3 「伝えたいことがある」
3 「伝えたいことがある」
「行ってきまーーす」
その日涼香は約1ヶ月ぶりに学校へ行くことになった。本当はこれからも不登校のつもりでいたが昨日の一樹の言葉が心にきたみたいだ。
久しぶりの学校。しかしそれ以上に不安のほうが大きかった。
「私なんかが学校に行って一樹以外のクラスメートがどんな反応するのか。もしかしたら再びいじめが・・・」
今日から涼香が学校に行くことは一樹意外誰も知らないことだった。いわばサプライズ的な雰囲気になっていた。少し重い足を引きずりながらなんとか学校に到着。
すると後ろから
「おお、涼香。おはよう」
振り返ってみると偶然にもそこには一樹がいた。
「お前よく決心したな。すごいぞ」
少し上から一樹みたいだったがその部分も好きだった。
「私・・・不安が多いけど昨日一樹くんが言ったこと、信じるから。よろしくね」
涼香は未だに心に残る不安を抱きながら校舎、そして教室へと入っていく。
2Aの教室が近づくにつれてやや緊張してくる。私の後ろには一樹がいる。
約1ヶ月ぶり。私はあの教室へ!
「み、みんなおはよう」
後ろのドアを開け、みんなに声をかける。
涼香の声を聞いた瞬間、ほんの教室が一瞬静かになった。
当然この日涼香がくることは知らないのでほとんどの人が驚いたような表情をしている。
びっくりしている者もいれば、笑っている者もいる。
ドアの近くで固まっているとあのリーダー的な存在の麻里が涼香の元へ近づいてきた。
私は再びいじめられるのを覚悟で目を閉じた。すると麻里は涼香の手を取り、
「久しぶり涼香さん。待っていたよ」
(!?!?!?!?!?)
「え??」
私は本当で何が起きたのか分からなかった。
すると今まで涼香をいじめていた女子が全員集まってきて
「久しぶりだね」
「涼香さん。今までほんとうにごめんね」
「会いたかったよ」
何と全員が涼香が再び学校に来るのを楽しみに待っていた。
「え??え??みんな・・・私を待っていたの???」
涼香の目の前には予想していなかった展開になっていた。
「え?本当で・・どういうこと?」
私が学校に来るといじめに再びいじめに遭うと思っていたがまさかの逆。クラスの女子全員が涼香が来るのを楽しみに待っていた。
「み、みんな私のこと...待ってたの?」
少し疑いはあったもののみんなに声をかける。
「当然でしょ!」
「来てくれて嬉しいよ」
多くの女子が答える。
「で、でも私のこと嫌いなんでしょ?」
しつこいように何度も問いかける涼香のそばに一樹がやってきて
「サプライズ大成功!」
私は意味が全く分からなかった。
「サ、サプライズ?え・・・?みんな、どういうこと??」
パニックになる涼香。そのそばにいた一樹が
「ごめん。俺が仕掛けたサプライズだ」
と言いながら教室の前へ。そしてゆっくりとこの経緯を話し始めた。
「ごめんな涼香。騙すつもりは無かったんだけどな。実は俺が転校してきてしばらく経ったときクラスの男子から涼香が不登校になっていると聞いた。俺の友達も昔いじめにあっていたからその気持ちは俺も痛いほど分かる。だから俺は先生の協力も得てこのクラスの全員で話し合った。『何故涼香をいじめるのか?』『助けてあげよう、と言う気持ちはないのか』など、本当にいろいろ話した。だからこそ改めていじめをなくそう、みんなで涼香を助けよう。みんなが安心して暮らせる生活にしよう。 とか本当にいろいろ話し合った。はじめのうちは女子の一部があまり気分が乗らなかったみたいだけど、なんとか俺が説得してみんなで支えあおう!と決めたんだ。だから今こうやって涼香が無事に学校に来てくれてみんな嬉しい。そう思っている。そして最後に、みんな協力ありがとう!」
あちこちから拍手が聞こえる。
涼香は涙を流しながら聞いていた。嬉しさと喜びのあまり全然話が入ってこなかったが一樹のおかげで私はいまここに立てている。ということは分かったみたいだ。
「じゃ、じゃあ私が学校に来ることはみんな知ってたの?」
「ああそうだ、みんな知ってた。」
「じゃあ昨日一樹くんが私の家に来たのも?」
「もちろん。俺がクラスの代表としてな」
「でもあの時、一樹くんがまだいじめがあるみたいな空気感だしていたよね?『困ったら俺に言え』みたいな・・・?」
「だからそれも全てお前を・・!」
しばらく涼香と一樹のやりとりが続いた。
「みんな・・・・本当にありがとう。私、今日から頑張るね、みんなよろしく!」
涼香がやや涙目になりながらみんなに訴える。
「よろくな」
「よろしく」
「今日から楽しく過ごそうぜ」
「お前は最高の友達だ」
クラスの女子はもちろん、男子も応援していたようだ。
この日の朝は涼香にとって人生で最高な朝になったようだ。
そのまま席に着き朝のHRが始まる。
もちろん先生も今日から涼香がくる事を知っていた。
