるものの、主力ともども帰ってこなかった。

 残されたエレメント魔人国の将兵は再編成を余儀なくされる。そこで息を吹き返したのがネイル国とトバン王国であった。いままで侵攻され失った領地を取り戻すべく、これら両国は同盟を組み、エレメント魔人国へと反撃を開始した。第2混成魔人部隊のために多くの武将を失っていたが、若い世代が育ってきた事もエレメント魔人国にとっては運が悪かったのだろう。両国の軍を率いているものは若い武将が多い。それ故に作戦にも士気にも勢いがつく。兵力の多くを失ったエレメント魔人国にとっては対処できる勢いではなかった。


「リゼ将軍。純人の使者がまいりました。」

第3混成魔人部隊を率いていたのは将軍リゼ。エレメント魔人国で唯一生き残った将軍である。

「純人だと?」

「はっ、レイクサイド召喚騎士団第2部隊のアレクと名乗っております。」

「通せ。」

魔王不在のエレメント魔人国。本来であればアルキメデスの子孫が魔王を引き継ぐか、この将軍リゼが魔王を名乗るべきなのだろうが、リゼは頑なに魔王を名乗りはしなかった。そしてアルキメデスに子供がいない事が致命的であったのだろう。指導者が不在のエレメント魔人国はまとまりが悪い。しかし、リゼの予想どおり、リゼが魔王を名乗ればエレメント魔人国は分裂した可能性が高かった。それほど、各国の魔王とリゼの実力差は離れている。特にヒノモト国などと比べるとリゼは全く太刀打ちできないだろう。次の世代の中で魔王にふさわしい者が現れるのを待つ。これが生き残った者たちの選択であった。しかし、周りの国々はその時間を待ってくれるわけが無かった。

「私はアレクという。レイクサイド召喚騎士団第2部隊所属だ。現在はアイオライ=ヴァレンタイン王からの命令も受けてここにきた。状況は悪いようだな。」

「いかにも、見たままだ。」

「我々ヴァレンタイン王国としては、お前たちエレメント魔人国の方がネイル、トバン同盟よりも組し易いと思っている。故に、無償で助けてやってもよいというのが我が国の王の考えだ。」

「傲慢だな。」

「それほどの力の差があるのは身をもって体験しただろう。我が主がいる限りその差は開くばかりだ。」

「ハルキ=レイクサイドか・・・。」

エレメント魔人国にとっての鬼門、ハルキ=レイクサイド領主。このヴァレンタイン王国の一領主によってエレメント魔人国の侵攻はすべて防がれてきたと言っても過言ではない。第4混成魔人部隊の半数が壊滅させられた戦いにてレッドドラゴンを召喚したこの領主はその後もことごとくエレメント魔人国の侵攻を防いだ。時には数倍の兵力差で上陸した第2混成魔人部隊を文字通り壊滅させ、多くの将兵がヴァレンタインの地から帰ってこず、極め付けは魔王を討ち取られた事であろう。

 その戦略的手腕もさることながら、内政も外交も目を見張るものがある。現在ではヒノモト国との友好同盟も強固なものとなり、エレメント魔人国のみならず、ヴァレンタイン周辺に侵攻が可能な勢力など存在しなくなってしまった。そんな中でもヴァレンタイン王国はその内政を充実させ、国力の差は明らかすぎるものとなった。その筆頭がハルキ=レイクサイドのレイクサイド領である事は分かっている。魔人族がいくら平均的に純人や亜人、獣人よりも魔力に優れているとはいっても所詮は国としての力がこれほどまでに開いてしまっては相手にならない。しかし、十数年前まではこの立場は逆であったはずだ。

「我らは助けは乞わない。しかし・・・、お前たちが我々を勝手に助けようが我らは関与しない。」

「では、好きにやらせてもらおう。」

「我らはお前たちと同盟は組まないぞ。」

「だから、好きにすると言っている。」

そう言うとアレクは出ていった。正直、この状況でヴァレンタイン王国が何をしても帝都は陥落するだろう。今から軍勢を送ったところで間に合うわけが無い。相手は数万、こちらは7000がいい所だ。そしてその多くが負傷兵である。若い世代を中心に逃がした事もあるが、もはや国力が持たない。

「いままでの侵略のつけが回ってきたか。」

リゼも軍を率いて多くの地域を侵略してきた。西の魔大陸への侵略を任されたのはリゼの第3混成魔人部隊である。西の大陸の中央部はあまり肥沃な土地ではなかったが、南はほとんどエレメント魔人国が占領した。しかし、今現在ではその占領した土地も他の国に奪われてしまった。

「あがけるだけ、あがく。我らに降伏は許されない。」

リゼの決意は固い。そしてその願いはある男によって叶えられる事となった。



「ぎゃぁぁぁぁぁああああ!!なんだこいつら!?」

「サイクロプスですね!単眼巨人です!昔はよくフラット領に侵攻してきたエレメント軍がつれてて・・・。うぉっ!!」

巨人たちの群れの中を疾走する。時たま踏みつけてこようとする足に斬りつけて。

「そういう意味じゃねえ、マジェスター!なんでこんなでかいのを俺たちが相手にしなきゃならんのだ!?ええい!しつこい!剣舞!!」

「それはぁ、シウバ様が片手間で将軍の暗殺なんかするからですぅ!!あれに比べれば楽だってアレクさんが言ってましたぁ!パラライズ!」

「さすがシウバ様です!」

「だからって、なんで次の標的がこいつらをあやつってる魔人族なんだ!こんなんいくつ命があっても足りんわぁ!!」

「あ!いましたぁ!あいつじゃないですかぁ!?」

「発見!アイスストーム!!!からの氷の槍ぃぃ!!!」

「よぉしぃぃぃ!!!離脱だっ!!」

標的の魔人族を倒して即離脱!しっかし、巨人はでっかいぞ!


「うむ、これでさらに補給が滞る。巨人部隊が持ってくる補給の量は半端ないからな。」

「・・・アレク隊長・・・。なんであいつらワイバーンで逃げないんですか?めっちゃ汗だくで走ってるんですけど。」

「あっ・・・。」

「・・・まさか。」

「召喚契約の素材渡すの忘れてたわ。」

「・・・・・・。」


「「うぉぉぉぉぉおおおお!!」」



 今日もレイクサイド騎士団特殊部隊の活躍は続く。


仕事がぁぁ・・・orz


プレゼン玉砕・・・酒を飲もう

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