11 (最終話) 「ありがとう」~君がくれた私の青春~
いよいよ完結!
最後までお楽しみください!!
11(最終話) 「ありがとう。~君がくれた私の青春~」
雪が溶けまさに卒業式日和。
2016年3月1日。
いよいよ卒業式の日がやってきた。
当日の朝、涼香はいつもより早く起きて一樹へ電話をする。
するとすぐに電話に出た。
「もしもし?涼香か??こんなに早い時間どうしたの?」
「か、一樹くん。今日の卒業式が終わったら教室に残っててくれないかな?渡したいものがあってね・・・」
「ええ?でも今日卒業式だろ?そんな時間あるのか?俺だって別の用あるし?」
(え?無理?)
涼香は落胆した。しかし
「まあちょっとの時間ならあるけど・・・」
「そう!分かった!!」
「一体なんだよ。その渡したいものって?」
「まあいいからいいから。それより今日の卒業式。遅れないようにね」
「おう。涼香もな」
こうして2人の会話が終わった。電話を切ったあとの涼香の表情はなんとなく嬉しそうな雰囲気になっていた。
「一樹くん。学校で会えるのは今日で最後だね」
その言葉には何か意味深な言葉に聞こえた。
そして会場の学校へ向かう。
『あの例のもの』を手に持って・・・・・
「それでは卒業生が入場します」
と当時に体育館の扉が開いた。今から本当に始まる。今日で最後。
もう思い残すことは無い。
そのまま第1歩を踏み出す。ステージ前に並べられたパイプイスに順番に座る。
「それでは今から平成27年度、卒業式を行います」
校長の挨拶でついに始まった。
そして校長式辞、来賓挨拶など卒業式定番の内容がどんどん進んでいく。
それと当時にこの学校に居られる時間もどんどん少なくなっていく。
「卒業証書授与」
いよいよメインイベントだ。この卒業証書授与が式のメインといっても過言では無い。
クラスごとに1人1人呼ばれていく。
そして
「山西涼香」
担任から名前を呼ばれる。
続いて
「野田一樹」
「はい」
一樹も呼ばれた。
最後の各担任からの挨拶と在校生代表挨拶そして卒業生代表挨拶も
スムーズに進んでいった。
気が付くと式が終わりに近づいていた。
「それでは以上をもちまして平成27年度卒業式を終了致します」
その後、1番の感動シーン
「卒業生退場」
在校生、職員、保護者などの拍手で長く通った学校に別れを告げる。
「3年間ありがとう」
みんながそう思ったに違いない。
その後各教室で最後のHRが開かれた。
本当に最後の先生の話と、クラスメイト1人1人が最後の一言を話す。
その後先生から卒業証書が配られる。
一通り配り終えると
「皆さん、本当に卒業おめでとう。これからは1人1人の進路は違うけど俺はみんなのことを信じている。頑張れよ!」
その言葉に涙する生徒もたくさんいた。
しかし一樹には未だにその実感が無かった。
「じゃあみんな・・・・・元気でな」
そう言い残し先生は教室を出て行った。
「もう卒業とかさみしいよ」
「私たち、また会えるよね?」
「たとえ離れても心は1つだよ」
やっぱりみんな思うことは一緒のようだ。
先生も教室から出てしまったので残っているのは生徒と保護者だけだ。
するとある保護者から
「最後にクラスの皆さんで写真を撮りましょう」
と提案。
もう最後だから・・・ということなので最後のみんなで思い出の写真を撮った。
こうして長かった3年間の高校生活に幕を閉じた涼香たち。
撮影も終わりまわりの人たちが帰ろうと準備をしていたその時涼香のもとに一樹が近づいて来た
「ごめん涼香。朝お前から残っていてと言われたけど急用が入ってしまってな。また今度」
「え!?」
「ま、また今度って一樹、向こうに行っちゃうんでしょ。今度って・・・いつ会えるの?」
「ごめん、まだわからない。また連絡するから。じゃあな」
と言ってそのまま涼香の視線から消えてしまった。
「一樹・・・・」
しかたなく涼香も帰宅することになった。
