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1-4 シウバ=リヒテンブルグの決断

前回までのあらすじ!


ワープの正式名称って言える? ← イマココ




 状況を整理しよう。


「奈落」の第4階層の先にあった通路を出るとそこは見知らぬ大地であった。生息している木々は知らない物が多く、テンペストウルフという西の大陸でしか確認されていない魔物が襲ってきた。ワイバーンで上空に上がってみると、明らかにヴァレンタイン大陸ではない。色々な要素から推測すると、ここは西の魔大陸である可能性が高いと思う。

「ですが、直線距離にして1日分も歩いてないのでは!いくら「奈落」が長かったとしてヴァレンタイン大陸の外にまで続いているなどあり得ません!」

あり得ない事が起きている。それはこの首を飛ばされた魔物を見ていれば実感する。奇襲で倒せたが、なによりでかい。マジェスターはよくこいつの攻撃を凌いでいたものだ。

「とにかく、まずは安全を確保しよう。ここが西の魔大陸だったとしても、ユーナにワイバーンを2頭召喚してもらってヴァレンタイン大陸へ帰ることは可能なはずだ。」

そう、まだ慌てる必要などない。

「そうだね!いくら西の大陸が遠いって言っても、数日飛んでれば帰れるよ!」

ユーナの魔力も相当なものだ。数日ワイバーンを2頭、休憩をはさめば十分に帰れるに違いない。


「シウバ様ぁ、・・・あれ・・・。」

しかし、エリナの指の先には想像しなかったものがあった。

「な、なんだあれ!?あのでかさは!!?」

そこにあったと言うか、飛んでいたのはでかい竜だった。ウインドドラゴンの数倍はある。南の山脈から飛んできたみたいだ。

「・・・もしかして、青竜?」

青竜とは四獣とも呼ばれる天災級の魔物の一つである。でかい竜だそうだ。つまり、あれだ。

「まじかよ、さっき飛んでる時に見つからなくてよかった。」

これで、ワイバーンでぴゅーんと帰る案はなくなったわけだ。さすがにあれには勝てない。いままで四獣に勝てたのは魔喰らいと呼ばれるさらに化け物じみた化け物と、「大召喚士」ハルキ=レイクサイドのみである。あれと同格に勝つとはハルキ=レイクサイド、どれだけすごいんだ?


 青竜はこちらに向かってきている。もしかして先ほど飛んでいたワイバーンを確認しに来たのかもしれない。

「まずは隠れよう。あれに見つかって生きていられるとは思えないしな。」

俺たちは木々の間に隠れる事にした。

「グオァァァァァア!!!!!」

青竜の方向があたり一面にこだまする。

「シウバ・・・。」

こいつは本当に巨大だ。戦って勝てる相手ではなさそうだ。



 数十分後、青竜はもといた山脈の方へと帰っていった。

「生きた心地がしませんね。」

マジェスターが汗びっしょりで言った。フランさんやテツヤ様に斬りかかっていったこいつがこんなになるなんて。

「闇雲にワイバーンで飛ぶのはよそう。またあいつが来るかもしれない。」

「うん、分かった!」

先ほど頭を落としたテンペストウルフは洞窟の中に放り込んでおいた。

「まずは本当に安全を確保しよう。あの洞窟は安全だと思うか?」

「ここよりはずいぶん良さそうな気がするね!」

「よし!あそこを拠点にしよう!もしかしたら「奈落」に帰れるかもしれないしな!」

しかし、その後も「奈落」への通路が開く事はなかった。


「全く野営の準備ができていませんでしたからね。とりあえずできるものでなんとかしましょう!」

こういう時に優秀なのがマジェスターだ。こういう時には。

「まずテンペストウルフは解体します。毛皮は居住空間の毛布兼寝袋へ、大きいから4人分確保できるでしょう。縫い針がありませんからだいたいの大きさになります。肉は加工して燻製にしておきましょう。煙がでるのが危険かもしれませんが、食糧がなくなるよりはマシなはずです。魔物が襲ってきたならば撃退もしくは逃走できるようにしてからですね。骨はできるだけ回収して洗浄した後に釣針や矢じりにします。これが終わったらエリナと縄の代わりになりそうな蔓を見つけてきます。斧がありませんので細めの木しか加工できませんが、だいたいの物はできるでしょう。」

「奈落」での生活が完全に生きている。この程度の苦境サバイバルなんていつもの事だ。

「シウバ様とユーナ様は食糧になりそうな物を探してきていただけますか?できればテンペストウルフは旨そうじゃないので、他の食糧が取れるならば燻製はやめたいですしね。」

「分かった。行こう、ユーナ。」

「うん!」


周囲の森を視認できる範囲探索する。こんな時に離れ離れになるのは得策ではない。あまり遠くに行くわけにはいかなかった。

「森に・・・違和感があるな。」

なんというか、この森はあまり太い樹がない。つまり、すべて新しい樹でできている森なのだ。古くても十数年といったところか?さらに見たこともない草木が多い。食用になるものかどうかが分からない。

