8 新たなる道へ
8 新たなる道へ
「やっべー。遅刻するーーーー」
その日、一樹は月1の部活試合のため市内の体育館へ向かっていた。
今日は遅れたらいけない大事な試合だ。
いつもの通学道を自転車を全力で漕ぐ。
結局あれ以来一樹は涼香と一言も話していない。
涼香が何度も誤解を解こうと話すも一樹は全く相手にしなかった。
市内の会場に向かう途中一樹は、ある場所を通りかかった。
そこは一樹が涼香と始めてデートをした記念の場所だった。
「ああ、ここ懐かしいな。あの頃の涼香はとても大人しくて可愛かったのに今では・・・・」
ふと懐かしい出来事を思い出す一樹。しかし
「いや、もうあいつの事を考えるのはやめよう」
我に返り急いで試合会場へ向かった。
「間に合ったーーーーー」
なんとかギリギリに会場に間に合った一樹。しかし既にほぼ全員集まっていた。
急いで部活用服に着替えその日の予定を顧問から聞く。
「いいかお前ら。今日は大事な練習試合だ。心を切り替えて頑張るように!それと今日はこの人に来てもらった。さあどうぞ」
そう言うと先生は誰かを呼び出した。
「みなさん初めまして。私は数年前にここを卒業した山西智樹と言います。今日は皆さんの試合の様子を拝見するため来ました。まあOB的な感じだと思ってわからないことは気軽に話してください!よろしくお願いします」
「「よろしくお願いします」」
部員一同が声を揃えて挨拶する。
すると顧問の先生から驚きの一言が発せられた。
「実はこの智樹くんはこの学校の生徒の山西涼香さんの兄だって。そうだよなあ智樹?」
「はい。知っている人もいるかもしれないけどこの学校の涼香の兄です。」
「!!!!!!!!!!!」
一樹は驚いた。
「え?え?・・・・ええええええええええええええええ。『あの話』本当だったのか・・・」
そう、一樹はあの日、ショッピングモールへいた時、涼香が見知らぬ男と手をつないでいるのを見てしまい、浮気だと完全に誤解していた。しかも何度も涼香から嘘だよと言われても俺は全く信じなかった。
「兄がいるのが本当だった何て・・・・・俺誤解してた」
そう言うとその場から立ち上がり
「すいません!家に忘れ物したので暫く帰ってきます、ごめんなさい」
そう部員・顧問に告げると体育館を飛び出し、急いで涼香の家に向かう。
当然だが忘れ物と言うのは嘘で今から寮歌へ謝罪にいくみたいだ。
「涼香に謝らないと。俺のせいで、涼香は・・・涼香は・・・・」
この場所から涼香の家までは自転車で約30分。
全力で自転車を漕ぐ。
「涼香ああああああああああああああああああああ」
予想以上に早く涼香の家に着き、そこから涼香を呼び出す。
インターフォンを鳴らすと涼香の両親らしき人が出てきた。
「どちらさんですか?」
「すいません。私涼香さんと一緒のクラスメイトの野田と申しますが・・・涼香さんは今いますか?」
「はいはい。ちょっと待っててね」
数分後、涼香が出てきた。
「え?か、一樹くん!?どうしたの急に?」
いきなりの登場に驚きを隠しきれない涼香。
一樹はその涼香の手をとり
「ごめん、ちょっといいか?」
そのまま近くの空き地まで移動してきた。
「ど、どうしたの一樹くん」
涼香が問いかけると
「ごめん!!!!!!俺誤解してた!本当に申し訳ない!!」
謝罪と当時に土下座をする一樹。当然涼香は何のことか分からずに
「え??????」
「俺ずっと誤解してた。あの日お前が見知らぬ男と店にいるのをたまたま俺が目撃して俺は勝手に涼香が浮気したと思い込んでいた。でもそれは涼香、お前の兄さんだとは俺知らなかった。それなのに俺はお前の言う事なんか全く聞く耳も持たずにお前に悲しい想いをさせてしまった。本当にごめん。俺が間違っていた。」
そして再び頭を下げる一樹。
「一樹くん・・・・・・・・・・・・」
「このことは許されることじゃないと分かっている。でも俺は、俺は・・・・」
そのような姿を見て涼香は、
「もう気にしなくていいよ。一樹くん」
「え?」
「私の方こそそんな紛らわしいことしてごめんね。もう気にしてないから、元気出して。」
「りょ、涼香っ。もしかしてこんなに酷いことをした俺を許してくれるのか」
「だって、こんな勘違いよくあることだよ。別に一樹くんに限ったことじゃないし。だから!もう大丈夫だよ、私。 それよりこの後はどうするの?」
「え?この後はまた部活に戻って・・・・」
「いや、そうじゃ無くてこの2人のカ・ン・ケ・イは?どーーするの?」
「ああ、そっちか・・まあこんなに酷いことをした俺と涼香がもう1度やり直すのは涼香がかわいそうだしな・・・・」
そう言うと涼香は一樹の手を握り
「そんなこと言ってしまったら人生損するよ。だからもう1度私とやり直してみない?もちろんこれからは、2人で幸せなカップルになろうね。ほら、あの頃のように」
「涼香!本当にいいのか。そこまで俺の事を想ってくれてたなんて・・」
「当たり前でしょ!恋愛以前に私たち仲間だから。だからこれからもよろしくね♥」
「こ、こちらこそ」
こうして本当にいろいろあった2人は今まで以上に最高のカップルでいようと決意し直した。
「今日は新たな記念日だね」
「そ、そうだね」
その日は2015年3月10日。
そしてその2人に新たな試練が降りかかる。
「ク、クラス分け!?」
もうそんな時期になってしまったのか?
日は流れ新しい週が始まった。
いよいよ学年末の時期だ。それと同時に新たなクラス分けも気になってくる時期だ。
毎年3月のこの時期は本当にいろいろと忙しい。
「ねーねー。一樹くん、また来年度も同じクラスになれるといいね」
あの日から再び決意し直した2人。
涼香は一樹と一樹は涼香と一緒のクラスになれることを楽しみにしていた。
「おお、でももし別のクラスになってしまっても毎日一緒に帰ろうな!」
「うん。そうだね。でも1番は一緒のクラスになることだよね!!」
「相変わらずの仲良しだな、お前ら」
いろいろな同級生から言われる。
幸いあの騒動は他のクラスメイトにはバレていないようだ。
「うん、私たちこれからずっと一緒だもん。卒業してもね!ねえ一樹!」
「おう!これからずっと俺たちは一緒だからな」
そしてまた日は流れ新たな新学期が始まった。
そして運命のクラス発表の時が来た。
始業式が終わり学年ごとの会が開かれそこで発表される。
「それでは今から発表します。」
主任が声をかけると生徒の目の前に大きな紙が張り出された。
「「おおおおおおおおお」」
あちこちから歓声が聞こえる。
そんな中一樹は必死で涼香の名前を探していた。
必死で探していると後ろから俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
「一樹くん!」
その声は涼香だった。
「おお涼香、クラスどうだった??」
すると急に涼香は寂しそうな顔をする。
「え?もしかして涼香・・・・」
「私ね・・・・・」
その瞬間一樹は一緒のクラスになれたよ、という一言を待っていた。
~続く~