思い出の学校を出て仕方なく帰路に着く。
寂しい気持ちを背負いながら。
家についても寂しさは変わらない。一樹以外のクラスメイトとは一応最後の言葉を交わすことは出来たけど肝心の一樹とは全然話せれていない。
「一樹のやつ、終了後に会おうって言ったのに」
悔しい気持ちを誰にもぶつけられずにいたその時、
~♫♬♫♬♫~
涼香のLINE電話が鳴った。
「こんな時に誰なの?」
そう思いつつ画面を見るとそれは一樹からだった。
「一樹?どうしたの?」
「涼香!ごめんな。今日は」
「いいや、私は別に気にしてないけど。何の用?」
「いや、実はお前に伝えたい事があってな。俺の引越しの日にちが少し早まってな、予定より少し早くなって3月10日になったんだ。」
「え?」
「ああ、予定が少し早まってな」
「そうなんだ・・・・・」
切ない会話が続く。
「いつ頃出発するの?私、見送りに行きたいから。まだ渡せれてないものもあるし」
「ああ、一応10日の昼1時頃に鳥取駅だ。一緒に来てくれるか?」
「うん。いいけど・・・」
「じゃあOK。あと少しの時間だけどよろしくな」
「うん」
電話が終わり10日になるまでのわずかな期間。運良く遊ぶ時間が出来た涼香は約束の日まで思う存分遊びきった。そして・・・・刻一刻と別れの時間も近づいてくる。
出発日前日の3月9日。2人は最後の日として鳥取砂丘に行った。もう2人でここにいられるのも24時間を切ってしまう、
鳥取砂丘の小高い丘を上り今にも沈みそうな夕日を眺める。
「こうして2人でいられるのも最後なんだね」
一樹が呟く。
「うん、でも何があっても私たちはずっと一緒だよ」
「そうだな・・・・・」
2人はいつまでもその場から離れずただただ抱き合っていた。大勢の人の目線も気にせずに。その日、涼香は市内の旅館に泊まり、明日の『最後のお別れ』に向けて早めに就寝することにした。
「いよいよ明日で・・・一樹くん・・・・・」
~翌日~
いよいよ一樹との別れの日。
その日の朝、涼香は近所の文具店に来ていた。
色紙、カラーペンなどを購入し近くのカフェで1人黙々と何かを書いていた。
その頃一樹は、家の引越しの準備を終え、近所の挨拶を済ませていた。一樹の家の
家具などは引越し屋に運んでもらい、一樹たちの家族はそのまま電車で一旦大阪まで向かうそうだ。涼香は最後の挨拶を鳥取駅でする時間があるみたいなので本当にこれが最後の時間になる。数分後、その何かが完成して一息着いた頃一樹から電話が掛かってきた。
「もしもし?一樹くん??今どこにいるの?」
「涼香。俺ら今近所の人への挨拶が終わったから今から駅に向かうから。」
「OK。分かった」
涼香は電話を切り、そのままカフェを出る。そしていよいよ駅へ向かう。
予定より少し早く駅に着き一樹の到着を待つ。
待ち続けて10分。車に乗った一樹がやってくる。
一樹の両親は市役所への手続きがあるみたいでその空き時間、涼香と一緒に居れる時間が作れた。
一樹の顔を見た瞬間涼香は
「一樹くん・・・・」
もう目には涙が浮かんでいた。
「涼香。泣くなよ」
「だって・・・もう一樹と会えなくなるなんて、寂しいよ」
もうこれからずっと会えなくなる。そんなことは涼香はもちろん、一樹が一番わかっていた。
「だからね、私一樹くんに向けて手紙を書いてきたの。本当は卒業式の日に渡そうと思っていたけど・・・あの日、一樹くん帰ってしまったから」
そう言って涼香はカバンから手紙を取り出し、一樹へ渡す。
手紙を受け取った一樹は
「ありがとう。今読んでもいい?」
そう言い、涼香からの手紙を読み出す。
《大親友の一樹へ》
『今から3年前。私はいじめにあっていました。ほんの些細な事が原因で。そんなことがあり私は学校を休みがちになりました。もう2度と学校には行きたくない。当時の私はその事ばかり思ってました。しかしそんな時に私を救ってくれたのはあなた。そう一樹くんだったんだよ。覚えてる??