「お、キュアリーフ。」

それでも見知った薬草もないわけではなかった。食用ではなくとも薬草はあるに越したことはない。香草も少しは見つかった。

「さすがに範囲が狭いとあまり見つからないな。」

「でも、そんな遠くに行くわけにはいかないよね!」

思い切って遠くまで採取に行くか?しかし洞窟を視認できる範囲からでるのは危険な気がする。出るならば4人そろってだ。


「シウバ!」

「・・・あぁ、俺も感じた。」

気配がする。これは、囲まれたか?しかし、あまり手練れのような雰囲気はない。

「とにかく、4人で固まろう。洞窟へ!」

「うん!分かった!」

俺とユーナはすぐに洞窟へと帰ることとした。

「シウバ様!」

「あぁ、俺たちも感じている。これは囲まれてるな。」

マジェスターたちも感じ取ったようだ。十数人に囲まれている。森の中から、時々木々を踏み抜く音などが聞こえてきた。

「あの音からして素人か?ここが西の魔大陸だとしたら・・・。」


「純人がここで何をしている?」

気配の方角から現れたのはやはり魔人族であった。体格のいい男性である。

「・・・簡単に言うと、迷子だ。」

「迷子だと?信用できるわけがない。ここがどれだけ大陸の奥地だと思っている?」

まあ、そうだよな。いきなり生活圏にあらわれた純人に対して警戒心を抱かないわけがない。

「疑問はもっともだが、俺たちも何故ここにいるのかが分からん。見てもらえば分かるが、野営の準備すらしていない。」

「その毛皮は!?テンペストウルフか!?」

「ああ、襲ってきたんで殺した。まずかったか?でも、俺たちも殺されるわけにはいかなかったんでな。」

魔人族の集団がざわめく。先ほどの気配の殺し方の雑さを見れば、この集団の中にテンペストウルフに対抗できる奴が多いとは思えない。これは主導権を握れたか?それとも宗教上の理由でこいつを殺してはならないとかいう最悪の事態も想定しなければならないが。

「君たちに敵対するつもりはない。俺たちの目的は純人の大陸へ戻る事だ。」

まだ完全にこの魔人族が信頼できるわけではない状況であるが、この身のこなしから言って遅れをとる事はないだろう。それよりも情報が欲しい。ここがどのような場所で、何が住んでいて、どうやったら帰れるのかだ。

「頭、こいつらだいぶ強いですぜ?」

先頭にいた魔人族とは別の魔人族の男が後ろのひときわでかい体格のいい魔人族へと語りかける。奴がこの集団の長であろう。

「純人よ、そのテンペストウルフはここいらの主だ。こいつには多くの同胞がやられた。おぬしらには関係のない事でも仇をとってくれた事には礼を言いたい。」

「頭!?」

「黙れ。もはや魔人族であろうと純人であろうと、この土地に存在するものに区別などあろうか。あるのは純粋な強さのみよ。」

お、意外にも話が分かる奴がいる。


「我が集落へと招待したい。そこで話を聞いてくれるであろうか?」

初対面の純人を集落へ?裏があると思ってしまうのは仕方ないだろう。

「その意図が分からん。なぜ俺らを招待する?」

「同胞の仇をとってくれたという礼が半分、残りは我らの集落にはここにいる以上の強き者がおらん。テンペストウルフから逃げるように食糧を採取しては集落に逃げ込む日々だ。おぬしらであればそのテンペストウルフですら食糧とする。」

「つまり、用心棒として招き入れたいと?」

「そういう事だ。おぬしらの言う事が真実であれば、悪い提案ではないはず。こちらにとっても良い。どうだ?」

裏がある事を隠しはしない、と。他にも理由があるかもしれんが、どうだろうか。

「ユーナ、どう思う?」

「うん、青竜がいる限り空を飛べないだろうからこの人たちに付いて行くのも悪くないかもね!見た感じ、私たちでもなんとかなりそうだし!」

テツヤ様のイメージが強すぎて、魔人族とはめっちゃ強くて意外といい人という変な感じのイメージが離れない。信用できるとは思っているわけではないが、強く疑うというほどでもない気がする。

「たしかに、ここにいても俺たちとしては進展はしない。付いて行くのもいいと思うがどうだ?」

「私はシウバ様の行かれる所について行くのみでございます!」

「私もついて行くよぉ!」

俺たちは魔人族の集落へと付いて行くことにした。



 この選択が良かったのか、悪かったのかは分からない。ただし、これだけは言える。これが俺の人生の分岐路だったというのは間違いない。



サイドストーリー平行して書いてまーす


誤字脱字矛盾点はスルーしといてねー

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