2-5 失踪人ユーナ
「隊長!作者のメンタルが持ち直したようです!」
「やっとか!1日に何回ブックマーク確認すれば気が済むのかと思ったが、逆お気に入りユーザーが増えたのが功を奏したか!?」
「いえ!それもありますが、2ちゃんねるの新たな「転生」書き込みを発見したようです!それにツイッターも!特にツイッターは何回も覗いてました!」
「口ではあれがしんどいとか、重圧がとか言っておったではないか!?そんなだからカマッテチャンとか言われるんだ!」
「その通りであります!なんともキモいニヤつき方でした!」
「よし!これを機にここを立て直すぞ!すくなくともここに書き込むのはあらすじとかでなければならん!このままでは続けて読んでくれた読者様の中には話の内容が吹き飛ぶ人が出てきてしまう!そんな卑怯な方法でアクセスを稼ぐわけにはいかんからな!」
「隊長!それは手遅れです!あと、あらすじなんて書かせたら奴は嘘で塗り固めますよ!きっと!」
「何ぃぃ!!??」
「おい、お前「剣舞」か?」
「あっ、はい。」
「おお!良かった!この依頼なんだが、ついて来てくれねえか?報酬は均等に頭割だ。」
「あっ、はい。」
「助かる!やはり評判どおりの男だな!
「あっ、はい。そんな事ないです。」
エルライト領冒険者ギルド。ここに「剣舞」の二つ名を持つフリーのBランク冒険者がいる。左右長さの違う剣を舞うように振り回し、特殊な動きですべての攻撃を回避するアタッカーとしての役割に、的確な破壊魔法に強靭な回復魔法、仲間のサポートまで行う補助魔法に、ここぞという場面で使われる召喚魔法などの後方支援としての役割、更には、キャンプの際にふるまわれる料理はその辺りの店のものより質が高く、なにより依頼を断らないプロフェッショナル精神を評価された二つ名である。
「まさか、お前さんに二つ名がつくとは思わんかった。」
「俺も・・・。」
冒険者シウバは依頼を断れなかっただけで、評判は絶賛独り歩き中である。
あれから1週間後、冒険者ギルドにユーナからの伝言が届いた。急遽、レイクサイド召喚騎士団へ帰らなければならなくなったとの事で、この数週間は楽しかったと付け加えられていた。
「なんだよ・・・、それ。」
その心のこもっていないかのような乾燥した文章のせいで、余計に喪失感に襲われる。
「この剣は、預かっておくよ。いつか、君に会う日まで。」
いくらレイクサイド召喚騎士団とはいえ、アダマンタイト製の剣を受け取りもせずにいなくなるものだろうか?でも、伝言があるという事はユーナは無事で、騎士団の命令でいなくなったという事だろう。よほどの緊急の事態が起こっていたに違いなかった。そう思いこんだ。
「いや、ユーナが無事ならそれでいい。それで、いいんだ。」
良い訳がない。だけど、どうする事もできなかった。
それからの俺はコツコツと依頼をこなした。最初はもともとやってた薬草採取の依頼が多かったが、帰りにゴブリンに絡まれても、もう困ることはなかった。攻撃に目的を。アダマンタイト製の剣が強い事もあるが、考えれば考えるほどに冴えていく剣の切れが信じられなかった。そして、それに破壊魔法を組み合わせたりする相乗効果が自分には合っていると思った。以前言われた言葉がある。素質がないというのは、すべての素質があるのと同じ。それが俺を支えている。採取場所に着いた後の事も進歩があった。
「ノーム召喚!頼んだぞ!」
採取場所で数匹のノームを召喚するのだ。これはユーナが酔っぱらった時に聞き出したレイクサイド領での農作業にノームを使うというのを真似させてもらった。たしかに自分で集めるよりもかなり効率がいい。それに、地味に召喚魔法のレベルが上がっていく。
「そういえば、最近はプロトン草を取りにいってねえな。」
前はユーナのワイバーンであっという間に終わらせた依頼であるが、今は徒歩と船を使わねばならない。経費を考えるとあまりおいしい依頼ではないのだろう。受理する者がおらず、ずっと張り出してある。
「ワイバーンはともかく、フェンリルの召喚ができたら助かるのに。」
実は数年前から魔石の価格が高騰している。レイクサイド召喚騎士団が召喚獣との契約で活躍しだしたり、ヒノモト国からの魔道具が流通しはじめた影響による。魔石は本当に貴重で、そう簡単に召喚契約なんてできなくなっていた。その分、フェンリル召喚の契約条件などの情報は手に入れやすい。素材屋がキャンペーンとかしてるもんな。召喚魔法の訓練が足りない奴は契約できないようだけど、この前相談したら、俺のレベルではなんとか契約できるのではないかとの事だった。素材を集めるのが楽しみである。
羊皮紙と雷の魔石、ダイアウルフの牙。これがフェンリル召喚の契約素材である。ダイアウルフの牙か、どっかの冒険者パーティーに混ぜてもらおうかな。
「お、それだったらちょうど討伐依頼が出てたな。あいつらのパーティーが受理するかどうかをしぶってたぜ。」
受付おっさんに相談すると、用意してたかのような答えが返ってきた。最近、ユーナがいなくなって初めてこのおっさんがいなければ俺は死んでたんじゃないかとも思ってきてしまうほどに頼りになっていた事に気付く。だが、おっさんには伝えない。恥ずかしいし。
ダイアウルフの群れの討伐は意外にもすんなり終わった。皆、破壊魔法を直接当てるのではなくて動きの牽制に使う俺の打ち方に感心していたようだ。それにキャンプでふるまった料理が好評だった。
「なあ、シウバ。背中の剣は使わないのか?2本持ってるようだけど?」
「あ、うん。これはちょっと訳があって。でも大切だから肌身離さないようにしてるんだ。」
「ふーん。」
この依頼に際に薬草を採取していたら、レドン草があった。MP回復ポーションが作れるという話をすると、パーティーのメンバーがやっきになってレドン草を探してきたので、格安で調合してあげた。調合している最中にユーナの事を思い出してしまって、泣きそうになったのは秘密だ。刺激臭が出たんだよ!今回は特別に!
