4-3 幻惑使いエリナ
前回までのあらすじ!
クマさん〇ー出会ったー
スタコラサッサッ〇ノサー
って待てやこらぁぁぁ! ← イマココ
ウォームという補助魔法がある。対になる魔法でクールというのもある。どちらも対象者の周囲の気温を上げたり下げたりする魔法である。あれがないと第3階層は移動できそうにない。毛皮もこもこ状態でクマさんと戦えるか!?
「終わった?」
現在、エリナへのマジェスターによるマジェスターのための説教中である。まだ終わらんらしい。まあ、主を放っておいて敵前逃亡したわけであるから仕方ない。俺が主っぽくないのも原因か?いや、こいつらから家臣になりますって言ってきたんだぜ?世話もしてるしさ。昼食と夕食はほとんど俺が作ってるよ。朝食はマジェスターだ。エリナには料理はさせない事にしている。
しかし、SSランクと思われるグレーテストホワイトベアー。こんな所にいるなんて想像してなかたけど、なんでいるんだろうか?あれは西の大陸にしか生息しないって情報だったのに。そして本当にSSランクなのだろうか?
SSランクと言えば、ワータイガーや、テンペストウルフが有名である。他にも数種類確認されているけど、ほとんどの冒険者が討伐できないから、騎士団とか魔王とかが討伐に向かう事が多いらしい。魔大陸では魔王が魔物の討伐に向かうんだな。
思ってしまうのは、これがフランさんだったらグレーテストホワイトベアーを斬り伏せて進むだろうし、テトだったらアイアンゴーレムあたりを召喚するだろうな。もしかしたら、黒騎士でも十分戦えるかもしれない。あいつはレッドドラゴンまで召喚できるっていうし、リリスちゃんもいる。
そして、ユーナなら・・・。やっぱりアイアンゴーレム召喚かな?それとも自分で斬り捨てるかもしれない。どちらにせよ、負けるイメージが湧いてこない。
対する俺たちはどうだ?むしろ勝てるイメージが湧かない。攻略方法を考えるけど、ある程度の基礎戦闘力がどうしても必要だと思う。というよりも・・・。
「火力が足りないと思うんだ。」
例えばマジシャンオブアイスの「氷の槍」、神殺しの魔王の「次元斬」に「ヴェノムエクスプロージョン」、破壊の申し子の「フレイムレイン」、レイクサイド召喚騎士団の「ゴーレム空爆」などなど・・・。有名所はそんなもんだけど、どれも戦局を一手で覆す威力のある必殺技である。そう!必殺技!
「私も必殺技が欲しいです!」
うむ、皆必殺技を覚える事にしよう。というか、そんな事でもしない限りあのクマさんは倒せないと思う。
「マジェスターはどう思う?」
「火力については賛成です。ですが、エリナはその前に基礎が必要でしょう。冒険者パーティーで育った事もあり、我流が目立ち過ぎです。」
「えー。」
「分かった。マジェスターは引き続きエリナの教育だな。必殺技は俺が何とかしよう。・・・そうだ、町に行くついでにウォームの補助魔法を覚えてきてくれないか?あれがないと第3階層は無理だ。寒すぎる。」
「かしこまりました。」
「エリナも連れてって、覚えさせてやってくれ。」
「えっ?」
「えっ?」
露骨に嫌な顔すんな。勧誘したのはお前だろうが。
そしてまた1人暮らしの再開だ。これが意外にも自分の時間が持てて好きだったりする。フェンリルの持続召喚も慣れてきた。夜の見張りもばっちりだ。
「それじゃあ、必殺技を考えますか。」
今後の事も考えた必殺技にしないといけないな。そして俺に合ってるもの・・・。
真っ先に浮かんだのが「剣舞」だった。回転しながら同じ場所に剣撃を加える技。ある意味俺のオリジナルだ。補助魔法とドーピングがなければ使えないと言うのが難点であるが、決まればそれなりの威力を発揮する。ただし、いくらアダマンタイト製の剣とは言え腕力が足りない事もあれば剣の刃が上手く立たない事もあり、一発で魔物を切断できるほどの威力がないのが難点だ。