あの時、一樹くんが私の家に来てなかったら私は未だにずっと家に引きこもっていたと思います。だから一樹くんのおかげで私は変われたといっても過言では無いよね?
一樹くんのおかげで私の心は180度変わりました。今ではこうして2人一緒にいるけどそんな私たちがまさか付き合うなんて思ってもいなかったよね。わたしもびっくり(笑)
でもこれも全部一樹くんのお陰。だから一樹が向こうに引っ越すと聞いたときは本当に泣きそうになった。でも一樹から何事にも頑張れると私は思っている。だからこれから辛いこともたくさんあるとおもうけどどんなことにも頑張ってね。私のこの楽しい青春のときは君がくれたんだね。本当に今までありがとう。私はずっと応援しているよ。
頑張れ!一樹★★』
《一樹の大親友・涼香》
一通り読み終えた一樹は
「素敵な手紙をありがとう。」
喜んでもらえたようだ。
そして涼香は
「実はね、もう1つプレゼントがあるんだ」
と言ってカバンから何かを取り出した。
「はい、コレ」
涼香は大きな色紙を取り出し、一樹へ渡した。
「え?これは?」
「実はクラスのみんなに旅立つ一樹に向けて1人1人メッセージを書いてもらったんだ。もちろん一樹くんには内緒でね」
その大きな色紙には一樹以外のクラスメイトからのメッセージが一樹に向けて1人1人書かれていた。
「向こうに行っても頑張れよ」
「またこっちに帰ってきてね」
「私たちのこと忘れないでね」
「俺たちずっと親友だよ!」
など、全員が一樹のために書いていた。そして色紙の中央には一樹の似顔絵が書かれていた。
「涼香・・・みんな。本当にありがとうな」
この日涼香以外のクラスメイトは残念ながら来ていなかったが一樹の気持ちはみんなに伝わっただろう。
そして大事そうに色紙をしまうと今度は一樹が
「実は俺も涼香。お前に手紙を書いてきた。ただこれは俺が向こうに行ってから読んでほしい」
と言って一樹から手紙を受け取った涼香。
「ありがとう。一樹くん」
「俺たちはもう少しで離れ離れになってしまうけど、約束だ。たとえ離れても心の距離は離れないからな」
「うん。私も!絶対に忘れないよ」
そうこうしているうちに一樹の両親がやってきた。
どうやら役所への手続きが終わり今から一樹の家族一同電車に乗り込むようだ。
涼香は
「ホームまで一緒に行きたい」
と言うので家族たちと一緒に駅のホームまでいく。
大阪行きの特急到着まであと数分。その残り時間2人は何も離さずずっと気まずそうな時間を過ごした。
そんな状況が辛くなったのか一樹が口を開く。
「なあ涼香?」
「どうしたの?一樹くん」
「俺たち、また会える時あるよね?」
一樹の気弱そうなその一言に
「当ったり前でしょ!!!。あるよね?じゃ無くて絶対会おうね!!約束!!!」
そしてついに・・・・・
「「間もなく1番線に大阪行きの特急がまいります。危険ですので・・・」
ついに一樹たちが乗る電車がやってきた。今からこれにのって一樹たちは行ってしまう。
電車がホームに到着し、あらかじめ予約していた車両に乗り込む。
「じゃあな、涼香。こちらこそ今まで本当にありがとう」
最後の別れ。これほど寂しいことはないだろう。
「一樹くん!私こそ、ありがとう。また絶対会おうね」
「おう、絶対な!」
ついに電車に乗り込んでしまった。
一樹たちの座席は窓側だったので最後まで涼香の表情が見える。
辛うじて開く窓を開け、涼香に叫ぶ。
「涼香!ありがとう」
「うん、私のこと忘れないでね」
電車が出発するまでギリギリの時間私たちは手を取り合う。
そしてついにあの瞬間が・・・
「「間もなく大阪行きの電車が出発します。危ないですので黄色い線まで・・・」
駅員の言葉を合図に2人は手を離す。そして
ゆっくりと動き出す電車。
ガタンガタン・・・・・
「涼香!本当に元気でな」
