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1-2 料理人シウバ

 俺たちは今、エルライト領南部にある丘陵地帯に来ている。レイクサイド召喚騎士団第4部隊隊長「深紅の後継者」テトと知り合うことのできた俺は、その依頼を受けて「ダイアモンドリザード」の討伐に同行していた。


「リリス!やっちゃって!」

 目の前にはホワイトボアの群れ。そして、それを氷魔法で蹂躙する超絶可愛い女の子リリスちゃん。って、えええぇぇぇぇぇ!!!???強すぎ!!しかも角生えてる!

「リリスちゃんって、召喚獣だったんですね・・・。」

マジかよ!あんな可愛い子が悪魔系召喚獣だったなんて!俺も召喚極めようかな!

「使い勝手が悪いけどね。魔力なくなるまで還ってくれないし。宿に泊まる時も2人分の宿泊料がいるし。御飯食べてくれないから、周りから見ると変な2人組だし。頭角生えてるし。えっちだし。」

最後なんて言ったぁぁ!!??爆ぜろ!

「さあ、終わったみたいだよ。」

「俺、何もしてませんね。」

「まあ、僕も同じようなものさ。」

召喚しているあなたはまた別の話でしょうが。そして後ろで荷物持ちのアイアンドロイド。こいつも結構な大きさの荷物持ってるけど便利すぎる。ただ、魔力の消費量が洒落にならんのじゃないか?

「ご主人様、終わりました。ご褒美に今日は2人一緒のベッドで・・・。」

「シウバ!1匹でいいから解体できる?もし料理ができたらお願いしたいんだけど。」

リリスちゃん、かわいそうに。俺でよかったらいつでもイインダヨ?

「・・・多分、村にいた頃に1度レッドボアの解体を手伝った事がありますからできると思います。」

「肉の部分だけでいいよ。時間かかるだろうし。召喚騎士団にユーナって子がいてね。あの子の料理はほんと美味しかったんだけど、僕は全然上手にできなくてさ。」

「ユーナですって!ご主人様には近づけませんわ!」

「今日はシウバが何か作ってよ。」

「はい、わかりました。簡単な物でよければ。」

こう見えても料理の腕にはちょっと自信がある。それに、最近は薬草採取もやっていたから香草とかもちょっと詳しくなってるんだ。野営の前にちょっと集めてこよう。


「旨い!すごいね、シウバ!」

へへん!そうだろうよ、そうだろうよ。今日はテトというかアイアンドロイドが調味料を持ち歩いてた事もあったから、ホワイトボアの肉を煮込んでみた。まさか、ハチミツなんて持ってるとは思わなかったぜ。しかもプレジデントキラービーの高級品じゃねえか。甘く煮込んだ煮豚を香草と一緒にパンに挟めば旨くないわけが無い。惜しいのはエルライトの町で買った、硬いパンだという事か。もうちょいおいしいパンだったら最高だったけどな。

「喜んでいただいてなによりです。」

「これはいい意味で予想外だよ!ユーナに匹敵するかもしんない。」

なんなら料理人として雇っていただいてもいいんですよ!?仕事くれ!金をくれ!


 その日は野営になった。テトはなぜかフェンリルを召喚してそのモフモフの黒毛をベッド替わりに寝ている。忍び込もうとしたリリスちゃんがしっぽで追い払われているぞ。そっちがダメならこっちに来てもイインダヨ?しかし、いい雇い主に巡り合ったものだ。もうちょっと頑張ってみるかな。


「残った肉は軽く火を入れてから燻製にしてみました。これで長持ちするでしょう。」

「おおお!最高だよ、シウバ!」

作ったばかりのベーコンを炒めてパンに乗せて出す。途中でホワイトボアの肉が手に入ったから食料には余裕があるな。昨日、野営の前に集めた香草もかなりの量になったし・・・。