これが魔王テツヤ=ヒノモトの次元斬クラスになんでも切れるのであれば必殺技になる。そんなに切れる剣は見たことが・・・・あった!フランさんだ!あの「勇者」フラン=オーケストラの剣はミスリル製でフランさんの魔力が込められていた。数回しか見たことなかったけど、あれの切れ味は最強クラスと言っていいと思う。
「魔力を剣に込める・・・か。」
補助魔法である「パワーアップ」。単純に力を上昇させるものである。対して「スピードアップ」。速度を上げるものである。どちらも攻撃力を上げるためには重要な要素だ。しかし、それ以上に必要になってきたのが切れ味である。アダマンタイト製の剣は非常に切れ味がいい。だが、それでも切れないほどに硬いのが魔物の皮であり鱗だ。そんな硬度の高い物を斬ろうとすると、腕力だけではなんともできない事も多い。実際、マザースネークの鱗なんかは何度斬りつけた事か。
「オフェンスアップ!」
初めて使う魔法だ。原理は知っているが、これが通用するのだろうか?それよりも地道に剣術を上げて行った方がいいのかもしれない。だが、補助魔法とドーピングはすでに俺の技として立派に地位を築き上げている。これを使うのが俺だ。そして無理やり剣にオフェンスアップをかけていく。
魔力が剣に宿る。ほんの少しであるが、光っているように見える。
「成功した・・・のか?」
だが、すぐに掻き消えてしまった。もう一度オフェンスアップを唱える。
「消える前に!」
光っているうちに、近くの岩を斬りつけてみた。完全ではないが、ある程度刃が食いこんで剣は輝くのをやめた。これはいけるかもしれない!
それからは一心不乱にオフェンスアップを唱え続けた。気が付いたら見張りに召喚するはずだったフェンリルの魔力までなくなっていた。危ない。なんと言ってもここは「奈落」。気を抜いていい状況ではないのだ。MP回復ポーションを飲んで落ち着くことにしよう。・・・苦。時間はたっぷりある。保存食の調理や生活環境の改善に精を出すとしようか。
オフェンスアップで攻撃力の強化ができるのは分かったけど、破壊魔法の純粋な強化も必要だ。軽く第1階層を回ってロックリザードやジャイアントスパイダーを中心に破壊魔法のみで仕留める。マジェスターに比べると威力がずいぶん低い。これはかなり練習しないと駄目そうだ。破壊魔法に補助魔法に?召喚魔法の訓練も入れてしまうと魔力がいくらあっても足りない。だが、地道にコツコツとやっていくのが結局は近道なのだと信じている。
マジェスターとエリナが帰ってくるまでに4日かかった。その間にオフェンスアップとフレイムを中心に訓練したが、4日間でそこまで威力が上がるはずもない。
「補助魔法は覚えてきた?」
「ウォームとクールを覚えてきました。エリナが習得するのに少し手間取りまして。」
それで4日かかったんか。まあ、許容範囲内だ。
「じゃあ、俺にも教えてよ。」
こうして俺はウォームとクールを覚えた。だが、覚えただけだった。
「これ、補助魔法としてかなり難しいよ?」
なんとかウォームを覚えるのに1日かかってしまった。しかもその効果は若干温かいとかその程度。これでは第3階層には使えないというか、意味ない。強化が必要になってくる。
「破壊魔法や召喚魔法もいいけれど、補助魔法もしっかりあげないと駄目だなー。」
「がんばりましょー!」
こうして必殺技の特訓は一旦中止して、ウォームが第3階層で通用するようにする訓練を開始した。