(和樹くん。みんな本当にありがとう)
心からみんなに感謝をした、これからどんな未来が待っているのか。
楽しみで仕方がない涼香だった。
そうこうしているうちに1限が始まる。
今日は特別な時間割で1~3限まで生徒会主催の生徒総会だ。
日常の生活についてだとか様々なことについて生徒会を中心に話し合う会だ。
時間どおりに生徒全員が体育館へ集まってくる。
何とか生徒総会が始まろうとしていた。しかしその前に
「始める前に校長先生の話です。」
その瞬間半分以上の生徒がため息をついた。中には舌打ちをしている者もいる。
というものうちの校長である林校長先生はとても話が長いことで有名だった。
15分以上は当然で時には40分以上長々と話すこともあった。
「では校長先生、お願いします」
生徒会長が促す。
校長がステージに昇り一例。ここからが地獄の始まりだ。
そこから延々と話し、ついに15分経過。
「相変わらずクソ長えよな、校長の奴」
「まじで長えな。これなら授業のほうがましだよ」
生徒の一部が愚痴をこぼした。
釣られるように口々に小声で文句を言う生徒たち。
涼香も何とか聞いていたが、ある限界が来ていた。
「やばい。すげえ眠い」
涼香は目を閉じたり開けたりしていた。もう睡魔が近づいているみたいだ。
校長の話し中は生徒は起立状態なので座ったら周りにバレてしまう。
しかしもう睡魔はそこまで来ていた。
(どうしよう、どうしよう・・・)
絶対絶命のピンチ、するとその時
~♫♬♪♬♫~
突然後ろの方で誰かのスマホが鳴った。とても大きく盛り上がるような曲だ。どうやら着信のようだ。
全校が後ろを振り向く。校長も
「おい誰だ!こんな時に携帯鳴らすバカ者は?せめて静かな音楽にしろ」
校長が注意するも誰がやったのかは名乗らない。すると涼香と同じクラスの麻里が
「先生!携帯を鳴らしたのは涼香です」
なんと先生に告げ口をした。
「え?!」
当然涼香は鳴らしていない。しかし何故か冤罪をなすりつけられた。
「わ、私違いますよ。携帯は教室に置いているし」
「あら~嘘はついたらいけないよ。」
(やばい、このままでは私が疑われてしまう・・・)
校長もそのまま麻里の言うことを信用して
「もういい、とにかく2Aの山西涼香さん。あとで教務室に」
「・・・・・・・・・・・」
(何故、何故私が・・・・私は無実なのに。。もしかしてまたこれもいじめなの?だってみんなもう私をいじめないって言ったよね?)
自然と涙が溢れてくる。
「もう...本当に疲れた・・・」
そしてその場で涙を流す。
「おい、おい涼香!涼香!」
突然誰か私を呼ぶ声がする。
「涼香!起きろ!」
「!?・・・え?」
その声は一樹だった。
「おい、おい涼香!早く起きろ。もう終わったぞ」
「!!!!!」
「わ、私・・・・?? え??」
「お前寝ぼけているのか、突然寝るなんて・・・」
「え??」
動揺を隠しきれない涼香。一樹の話によると校長の話の途中で寝てしまったらしくそのまま時間が過ぎ気がついたら全て会議が終わりみんな教室に帰ろうとしていた。その時涼香がまだ寝ていることに気がついて起こしたらしい。
つまりあの携帯の出来事も夢の中だったみたいだ。私は少し安心した。
「あ、ありがとう、一樹くん」
私もそのまま教室へ帰る。
その日の放課後
涼香は一樹を呼び出した。
「伝えたいこと」があるらしい。
「一樹くん。今日の放課後に屋上に来てくれないかな?」
昼休憩にそんな事を言われ一樹は放課後するに屋上へ向かった。
ここの学校は常に屋上の出入りが自由になっていた。
そのままドアを開けると既に涼香が待っていた。
「りょ、涼香・・どうしたんだ?突然呼び出して」
一樹の声を聞くと満面の笑みで近づいてきた。
「私ね、一樹くんに伝えたいことがあるんだ」
突然意味深な事を言う涼香に多少不信感はあったものの仕方なく話を聞く。
「私・・・・・・一樹くんのことが好き!!」
「は?」
一樹は一一瞬ためらった。しかしその後、こう続ける
「私、一樹くんのおかげで変われたの。もしあの時一樹くんがうちにきてなければ、会っていなかったら私はまだ家にいたと思う。私は一樹くんのあの言葉で元気が出た。だから本当に一樹くんには感謝してる。だから今度は私が一樹くんを守りたい・・・・・・・そして、、、、、、私と付き合ってください!」
いきなりの告白に困惑している一樹だがそのまま涼香に近づき
「バーカ」
涼香に抱きついた。
「お前何言ってるの?俺がずっと涼香を守るよ。何があってもな、これからよろしくな」
まさかのOKの返事。
「あ、ありがとう一樹くん。これからよろしくね」
「おう!」
一瞬で幸せになれた涼香。2人が仲良く楽しそうに話している様子を屋上に続く階段の窓越しに1人の女子生徒が悲しそうに見つめていた。
~第4章へ続く~