「シウバと一緒だと、食事が楽しみでいいね。」

ありがたき幸せ!俺もホワイトボアの肉なんてひっさしぶりに食ったよ。やっぱ旨えよな。

「そう言っていただけると何よりです。」


 目的地についた。本当ならワイバーンを使ってすぐに来れたらしいけど、今はリリスちゃんを召喚してるから魔力が足りなくなるんだそうだ。リリスちゃんってば罪な女だな。

「今日は満月だから、このあたりにダイアモンドリザードが現れるかもしれないんだって。すぐに逃げるから、罠を仕掛けておこう。」

そういうとテトは持ってきた荷物の中から罠を取り出す。組み立てるのに時間がかかってるが・・・。

「あの、俺が組み立てましょうか?」

「あ、そうしてくれる?僕、こういうのはほんと苦手で。」

「深紅の後継者」にも苦手な物があったか。まあ、人間だものな。

「はい、これでいいと思いますが・・・。餌とかを用意するんですか?」

「うん。ヨーレンによると、このあたりでとれる魔物の肉がいいらしいよ。夕方までは時間あるから、なんか狩ってこよう。取れなかったらホワイトボアの肉でもいいし。」

「分かりました。でしたら俺も・・・。」

「いや!シウバは夕食の準備だ!任せたよ!」

食い意地がはっていらっしゃる。まあ、この地帯で俺の狩れる魔物なんてたかがしれているしな。もしかしたら俺が狩られる側になる可能性の方が高いだろうよ。


 テトは護衛に黒騎士を召喚してくれた。なんてごっついんだ?野営と食事の準備をしていると、遠くでリリスちゃんの魔法が炸裂する音が聞こえてくる。まさか、こんな魔物多発地方にいるのに仲間の心配を全くしなくていいとは思いもしなかった。絶対、リリスちゃんに勝てるやつなんかいねえよ。

 周囲をちょっと回ってみる。あ、これはレドン草だな。魔力の回復に適した薬草でMP回復ポーションの原料になる高級品だ。しめしめ、儲けたぜ。そのうち調合の仕方を誰かから習うとしようか。薬草採取で薬が調合できたらそれだけで食っていけるしな。

「あ、レドン草だ。」

テトたちが帰ってきた。なんとグレートデビルブルを狩ってきている。アイアンドロイド2体がかりで運搬とは・・・。

「僕、レドン草の調合をよくやらされてたんだよね。」

まじか!まじかよ!テト様!それ、教えてください!

「本当ですか?よければ調合の仕方を教えていただけるとありがたいんですが。」

「え?いいよ。今夜教えてあげる。」

よっしゃああああ!!これで俺は薬草採取の冒険者として生きていくことができるぞ!魔物怖えもん!

「ありがとうございます!」

「さあ、グレードデビルブルを解体しよう。今日はどんな食事を作ってくれるのかな?」

そっち?罠にかける餌じゃなくて?まあ、楽しみにしてくれるのは非常にうれしい。


 その夜、罠にひっかかってもがいてたダイアモンドリザードはリリスちゃんに仕留められた。その背中に光るダイアモンド状のうろこはとても高価で、貴族が求婚の儀式に使うものとして最上級品であるという事は聞いたことがある。実物を見たのはは初めてだ。

「これで、フィリップひゃまも、もぐもぐ、ようやくプロポーズ、もぐもぐ、できりゅよ。」

 テト、行儀が悪い。グレートデビルブルはたれ塗って直火で焼いてみた。コツは串刺しにして強火で遠くからこんがりと焼くことだ。重ね塗りしたタレが絶品のはずだ。我ながらこんな旨い串食ったことねえよ。素材が最高すぎる。

「もぐもぐ、ごくん。筆頭召喚士のフィリップ様がね、今度求婚するんだけど、ハルキ様が絶対に給料の3か月分の価値があるダイアモンドの指輪を贈れって言ったらしくてさ。ハルキ様もそうしたらしいんだけど。・・・これ、給料の3か月分じゃ、絶対足りないよね。」

ハルキ=レイクサイド領主の3か月分はありそうだな。

「まあ、その求婚の相手は僕の部下だし。知ってる?「風竜の妖精」って。」

「はい、レイクサイド召喚騎士団第4部隊リオン様ですね。」

「そうなんだよ、ようやくだ。フィリップ様、奥手すぎてさぁ・・・。リオンがずっと待ってるっていうのにさ。ぐちぐち。」


 そしてなぜかここに酒を持ち込んだテトは約束のレドン草の調合を忘れて次の日までフェンリルベッドでぐっすり寝たのであった。いや、ほんと!教えてよ!


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