3-2 自称執事マジェスター=ノートリオ
「本日2話目!投下準備~!」
「次弾発射準備完了です!」
「うてぇぇぇぇ!!!」
「今回のは5千文字もあります!」
「うむ!1日1回投稿だとほとばしるパッションだかなんだかがなんだとかで、作者はちょっと多めに書いたらしい!」
「いつもはあれだけ3000文字にこだわってるのに!」
「そしてさらに今回は2話連続投下だ!1日1回2話だからセーフ!!とか言ってたな!」
「ちょっと、調子乗りすぎじゃないでしょうか?またしてもメンタルやられる事件が待ってますよ!」
「う~む、波があるって言ってたからなぁ。波が低いとなんでも心に突き刺さるとかなんとか。」
「それって、まじやばいッスね。どうしようもないじゃないですか?」
「はっはっは!諦めろ!俺はもうあきらめた!次も打ってやるか!どうせストックあるんだろ?」
「ちょ!ありますけど!明日はゆっくりしたいって言ってましたよ!」
「知るか!はっはっは!」
「おはようございます、シウバ様。朝食の準備と本日の依頼の受理ができております。」
マジェスター=ノートリオ。エジンバラの名家リヒテンブルグ家に使える執事だそうであるが、最近こいつは俺にしつこく付きまとっている。
「おはようございます。マジェスターさん。朝食も依頼の受理も自分でやりますんでいいですよ。あと、ついて来なくてもいいです。」
「何をおっしゃる!!私はノートリオ家の者としてリヒテンブルグ家当主であらせられるシウバさまの生活の管理をする義務があります!」
そんな義務ねえよ。それにまたしても勝手に依頼を受理しやがって。この前なんてクレイジーシープの討伐なんていう大変な依頼を俺名義で取ってくるものだから死ぬかと思ったぜ。回避が中心の俺とすればまだ相性のいい相手だったから良かったものの、もっと俊敏な魔物だったら命に関わるぞ?おい?
「本日もクレイジーシープの討伐依頼がありましたので優先的に回してもらいました!」
だからぁ!!
「それで、文句言いつつもなんとか討伐してきたんだな?」
マジェスター自体はかなり戦闘力が高いので討伐依頼の際に役に立つのは立つんだが、こんなにしんどい依頼ばかりを勝手に受理しやがって。受付おっさんも俺がいないのに依頼してんじゃねえよ!
「いやぁ、いつもお世話になります、マスタング殿。」
「マジェスター、本人の意思確認は終わってるっていうから受理したんだけどな。」
「はっはっは!何の事でしょうか!はっはっは!」
こいつ、確信犯か・・・。というより受付おっさんってマスタングっていう名前だったんだな。初めて知った。
「さあ、本日もクレイジーシープを解体していただいて肉の部分をもらって帰りましょう。シウバ様のお作りになられる香草焼きは絶品すぎて、お仕えする身である事を忘れてしまうほどですからな。そう考えると調理場を貸してもらえるなんてあの宿に泊まっていた理由も分かりますな!安宿でなければとてもできない事でしょう!さすがです!」
お前!この依頼を受けたのはそれが理由か!そしてこのレシピは俺のじゃねえ、ユーナのだ!
クレイジーシープの討伐料と角の素材量はそこそこの物だった。これだけあれば、明日仕事をしなくてもいいくらいだ。それに前回の事があって、宿の従業員たちも俺のつくる料理を楽しみにしてたりする。肉を多めにもらってみんなに振る舞ってやろう。マジェスターは断食だ。
結局、マジェスターには色々と屁理屈をこねられて最終的に羊の香草焼きを食われてしまった。まあ、余るほど作ってたはずだから良かったんだけど、最後には全員残さず食いきってたから、またこんど討伐した時には作ってやろうと思う。そして宿の従業員や他の宿泊客とともに酒盛りをしてしまったので今日は朝から二日酔いだ。最近、こんなに飲むことはなかったな。
今日は薬草の補充と師匠への納品くらいしかやる事はない。採取場所も近場を予定している。フェンリルにしがみついて移動中に二日酔いをなんとかしようとワイズ草を少しかじった。
「シウバ様ぁ、それはなんですかぁ?」
となりのフェンリルで俺と同じように頭痛と格闘中なのはもちろんマジェスターである。こいつ、普段はかっちりしてるのに、二日酔いの時はだらけ過ぎだろう。
「ワイズ草です。二日酔いに効くらしいですが、・・・どうぞ。」
「これは有難き幸せぇ・・・。」
フェンリルの上で水魔法を使い水筒の中身を補充する。俺の水筒にはキュアリーフと香草が刻んで入れてあるから飲みやすい。
「むむむっ!シウバ様の水筒は!?」
やべえ、みつかった。結局、到着後にマジェスターの水筒にもキュアリーフと香草を刻んで入れてやる。
「これはっ!すばらしい!こんなにも飲みやすくなるとはマジェスター感激でございます!」
泣くなよ。それより、お前もノーム召喚して採取を手伝え。貴族院出てるんならノームの召喚くらいできるだろうが。
マジェスターの召喚したノームは役立たずであった。なんでだ?