何をするのかって?そりゃ、薄着で第2階層をうろつくだけだ。中継地点よりもう少し行けばかなり寒くなるからな。もう一つ拠点を作って、日中はそこで過ごす事とした。ずっとウォームは使いっぱなしだ。すぐに魔力が切れそうになる。そうすると中継地点まで帰る、を繰り返した。途中で一回、マザースネークが出た時はどうしようかと思ったけど、この前の個体ほど大きくなくて、しかもオフェンスアップした俺の剣の刃が通ったからなんとか倒せた。これは本当に必殺技になると思う。もう少し効果があればいいんだけど。
3人でずっとウォームをかけ続けていると、その上達具合にも差が出てくる。なんともっとも速く上達していったのがエリナだった。逆にマジェスターは少し苦労しているようだ。それでも着実にウォームの精度は上達している。来週には第3階層を歩く事ができるんじゃないか?俺もかなり暑くなっていて、上半身は布一枚だ。エリナも同じようなもので目のやり場に困る。
「暑い~!」
ウォームかけ過ぎで暑くなるとは思わなかった。だが、いい傾向だろう。次の段階に移ろうか。
「そろそろ、全開で掛け続けるんじゃなくて、快適な温度を保って持続時間を増やしてみようか。」
「やった!一旦解除しますね!・・・ふー、涼しい!」
そりゃ、もともとはかなり寒いからな。あまりやり過ぎると体が冷えるぞ?
「さて、防寒対策はなんとかなりそうだな。と、いう事は本格的にあのグレーテストホワイトベアーを倒す手段を考えないといけないという事だが・・・マジェスターはなんか必殺技閃いた?」
クマさんめっちゃ強いからね、たぶん。
「今考えているのはやはり破壊魔法でしょう!私の装備では剣撃ですぐに威力が向上するとは思えませんし!」
まあ、そうだよね。
「ですので、こういった魔法を練習しようかと!」
そういうとマジェスターは氷の破壊魔法を唱えた。いつもよりも威力が小さい。だが、それは無数に繰り出され、標的となった近くの岩はあっという間に氷漬けになった。
「あとは、こういうのもいいですね!」
次の魔法はかなりの大きさの氷魔法だった。単純な「氷の槍」で、威力を極限まで高めたものだ。マジシャンオブアイスの必殺技でもある。
「おお!いいではないか!」
「御褒めに預かり光栄でございます!」
マジェスターもちゃんと考えてたんだな。これがクマさんに通用する事を願おう。
1週間後、ついに第3階層に挑戦する事にした。
「皆、準備はいいか?」
「万全でございます!」
「はぁーい!」
2人とも元気なのは取り柄だと思う。
第3階層にたどり着くと、そこは本当に氷の世界だった。だだっ広い空間が氷で覆われている。どこからか裂け目から光が入ってきており、乱反射で意外にも明るい。しかしめっちゃ寒そうだ。俺たちはウォームを唱えて体の周囲だけちょうどいい気温に保つ。
「これだけ冷たいと、マジェっちの氷魔法が意味なさそうだね!」
「はっ!?」
普段はその呼び方をされると怒り狂うマジェスターが衝撃のあまり固まっている。
「まあ、やってみない事にはなんとも言えないけどな。」
クマさんをなんとかしない限り、ここを安全に通過する事は不可能だろう。いままで、「奈落」は第4階層が確認されているという話だ。ここを抜けたパーティーはクマさん倒したのだろうか?それとも、逃げて第4階層までたどり着いた?それだとあまり発生頻度は高くない魔物なのかもしれない。
「シウバ様ぁ!」
なんだエリナ?ちょっと考え事を・・・。
「あそこ、クマさんいますよぉ!」
へ?・・・あっ、目が合った。完全に気付かれたか。奇襲という選択肢はこれで消えた。
「さて、迎え撃ちますか!」
「はっ!」
「了解です!」
グレーテストホワイトベアー、本来であれば俺たちのランクでは太刀打ちできない相手だ。だが、俺たちはここで強くなった。こいつは試金石だ!こいつに勝てるならば、「奈落」を出てもやっていけるに違いない!まあ、SSランクなんだから当たり前か・・・。
「ブオォォォ!!」
クマっぽくない鳴き声だな!熊の鳴き声とかあまり聞いたことないけどさ!
