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4-5 知恵者エリナ

前回までのあらすじ



地底湖に潜む怪魚!

その全長は10メートルを超す!

「私に釣れない魚などいない!」

最強の釣り人エリナ!

食欲の権化シウバ=リヒテンブルグにマジェスター=ノートリオ!



彼らの挑戦は続く!


 マジェスターとエリナが帰ってきてから、第3階層の探索を再開した。吹き抜けの広場はほぼ正円状で広い、一番上の段まで上がるのにだいたい4段くらいの段差がある。1段は10メートルくらいだから、かなりの高さだ。ところどころ、坂道になっていて次の段に上がれる場所があるが、そこに行くまでが遠い。そして、だいたい1段に1匹くらいのペースで白い奴がいる。

「シウバ様!今日こそは白熊を倒しても素材だけ剥いで次に進みますからね!」

ぐはぁ!?まさか、エリナにこんな正論を吐かれる日がくるとは!?

「毎回、第2階層にまで持って帰っていたのではいつまで経っても進めませんからな!」

マジェスターとしてはさっさと次のクマーと戦いたい様子。なんだこの状況。

「では、少しだけ肉を取って次に進む予定としよう。」


 氷の世界でも氷魔法は有効だ。むしろ、解けないから威力が倍増している。氷耐性ぎりぎりの所で生活している奴らにさらに氷をぶつけるのだから当たり前なのかもしれない。つまり、マジェスターが調子に乗っている。

「はーっはっはっはっは!!」

手あたり次第氷魔法を連射するマジェスター。今までと違って1発1発の魔力の消耗がかなり少ないためにこういう事もできるのだそうだ。それにしてもここに来てから総魔力がかなり上がっていそうである。もともと実力的にはSランクパーティーにいてもおかしくないだけの物はあったからな。・・・しかもイケメンときた。中身が非常に残念であるから、まあ、爆発はしなくてもいいかもしれん。

「とどめ!」

白熊の下半身を完全に凍り付かせて、最期に特大の「氷の槍」を頭部に叩き込むマジェスター。・・・おいおい、1人でSSランクをやってしまったんじゃないか?俺たち、今回は何もしてないぞ?

「すごぉーい!マジェっち!」

「誰がマジェっちだ!!?」

このやり取りも慣れてしまった。しかし、マジェスターが強い。いきなり強くなった印象すらあるけど、もともと強かったのか?さすがに魔力が切れそうになってるみたいなのでMP回復ポーションを渡しておく。

「では、解体するために第2階層へ持って・・・。」

「「素材を剥がして次に進みますよ!」」

むう・・・何もハモらなくてもいいじゃねえか。


 エリナのパラライズの成功率もかなり上昇してきた。数秒間麻痺するという事が戦闘では致命傷になる。パラライズが効いたのを確認するのに2秒、近寄るのに2秒、剣を振り下ろすまでに1秒の計5秒ほど麻痺してくれるのだ。オフェンスアップを活用した俺の剣の威力の上がっており、一撃を急所に叩き込むことができればたいていの魔物は仕留められる。このコンビネーションはかなり有効だ。むしろ、普段の戦闘の際に感覚が鈍ってしまうかもしれない不安があるほどに。

 グレーテストホワイトベアーを4頭ほど狩って、氷の魔石を3つ、皮を4つ手に入れた。もともとかなりでかい魔物だから皮がかさばる。戦闘中は放り投げておくとしてもこれ以上は持って移動できそうにないな。

「次で一旦帰ることとしよう。」

さすがにグレーテストホワイトベアーが数日で再発生するような事はないと思う。数年かけてこの量がこの洞窟に生息したと信じたい。次来るときはもっと少ないはずだ。こいつらに共食いの習性がなければの話ではあるが。

 結局、4段目までは到達する事なく中継地点まで帰った。


「第3階層にも中継地点があった方がいいかもな。」

第2階層と違って、フェンリルであっという間に突破するわけにもいかない。でも移動に時間がかかるのは避けたい所だ。なにせ常時ウォームをかけてないと存在すらできないくらいの寒さだからな。中継地点での防寒対策を考えるとかなりの大がかりな施設になってしまうかもしれない。そしてそこがクマに襲撃されない保証もないために、課題は山積みだ。どうしたらいい?

「あー、あの4段目まで梯子で上がれたら楽なのにねぇ・・・。」

エリナがため息をつく・・・。

・・・・・・。

・・・・・・。

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」



「「それだ!!!」」



 何も馬鹿正直にあんなでっかい空間をえっちらおっちら歩く必要なんざ全くないわい!最終的な目的地は入り口のすぐ上なんだ。梯子を使ってショートカットだ!