「くっ!私は召喚魔法はほとんど使ってこなかったですからな!」
ステータスでも召喚魔法が1しかない。資質すらないという事か?だが、それだったら俺も同じはずだ。やはり、日々の努力が召喚獣に込められる魔力を変えるのだろう。同じ消費MPでも効率が違うようだ。
だが、マジェスターはほとんどの領域で優秀だ。なんでもそつなくこなす。うるさい事を省けば優秀な部下が増えたと喜んでいいのではないだろうか?1人より2人の方が依頼もこなしやすい。リヒテンブルグ家の再興は・・・諦めてもらおう。
しかし、やっぱりマジェスターはマジェスターだった。
「あ?モウイッペンイッテミロ?」
冒険者ギルドに帰ってきた所であるが・・・あれ?マジェスター?お前普段とずいぶん変わった声出してない?
「ふむ、あなたがマジェスター=ノートリオですな。聞こえないようであればもう一度言って差し上げましょうか。執事としては3流以下だと。」
相手は白髪の男だ。顔の印象としては老人の域に入るのであろうが、その身のこなしと超高品質な装備品が只者ではない事を物語っている。
「このジジイが!コロスゾ!」
「ふぉっふぉっふぉ、あなた如きが相手ではむしろ殺されるように努力しないといけないようですな。」
ちょ、ちょ、ちょっと!なんで喧嘩してるの!
「シウバ様!こいつはレイクサイド領の人間です。あのミスリルの剣はレイクサイド領お抱えのドワーフによるもの!他の領地では生産できないものなのです!近づいてはなりません!」
マジェスターはレイクサイド領キライなのかな?ユーナもテトもレイクサイド召喚騎士団なんだけど・・・。
「シウバ=リヒテンブルグ様ですな。」
「!?こいつ!シウバ様の事を知っているのか!」
・・・さっき、君がめっちゃ大きな声でばらしてたよ?
「さては!シウバ様を亡き者にしようとレイクサイド領が放った刺客だな!おのれ!そうはさせん!」
「少し、事情が違うのですが、まあレイクサイド領の人間であることは否定しません。剣でばれてしまっておりますしね。」
レイクサイド領の人間か・・・ユーナの事を知ってるかな?
「それで、俺に何の用でしょうか?」
「シウバ様!口をきいてはなりません!」
「ふぉっふぉっふぉ、3流以下の執事は敵と味方の区別もつかないようですな。」
「何ぃ!?」
敵?味方?なんの事だ?それよりも俺はユーナの事が聞きたい。
「事情はかなり複雑です。あなたは私の話を聞きますかな?」
白髪の老人の目力が強い。まるで、はるか高見から俺を見下しているようだ。だが、そんな事はどうでもいい。
「話を聞きましょう。」
女々しいと思われるかもしれないが、俺はユーナの事が聞きたい。他は興味ねえよ!
「場所を・・・変えましょう。ここはあなたの自称執事が騒ぎを大きくしてしまいましたからね。」
3人は宿に帰ってきた。他に場所が思いつかないから仕方がない。
「現在、エジンバラ領は非常に不安定な時期にあります。タイウィーン=エジンバラの病状が悪く、次期当主は評判が良くありません。そこでこの次期当主を暗殺し、他の人間を当主に挿げ替えようと考える一派があります。」
なんと!まさか、それがノートリオ家とかか?