「スピードアップ!パワーアップ!」
補助魔法の重ね掛けだ!そしてドーピング薬をあおる。・・・しかしまずい!
グレーテストホワイトベアーの突進は思いのほか速かった。
「シウバ様!」
紙一重で跳躍で避ける。足にかすったが、ダメージはない。着地が乱れた。
「グルァァァァ!!」
反転したグレーテストホワイトベアーが殴りかかってくる。それをなんとか避ける。
「氷よ!」
マジェスターが放った連続氷魔法がグレーテストホワイトベアーを襲った。後ろ脚を中心に凍りつかせる。なんだ、十分効いているじゃないか!なかなか足を抜けださせる事ができない熊はその場で一旦立ち上がり、二足歩行となった。氷にひびが入る。
「パラライズ!」
エリナの幻惑魔法だ。あいつ、できないって言ってたけど練習したのかな?熊が痺れる。しかしそれは数秒の事だった。
「十分だ!」
後ろに回った俺がオフェンスアップを剣にかけ、魔力を注入していく。そして・・・。
「剣舞!」
背後から斬りつけた。しっかりとした手ごたえがある。マザースネークよりだいぶ硬いが、それでも刃が食いこんでいく。しかしでかい熊だ。5メートル以上あるだろうな。もっとか?お、いつの間にか思考加速スキルが発動したみたいだ。冷静に自分の動きを見つめることができる。と、言ってもすでに剣舞で斬りつけた後だしな・・・。
斬られながらもグレーテストホワイトベアーはこちらを振り向いて殴ろうとしてくる。思考加速があるために、余裕で避けられる。
「俺はこの先に進むぞ!」
最後に2本の剣をグレーテストホワイトベアーの腹部に突き立てた。何かを斬った感触とともに大量の血が噴き出し、それを浴びる形になった。同時に熊の巨体が倒れ込んできたため、剣を抜いて距離を取る。
「さすがです!」
「やったぁ!」
倒れたグレーテストホワイトベアーを見て、2人が歓声を上げた。
倒した!本当にSSランクかは分からないけど、Sランクであることは間違いない。単独での討伐はどう考えても無理だったが、3人ならやれた!
「お見事です、シウバ様。」
「ああ、2人のおかげだよ。しかし、オフェンスアップにものすごい魔力を使った。」
血まみれだし、魔力が枯渇しそうだ。一旦ウォームを解いて・・・。
これが悪手だった。
「ぎゃー!」
ウォームを解いた瞬間に全身についていた返り血が一瞬で固まる。パキパキになった体は何か所か凍傷を負ってしまった。あわててウォームをかけなおすが、これ以上の探索は無理と判断し、第2階層中継地点まで戻らざるをえなくなってしまった。次の日まで回復魔法とウォームをかけてもらいながらの療養となってしまった。
「シウバ様って、たまに抜けてる所ありますよねぇ。」
「意外とな・・・。だが!それは我ら家臣一同がしっかりすればいいだけの話だ!」
「そうですね!がんばりましょー!おー!」
・・・やばい、不安しかない。
そ、そろそろ、か、感想を・・・う、受けつ・・・受けつ・・・受け付けようかと!
返信までは勘弁してください。頑張れ!オレオ!
「小説家になろう」は「小説」ではなくて「感想欄」コミコミで作者と読者が交われる文章型劇場のようなもんだと思っっちょります。感想がないとつまらないかと。
誤字脱字の修正はするかもしれないし、スルーするかもしれないですが。
全部読みますんで。たぶん。
要望とか出しても受け付けないぜ!たぶん!




