3-5 魔法騎士マジェスター=ノートリオ
調子に乗って2話目の同時投下だ!はっはっは!
え?1日1回ってもはや意味ないんじゃないかって?
馬鹿言っちゃいけねえよ!?
これ読んでくれてる読者様の中には、
朝起きて
→「冒険者はなんとか」がUPされてるのを確認し
→朝飯食いながら読んで、クスっと笑い
→さあ、今日も頑張るぞ
っていう、ちょっと生活習慣見直した方がいい方もいらっしゃるんだからな!たぶん!
・・・さすがにいない?まあ、そうだろうね。
もう少しで第2階層という所でレッドボアの群れに出会った。
「豚肉・・・。」
いい感じに野生児化しているマジェスター。見た目がイケメンで綺麗な恰好しているだけに残念感が半端ない。問答無用で斬りかかって行く。俺も、豚肉食べたいな。地上に果物なってたの確認したから、あれでソースを作ろう。分厚く切って焼けば旨いに違いな・・・・どうわぁぁぁ!!
「シウバ様!」
「あぶねえ!」
もうちょっとでレッドボアの突進をくらう所だった。牙つきで。やばいやばい、気を引き締めろ。
「スピードアップ、パワーアップ。」
すでに常套手段となっている補助魔法だ。さらに突進してくるレッドボアを避けて剣で斬りつける。
今度は2頭同時だ。・・・あ、この感じ・・・。
思考が早くなってるのか、時間が遅くなってるのか。ゆっくりと動く世界の中で、俺の動きもゆっくりだ。だが、たくさん考える時間があると思うと余裕が生まれるのは事実。次はこうやって避けよう。そして反撃はすれ違いざまにこうだ。余分な動きが少なくなる分、効率的な戦い方ができる。反射で戦わなくてもいいから楽と言えば楽だな。しかし、反射が鈍るかもしれない。どちらにせよ、今は好きな時にこのスキルを使う事は出来なさそうだ。
これだけ考えていてもまだレッドボアの突進を1回よけてすれ違いざまに一太刀入れただけの時間しか経ってない。振り向きざまに後ろのレッドボアを一刺し。あ、前からも来てるな。跳躍で避けられそうだ。もちろん、避ける際にも反撃を入れておこう。ゆっくりと流れる時の中で、ゆっくりとした動作で剣を振るう。最初はかなりぎこちなかったが、数回やっているうちに慣れてきた。慣れれば効率の良い動きというのも研究されるものだ。
戦闘は数分で終わった。体感していた時間はもっともっとあるけどもな。
「最近、シウバ様の動きが神がかってきましたな!」
神?意味分からん。お前の頭は大丈夫か?
「そんな事より、今日はボアステーキだ。外に果物が生ってただろ?あれをソースにするから取ってきて。」
「分かりました!」
こういう時だけ、返事がいい。まあ、いいか。
ボアステーキ食べるために今日は第2階層への探索は中止とした。だって、そっちが重要だろ?
「シウバ様!取ってきましたよ!」
柑橘系の実を取ってくるマジェスター。そのためにフェンリルを召喚するとは、筋金入りだな、おい。
「ありがとう。」
まあ、俺も食べたかったんだ。レッドボアの残りの肉はベーコンにしてしまおう。できたら外で燻製にしたいから食べた後はちょっとした重労働だな。俺もテトのアイアンドロイドみたいな召喚獣が欲しいぜ。魔力足りないけど。
ボアステーキは旨かった。マジェスターが泣きながら3人分食うとは思わんかったけど、まだまだ肉の余りはある。腐らないように外で燻製にしてしまおう。チップはその辺にある木で。どれがいい臭いかなんて分からん。こんなものは試行錯誤だ。
洞窟の外に出ると即席のかまどを作って、その上にこの前作成した燻製用の籠を乗せる。さすがに密閉はできなかったけど、煙が外に出づらい構造にさえなっていれば十分だろう。籠の中にはレッドボアの肉を吊るした。塩と香草を練り込んである。これで小一時間煙でいぶしたら、その後茹でて・・茹でたらハムになっちまうな。
「こんな所に人が!?しかも料理中だって!?」
あれ?誰だ?冒険者っぽい人たちが来たぞ?えっと、6人いる。
「こんにちわ。あなたも冒険者ですか?」
リーダーっぽい先頭の男が話しかけてきた。
「ええ、まあ、そうです。」
「私たちも冒険者です。「奈落」に生息するマザースネークの素材を探しに来てましてね。」
マザースネークか。たしか第2階層の奥にいるという噂だったっけ?