「一樹くんもね。絶対絶対また会おうね」
徐々にスピードが早くなる電車。涼香はホームのギリギリまで電車を追いかける。
そして涼香は見えなくなるまで手を振る。
「一樹、一樹くううううんんんん。ありがとおおお・・・・・・」
既に涼香の瞳には涙が浮かんでいる。
だんだん小さく見えなくなっていくその電車。
それをいつまでもいつまでも手を振る涼香。
そして涼香は鳥取駅をあとにして電車で地元まで帰る。涼香は鳥取駅から少し離れた所に住んでいた。帰る途中の電車の中で出発前に一樹から渡された手紙を読むことにした。
カバンの中に大切にしまっていたその手紙。ゆっくりと封を開ける。
【大親友の涼香へ】
涼香が今この手紙を読んでいる頃、俺はもう鳥取にはいません。
俺が転校してきたその日、俺は涼香の姿を見ることは出来なかった。クラスの女子に聞いてた涼香が不登校になっていると聞いて俺は本当にびっくりした。その時何故か俺は『涼香を守りたい』と思ってしまった。今でも何でか分からないけどな(笑)
まあそれでもいろいろあって涼香が無事に来てくれて嬉しかった。俺はそれだけでも幸せだったのに涼香が俺と付き合いたいと言ってくれてな、正直全然モテない俺に彼女ができるなんて本当に「びっくりぽん」だったよ(笑)
でも付き合ってからは本当にいろいろあったよね。楽しいことも辛いことも時には喧嘩したことも、今となっては全部思いでだけどな。俺はずっと涼香のことが可愛くて優しくて綺麗で、本当に理想の女子高生だと思っていた。でもそんな俺が急に家の引越しと聞かされて・・・俺だって本当は嫌だった。涼香と離れることも全部が信じられなくなった。でも涼香は俺がいなくても1人で頑張っていけるそんな女子だと思っている。だって、涼香は本当に素晴らしい女性だから。たとえ涼香に辛いことがあってもなんとかなると俺は思っている。俺も向こうで頑張るから涼香も頑張れよ。俺がずっと応援しているから。そして今度また2人で会おうな。じゃあ、またその時まで。ありがとう。
~一樹~」
実は手紙を読んでいる途中、涼香は既に号泣していた。
そして手紙の下に何やら小さな紙切れが入っていた。
「なにこれ?」
手にとって見るとそれは・・・
「こ、これは!!」
そこに入っていたのは2人の初デートで一緒に撮ったプリクラに一樹からの手紙メッセージが書かれていた、世界に1つだけの写真であった。
それを見ると再び涙が溢れ出す。
「一樹くん・・・」
その時、電車のアナウンスが聞こえた。
「やばい、私。降りなきゃ」
そこは涼香が降りないといけない駅だった。
駅を降りようやく涼香は地元に帰ってきた。
涼香は再び一樹からの手紙を読み返す。
「一樹くん。私も頑張るから、一樹くんもしっかり頑張ってね」
そう言って手紙を大事そうに鞄に入れる。
そして涼香は未来の夢に向かって新たな一歩を歩きだした。
完
いかがでしたか?
長らく書いてきたこの小説ですが今回をもちまして『最終話』となりました。
はっきり言ってこんなに長い話を書いたのは初めてで至らない点、読みにくい点などたくさんあったと思います。しかしここまで来れたのは皆さんのおかげです。 本当にありがとうございました。
今回「卒業(別れ)」をテーマにして書いていきました。
実は私、作者も主人公と同じ高校3年生でして、自分なりに立場を一緒にしてみよう、と思ってしまい!? 随筆しました。 この話では2人の出会いと別れを1つにまとめた話です。
出会いの嬉しさ、別れの寂しさ、悲しさが読者の皆さんに伝われば嬉しいです。
最後になりますがこの話を読んでくださっている皆さんのこれからを私は応援します。それぞれ自分の夢に向かって頑張ってください。
またどこかで皆さんと会えたら嬉しいです。
それでは、最後まで読んでくださり本当にありがとうございました!!