しかし、これはちょっとしたビジネスになるな。それに薬を現地調達できると助かる事も多い。
「どうにか調合法を教えてもらうわけにはいきませんか?」
いきつけの薬屋で交渉してみる。最初は全然だめだったけど、誰にも調合法は明かさないというのと依頼先で調達した薬草を優先的に卸すという条件付きで何種類か教えてもらった。その中に面白い物があった。
「身体能力強化薬・・・。」
例のプロトン草を使う、貴重な薬だ。だが、プロトン草はあの島にしか生えていないというだけで、調達できないわけではない。残ってたプロトン草を分けてもらって調合してみる。これは使える。
雷の魔石を求めて魔物の討伐依頼にくっついていくと、この身体能力強化薬がとても役に立った。体が軽いんだ!速さを重視した剣撃が面白いように使う事ができる。
「シウバは舞うように斬るな。見ていて美しいよ・・・。」
なんだって!?照れるじゃねえか、よせよ。いや、変な目で見ないでくれ。気持ち悪い。
数週間後、めでたく雷の魔石を手に入れ、俺はフェンリルと召喚契約を結ぶことができた。
「これからよろしくな。」
そして俺はさらなる薬草採取を行うようになっていた。どんなに遠くでもフェンリル召喚で移動してノーム召喚で薬草採取をするのだ。召喚に使うMPは薬草採取で十分に上がっていた。これがレイクサイド召喚騎士団のMP上昇方法だなんて知らなかったが。
「師匠。新たな薬の調合を教えてください。必要な薬草あれば採ってきますんで。」
いきつけの薬屋のおっさんはいつしか俺の薬草師としての師匠になっていた。薬草師は奥が深い。ちょっとした薬で身体能力や魔力の強化ができる。属性の上昇もバカにならない。俺はこれで幾度も依頼中に命拾いしたと思っている。
「優秀な冒険者であるシウバに師匠と言ってもらえるのはありがたいんだがな。」
師匠は控えめな性格だ。だが、腕は確かだし、かなり助かっている。俺は色んな人に助けてもらって生きているのを実感してるぞ。
「薬の効果は非常に優れたものだが、それだけではだめだ。あくまでも、補助でなければならない。」
師匠は毒を使う事を非常に嫌っていた。だから、俺も毒は使わない。しかし、なんて言ったっけ?補助?
「そういえば・・・。」
最近、補助魔法を使いだした。これに、薬の効果を足せばどうなるか。
結果はものすごいものだった。ドーピングと魔法の相乗効果で俺の剣が更にスピードと重さを増した。
「シウバはその細い腕で本当に簡単に剣を振るうよな。お前が振ってるのをみると軽く見える。片手でも十分そうだ。」
片手でも十分・・・では、・・・もう一方の手でも振るえるのか?
背中には憧れの人の剣が常に収まっていた。使ってもいいのかな?ユーナだったら笑って許してくれるよな?俺、ユーナと一緒に戦ってもいいかな?
右手には細身の長剣、左手には幅広の剣とバックラー。左右の長さの違うアダマンタイト製の剣を舞うように振り、周囲の敵を屠るその姿は、まさに「剣舞」。受付の男に紹介された縁で剣と戦闘の師匠に出会い、薬の師匠に出会い、さらには仲間たちの言葉で成長した俺は「剣舞」という身に余る二つ名を手に入れた。
シウバはようやくBランク。実力的にはロックリザードくらいなら倒せます。シルバーファングはちょっときついかも。Aランクはまだ無理ですね。ただし、パーティープレイは得意。召喚契約は当分はノームとフェンリルだけですね。オールラウンダーを目指します。