「そうですか、私たちは第1階層でテントを張ってます。まだ第2階層までは探索できてないんですけどね。」
「しかし、こんな所で料理をしているなんて豪胆ですね。」
仕方ねえじゃんか、料理して食っていかないと死ぬっつーの。
「ははは、ちょうど第1階層の奥でレッドボアが狩れましてね。たくさんの肉が入ったのですが、腐らせないように燻製にしている所です。」
「レッドボアですか!?」
なんだ?冒険者パーティーの目の色が変わったぞ?
「よ、よければ少し肉を分けていただく事は出来ないでしょうか?エルライトの町をでてから携帯食ばかりで・・・。」
あー、なるほどね。たしかに徒歩だとここまでかなりの日数がかかる。俺たちはフェンリルで1日とか2日で来れるけど、普通なら1週間だよね。まだ、燻製にしていない肉がたくさんある。
「よかったら、私が調理しましょう。おい、マジェスター、さっきの実をもう少し取ってきて。」
「はっ、分かりました!」
マジェスターが駆けていく。さてはさっきフェンリルを召喚したからもう魔力が少ないんだな?
「よろしいんですか!?ありがたい!」
「まあ、これも出会いってやつですよ。それにマザースネークを討伐するんだ。力をつけておかないと。」
「ありがとうございます。」
しかし、6人でここまで来てマザースネークを討伐か。パーティーをまとめるだけでも大変だろうな。
この冒険者パーティーは前衛の男が3人、魔法使いの男が1人、弓使いの女性に、魔法使いの女の子のパーティーだった。魔法使いの女の子だけちょっと若いけど、それなりの実力があるんだろうな。リーダーの名前はクラムというようだ。
「シウバさんのランクはいくつなんですか?」
「ええ、Bランクなんですよ。」
「お、私たちも全員Bランクです。同じですね。」
Bランクでマザースネーク・・・ちょっときつくないか?俺はマジェスターがいるからなんとか第2階層までいけそうだけど、Bランクだけだったら無理かもしれないぞ?
「Bですか・・・第1階層にシルバーファングが群れで出る事があります。ちょっときついかもしれませんよ?」
「困難は承知の上です。実は少し訳ありで、どうしてもこの依頼を達成しないといけないんです。俺たちにとっては、命をかけてもいい理由なんですよ。」
「そうですか・・・。」
立ち入った事は聞かないのが冒険者のマナーでもある。それ以上は聞けなかった。
マジェスターが柑橘類を取ってくると、俺は人数分のボアステーキを焼いた。さっき焼いたばかりだったから、俺たちのよりも上手く焼けた。みんな、うまそうに食べてたな。
クラムのパーティーは俺たちのテントの近くで野営をして、翌日第2階層を目指して進んでいった。
「もう少し、時間をかけたほうがいいと思うんだけど。」
「心配してくれるのは有難いけど、僕らには時間がないんだ。」
最後まで理由は教えてくれなかったけど、あいつらは絶対にやり遂げるつもりだったに違いない。
「マジェスター、やっぱり追うぞ。」
「了解です!」
放っておけるか!マザースネークなんてBランクメンバーで太刀打ちできるわけないだろうが!
「フェンリル騎乗だ。急げ!」
フェンリルに乗って第1階層を突っ切る。クラムのパーティーが通った後だからか魔物はほとんどいない。駆け抜けながら、なぜ付いていかなかったんだと自分を責める。
「シウバ様!あれを!」
フェンリルだとあっという間に第2階層にたどり着いた。そこは地底湖と呼んでいいほどの広大な空間にためられた湖があった。ところどころ島になっており、まるで橋のように道が続いている。
「クラム!!」
かなり遠くにクラムのパーティーが見えた。3人しかいない!そしてその前には大きなマザースネークが!
「マジェスター!急げ!」
「はっ!」
2匹のフェンリルが駆ける。だが、その間ににもクラムのパーティーの弓使いの女性が巻きつかれてしまっている。くそっ!あれは、さすがに助からないか・・・。
「ミザリィィー!!」
魔法使いの女の子が叫ぶ。くそっ!間に合え!