「それを阻止しようとしたのがリヒテンブルグ家の人間でした。」
なんだ、違うのか。
「しかし、その争いの中で当主は毒殺され、家は断絶の危機に瀕しました。事をなしたのはエジンバラ家の者で間違いなさそうですな。」
となりでマジェスターが悔しそうに唸っている。
「この根本にあるのが、以前我がレイクサイド領とエジンバラ領が裏で争った時の事になります。時の宰相クロス=ヴァレンタインが発狂し、我がレイクサイド領に攻め入ろうとした際の事です。当時はまだ次期当主であったハルキ=レイクサイド様の命で、我らの諜報部隊はエジンバラの諜報部隊と大きく争いました。結果はレイクサイド領の圧勝。タイウィーン=エジンバラはレイクサイド領との力の差を正確に把握し、これ以上の戦いを望まなかったため、ハルキ様も矛を収めました。」
そんな事があったのか・・・。
「そして、その後もエジンバラ領は表面上はレイクサイド領と争う事はせずにいました。しかし、タイウィーン様の病状が悪い今、その際にレイクサイド領に対して報復を行おうとしている連中がいます。それが今の次期当主であり、リヒテンブルグ家でした。」
「つまり、次期当主とリヒテンブルグ家はレイクサイド領からすると敵だと?」
「簡単な話、そういう事になりましょうな。それで、レイクサイド領と事を構えるのを良しとしないエジンバラ家の一部の勢力がリヒテンブルグ家の当主を暗殺したのでございます。」
複雑すぎる。よく分からんくなってきた。
「それで、・・・あなたは何故ここに?」
「私に命令を下せるのはハルキ=レイクサイド領主のみでございます。ここにきたのはハルキ様のご恩情。実はわが諜報部隊の一部にはあなたの暗殺を画策する者もおりましてな。」
「!?・・・私はリヒテンブルグ家の再興など考えていませんよ。」
「それはどうやって証明するのでしょうか?」
「・・・なるほど、確かにむずかしい。」
おぉい!それまずいんじゃねえの!?
「しかし、ハルキ様はあなたが完全な部外者であった場合に排除をする事をお望みにはなられませんでした。そこで、私にシウバ=リヒテンブルグという人物を見極めてくるようにとおっしゃったのです。」
助かったよ、ハルキ=レイクサイド!さすがすぎる!人間ができているぜ!
「そこにいる自称執事は自分の主の危機にも気づかず、リヒテンブルグ家の再興を大声で冒険者ギルドで吹聴していたそうですが、まあ、あなたの性格に関してはある人からも聞いておりますしな。」
ユーナか!?ユーナの事を聞かせてくれ!
「ユーナは、元気ですか?」
「それは大丈夫です。健勝ですよ。」
「それは良かった。」
「あなたの事をとても気にかけていた。別れの際には我が諜報部隊が強制回収しましたのでな。まさかあなたが家中のリヒテンブルグの人間だとはだれも思っていなかったのですよ。」
「!?」
「別れ際に伝言すらできなかった事を悔いていましたよ。あ、あなたに伝わった伝言は諜報部隊がでっちあげたものですね。多分。」
「・・・それは、良かった。」
うおっしゃあああ!嫌われてなかった!・・・あぁ、ようやく胸のつかえが取れたような気がする。
真相は少し違います。坊ちゃまは確かに無関係なシウバ様の身を案じなかったわけではございませんが、興味がなかったといった方が近いかもしれません。数日前の事です。坊ちゃまはいつものように仕事をさぼって町に繰り出しておられました。しかし、運の悪い事に、逃亡先の酒場にいたのが酔っぱらったユーナだったのです。その場でとっ捕まる坊ちゃま。坊ちゃまを捕まえるなど、ユーナも腕を上げたものです。
そして、ユーナの強制回収の真相を吐くまで許してもらえなかった坊ちゃま。真相がばれてさらに説教される坊ちゃま。坊ちゃまはあまり関係ないのですがね、悪いのはウォルターでしょう。
さらに、ユーナは坊ちゃまに対してシウバ様の身の安全を守るようにと強く要求しました。あれは脅迫だと、後から坊ちゃまが語っておられましたっけ?しかし、約束させられてしまったものの、坊ちゃまは奥方様にも頭が上がりません。
そこで、全てを解決する策として、私を派遣しました。私がシウバ様の護衛をしていれば、第2部隊の連中程度であればなんてことはありません。坊ちゃまは奥方様とウォルターの行動を知らないフリをして、全てをなかった事にするつもりなのです。
「ソレデ?何デ、オマエミタイナ爺ガ?何ガデキルンダ?」
おい、マジェスター、やめておけ。
「ふぉっふぉっふぉ、おい小僧。喧嘩は相手を見て売れよ?」
やっぱり!こいつめっちゃ怖えよ!っていうか、マジェスターも気付け?
「アァ?」
とか言ってんじゃねえ!死ぬぞ!
「・・・あのー。」
「はい、なんでございましょうか?」
「あなたの二つ名って、「鬼」とか「勇者」デスヨネ?」
「はい、そうですが?」
ほら、マジェスター。口が開いたままだぞ。
2話同時投稿試し打ち。