「マジェスター、町に行って、はしごを作る道具と非常用の縄梯子を何個か買ってきてくれ!」

「承知いたしました!」

 ナイスエリナ!これですぐに第4階層だぜ!そうと決まればマジェスターとエリナがいない間の食糧を調達しに第3階層に戻ろうか。どうせ肉は凍ってしまってて腐る事なんてないんだ。さっき倒したクマを運んでこよう!いでよフェンリル2匹!氷の塊といえども俺の魔力の乗ったアダマンタイト製の包ちょ・・・剣ならば切ってこれる!今日はクマ鍋だ!



 一人で第3階層まで行って、クマにやられかけたのは内緒だ。俺は現在第1階層のテントまで戻ってきている。マジェスターとエリナはすでに町に出かけたようだ。薬の調合をしながら時間を過ごすとしよう。オフェンスアップの特訓もしなければならないし、この1人の時間が最近好きになっている。色々と考えてしまう事はあるが、概ね順調に事が運んでいるだけあって、町にいる時よりも心が穏やかだ。最近はあまり叫んだり奇声を上げたりしてないしな|(嘘)。

 1日かけて薬の調合を終えた。オフェンスアップの特訓のためにノーム召喚をけちったのが時間がかかった理由でもある。まあ、時間はたっぷりある。こういう考えができるってのが素晴らしい。こんな野生児みたいな生活をしている今の方が衣食住が満たされているというのが笑ってしまう。


「オフェンスアップ!」

さあ、特訓だ。今から夕食までずっと剣に魔力を帯びさせよう。できたら何かを切った方がいいかもしれない。手頃な岩を見つけて斬ってみる。この補助魔法をするようになってから剣の手入れが楽になった。刃こぼれがかなり少なくなるのだ。さすが「勇者」の技だぜ。

そして戦闘スタイルも少しずつ変わってきている。前までは両手剣で手数を稼ぐ戦い方が主流だったが、最近は一撃必殺を狙い、左手用の剣を両手で持つ事が増えた。でも、今の所、ユーナの長剣を手放すつもりなどない。これはユーナに再開した時に返すんだ。預かりものなんだよ。



 次の日の朝、なにやら洞窟の入り口の方から風が入ってきた。バッサバッサという変な音も聞こえたが、それは風と共にすぐになくなった。

「なんだ?」

 様子を見に行ってもいいが、はぐれ魔物とか面倒事だと厄介だし、ここのテントはふつうは気づかれないようにできている。やり過ごすこともできるけど、どうしようか?

「でも、まあ、ちょっと見て来よう。」

第1階層の広場へ出た。そうすると入り口の方から数人の人がやってくるのが見えた。冒険者か?また俺の噂を聞いて素材を売ってほしいという人たちが来たのであれば安く売ってあげようと思った。マジェスターとエリナにまた怒られるな。

 しかし、俺の予想は大きく覆される。それもかなりいい方向へ。




「シウバ!やっぱりシウバだ!」



 忘れもしない黒髪。少し伸びたかな?華奢そうに見えるけど均整のとれた身体。質の良さそうな鎧とマントが良く似合っている。出合った時とは違って笑ってる。やっぱり笑ってるとめちゃ可愛い。元気よく手を振るその姿は毎晩思い浮かべていたあの姿そのままだった。髪型と装備は違うけど、あの頃のままの彼女だ。


「ユーナ!」


つい、涙が出た。馬鹿な!?彼女の前だぞ!でも、どうしても止まらない。

「ユーナ!」

もう一度叫んだ。ここにマジェスターとかエリナがいなくて良かった。こんな情けない所を見られてたまるか。

「なんで泣いてんのよ!?」

こっちに歩きながら笑ってる!やっぱりユーナだ!どうしよう、髭剃ったのは3日前だ。髪もぼさぼさで水浴したのはもっと前のような気がする。

「えっと・・・。」

ユーナに会ったら言いたい事が沢山あったんだ、俺もこの数か月でかなり特訓した!ユーナに教えられた事で何度も救われたよ!薬の事も沢山覚えたし、料理だってユーナに負けなくくらい頑張った!それで、それで、・・・何て言うつもりだったっけ!?思い出せない!

「久しぶりだね!シウバ!」

ああ、もうすぐで手の届くところにユーナが来る。何て言えばいい?誰か教えてくれ。

「ん?どうしたの?」

ユーナの手が俺の顔にかかる。涙をぬぐってくれていると分かったのは一瞬遅れてからだった。



「会いたかった、・・・あれからずっと君を想っていた。」



 なんて事はない。これが言いたかっただけだ。

 言い終わると、俺は泣き崩れてしまった。なんて情けない。



これで第一部は終了です。ちょっと切りが悪いですけれども、ユーナとの再会と次なる問題までの間に終わっておかないといつまでたっても区切りにならないですからね。

第2部も書いてますが、本日の投稿はこれだけにしときます。更新日に読んでない人には関係ないですが、明日から始まる第2部にご期待ください。さあ!書きまくるぞ~!




次回予告!


まさか、よりによってあいつをモブ扱いしていたとは!?


次回「えっと?どなたでしたっけ?なんとなく記憶にあるようなないような。え?前作に出てた?そうだったっけ?」

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