「うおおぉぉ!!」
クラムが渾身の一撃をマザースネークにくらわせた。・・・だが、硬い鱗に刃が通らない。
「クラム!」
そしてクラムもマザースネークに巻きつかれる。先ほど巻きつかれた女性は床に倒れていた。全く動かなければ、首も変な方向に曲がっている。その向こうには1人男性が倒れている。他はいない、湖にでも落ちたのだろうか?
「ぐあぁぁ!!」
間に合え!間に合え!
「氷よ!!」
マジェスターが氷の破壊魔法をマザースネークに叩きつけた。少し力が緩んでクラムが抜け出す。
「スピードアップ!パワーアップ!」
更にドーピング薬を飲む。フェンリルに騎乗したままにマザースネークに斬りつけた。
「剣舞!」
当たると同時にフェンリルから跳躍し、回転を加えながら首の付近に無数の剣撃を加える。マザースネークの鱗は非常に硬かったが、アダマンタイト製の剣をなめんなよ!って感じだ。数回同じ所に攻撃すれば鱗もはがれる。肉が露出してしまえば、こっちのものだ。
「そうか・・・「剣舞」シウバ=リヒテンブルグ・・・。」
今にも倒れそうなクラムがつぶやく。
「シウバ様!」
俺にかみつこうとしていたマザースネークの頭に斬りつけて、マジェスターが俺をかばった。マジェスターに巻きつこうとするマザースネーク。させるかよ!
「フレイム!」
炎の破壊魔法をマザースネークの目の前で爆発させる。光と音でマザースネークの動きがひるんだ。ここだ!右手の剣をマザースネークの口に差し込んだ。貫通した所で思いっきり左に振りぬく。
「うおぉぉぉ!!」
マザースネークは頭の半分が取れそうな状態となった。どうだ!しかし・・・。
「クラム!!」
倒れるかと思ったマザースネークは俺ではなく、背後にいたクラムに巻きつくとそのまま湖の中に逃走しようとした。
「氷よっ!」
マジェスターの破壊魔法がそれを阻止する。
「よくやった!」
「執事ですからっ!」
最初に剣撃を加えて鱗がはがれていた部分を斬り、マザースネークの頭が飛んだ。そして、マザースネークは動かなくなった。
「クラム!大丈夫か!」
クラムは、すでに息絶えていた。他のメンバーもすでにこと切れているか、姿すら見当たらなかった。湖に落とされたそうだ。残ったのは魔法使いの女の子だけだった。
「助けていただいてありがとうございました。」
その子はエリナと言った。
「クラムたちを助けられなくてごめん。」
「いえ、シウバさんたちが来なかったら私も死んでいましたから。」
戦った場所の近くに、残された3人の遺体を埋めて簡単な墓を作った。遺体はなかったけど、見つからなかった人の分も作ってあげることにした。
エリナは18歳とのことだった。もう少し若いと思ってたんだけど。冒険者を始めた最初からクラムのパーティーに世話になっていたらしい。そんな仲間が全員死んでしまった。悲しみは想像を絶する。
「仲間の死は、乗り越えることでしか報われない。今じゃなくてもいい、いつか前を向け。」
マジェスターが言う。そうか、こいつも政争で主人と仲間が死んでいるんだったな。それなのに普段はあんな風に振る舞えるのか。すげえな。
「ひっく、えぐっ、えぐっ・・・。」
「好きなだけ泣け。だがな、必ず泣き止め。それが仲間を想うという事だ。」
「ひっぐ、あっぐ・・・・うわぁぁぁぁん!」
18歳か、まだ完全な大人とは言えないな。俺も人の事を言えた立場じゃないけど。
その日、「奈落」の第1階層にあるテントの周囲では女の子の泣き声が続いていた。ベッドは2つしかなかったので、彼女の事はマジェスターに任せて、俺はその夜に近寄る魔物をすべて切り伏せて過ごした。
シウバがすでにTUEEEEEしてるって?前作のテトは黒騎士2体召喚しただけでマザースネークを余裕で倒してるんですぅ!対してシウバはギリギリなんですぅ!一撃くらうと死にそうになるんですぅ!
え?死にそうになるまでに思考加速のスキルが出るんだろうって?・・・・・ふぁっ!?