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9 「驚かないで聞いてくれよ」



9 「驚かないで聞いてくれよ」


「私ね・・・」

運命のクラス発表の瞬間、一樹は涼香に呼び止められた。

(お願いだ、俺と一緒の1組であってくれ!)

「うん、何組だったの?」

(お願い!1組と言って)

「私、1組。一樹と一緒だったよ!」

「おおおおおおおおお。良かったあああああ」

その時、一樹の心は一気に軽くなり安心が脳内に回っていた。

「でも何でさっき悲しそうな表情をしてたの?」

「フリだよ、フリ。あのまま普通に言っても面白くないでしょ。だからね!」

一樹はそんな一面が涼香にあったことを始めて知った。

「まあとにかく、一緒のクラスでよかったね」

うん、そうだね!


そこから高校生活最後の3年目は本当にあっという間に過ぎていくのであった。

夏休み、修学旅行、球技大会、文化祭・・・・とあっという間に過ぎて行き、気が付けばもう冬。3年生の生徒のほぼ全員が進路が決まりほっとしていた時、驚きは忘れた頃にやってくるのであった。


それは冬休みに入る直前の出来事だった。

ある日の放課後、一樹は涼香を呼び出した。

「どうしたの?一樹くん」

放課後誰もいない教室にやってきた涼香。

しかし一樹は寂しそうな感じでずっと俯いていた。すると

「あのさ、涼香。涼香が今までの生活で1番楽しかった出来事って何?」

急に語りだした一樹。

「え?どうしたの急に??」

「いや、ちょっと気になって」

(別にそんなことを聞くために呼ぶ必要ないよね)

と思いながらも

「今までで1番?やっぱり今年の文化祭かな?クラスみんなで参加出来た最後のイベントだったし・・・」

しばらくの沈黙の後

「そうか、最後の年に涼香が最高で過ごせれて良かったよ。」

意味深な一樹の言葉に疑問を感じた涼香は

「え?一樹くんどうしたの?」

ついに一樹へ切り込んだ。

「驚かないで聞いてくれよ」

「・・・・・・うん」

「実は俺・・・・・この高校を卒業後に鳥取から宮城県の仙台に引っ越すことになった。だからお前と会えるのもあと少ししかない。」

「え??」

涼香の頭は真っ白になり言いたい言葉も全然浮かばなかった。

「ちょ、待って・・え?何で急に!?」

当然困惑する涼香。

「実はな昨日の夜俺の部屋に母が来て父さんの仕事の関係で仙台の方に行くことになった。まあ俺もその近くで就職することになるからしばらくはそこで働くよ。本当はこの地で働くと決めていたけど急に決まったから仕方がない。まあこの話をするのは先生よりも君に1番に話しておきたいと思って。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

どうしていいか分からない感情で涙の1つ出ない涼香。

そして再び続く長い沈黙の時間。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

2人とも何も言えないようだ。するとここで涼香が口を開いた。

「じゃあ・・もう一生一樹くんとは会えないの?」

一樹もこの状況が辛いらしくなかなか言葉を発せない。そして

「俺だって本当は嫌な選択だったよ。実は俺だけここで一人暮らしをすることも出来たかもしれないけどそれは絶対に無理だと言われたんだ。ここで俺だけ暮らすにはそれなりにお金もかかるし、困難ばかりだから。でもどっちにしてももう向こうに行くことは決定した。でもまだ大丈夫だ。行くのは3月中旬くらいだからまだ3ヶ月くらいもある。だからそれまで2人だけの楽しい思い出を作ろうぜ」

既に泣きそうな涼香。

「も、もう一樹くんと会えないの??一生・・・・このまま死ぬまで一樹くんと会えない何て、私・・・・・」


「「バタン!」」

衝撃のあまりその場に倒れこむ涼香。

「おい!大丈夫か??」

「私、本当に一樹が居ない生活何て耐えられないよ。この前一緒に約束したよね?卒業してもずっと一緒だよ!って。あれはどうなるの??」

「・・・・・・・・・・ごめん」

一樹は倒れ込んだ涼香を抱え起こしその場で軽く抱き合った。

「涼香。本当にごめんな。でもあと少しの間は俺がここにいるから安心しろ」

「一樹くん・・・・・」

2人の抱擁はしばらくの間続いた。






さらに日は流れ年が明けて2016年がやってきた。

この年の元旦、涼香は一樹と最後になるかもしれない初詣にやってきた。

その帰り道おみくじを引いて見ることにした一樹たち。

「私中吉だった。一樹は?」

「お、俺も中吉だ」

「やっぱり私たちって本当に仲がいいね。いろいろなことで一緒になるからね」

その後2人はお正月デートを思う存分に楽しんだ。

その日の帰り道

「私、最後のお正月に一樹くんと遊べれて本当に楽しかったよ。」

「俺もだよ涼香。俺はあと数ヶ月で向こうにいってしまうけどたとえ離れていても俺たちの糸は繋がっているからな」

「一樹くん♥」

「涼香!!♥」

2人は多くの通行人の人目も憚らずいつまでも抱き合った。

こうして楽しい1日は更けていく。それと同時に『別れの季節』も一歩一歩近づいてくる。





そして数日後、学校の始業式も終わり、学年末テストなど、どんどん終わりに近づいて来ていた。やっぱり時の流れは早い。特に卒業など、別れの季節になればなるほどその思いは強く感じる。

気が付けば今日は学校最後の日。明日からは自由登校に入る。

最後のHRで先生の話になった。

「皆さん、明日から自由登校に入りますがくれぐれも警察の世話にならないように。お願いしますね。」その後先生の口から一樹が卒業後に宮城県に引っ越すことが告げられた。

こうしてやや重い雰囲気のまま最後の学校生活が終了した。

残すは約1ヶ月後の卒業式のみとなってしまった。


「あーあ。あと卒業式しか学校に来ないのか~」

「長いようで短かったね」

「なんか淋しいな~」

放課後、教室のあちこちから寂しさを表す声が聞こえてくる。

そんな声が聞こえる中、涼香は無言で『誰かに向けた手紙』を書いていた。

とうとう教室に残っているのは涼香のみとなってしまった。

もちろんその手紙の送り先は・・・・・


~最終話へ続く~




そして・・・いよいよ次回で最終回!!


※最終話予告※

・1月から連載していたこの物語もいよいよ最終回!!!

本当に今までいろいろな出来事があった2人。涙の卒業式シーン。

そしてさらに感動の一樹との別れの瞬間・・・・

感動必至?の最終話を是非お楽しみに!


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