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チート四人組、学校へ行く……からの婿決定戦(副題:どうしてこうなった?)  作者:


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敵にまわしてはいけない人

 手の上にある切れた髪を眺めている寛鐘に、蘭雪が背筋どころか全身が凍るような優しい声色で訊ねた。


「さっきの液体。口にも触れていたわよね?もしかして少しぐらい飲んだかしら?そうなると体内も大変よね」


 とても同情的な言い方なのだが寛鐘にとっては恐怖でしかなかった。

 外見が絶世の美女である分、微笑みも優しい声色も恐ろしさに拍車をかけるものでしかない。


 寛鐘はどことなく痛みだした腹を押さえて蘭雪に訊ねた。


「何をしたのだ?あの液体の中に何が入っていた!?」


「私が作りだした新種の菌よ。感染主の体をじわじわと蝕んでいくの。でも感染主を殺したら菌も死んでしまうから、完全には蝕まないわ。感染主を生かさず、殺さず、絶妙に調整していくのが、この菌の特徴。どう?結構すごいでしょ?」


 蘭雪の説明を聞きながら寛鐘の顔色がどんどん青くなっていく。


「あ、ちなみに蝕まれた部位は、その髪みたいにブチブチと体から切れていくから。数日後には爪が剥がれて、そのうち指が腐って落ちていくわ。そして少しずつ腕と脚が落ちていくから、数か月後には手足はなくなっているわね。あ、ちなみに痛みはバッチリあるわよ。今は髪だけだから痛みはないでしょうけど、腐った部位も痛みだけは残っているから、そこから針を刺すような痛みが常にあって夜も眠れなくなるわ。知っている?人って長時間睡眠を妨害されると幻覚が見えてくるようになるんですって。あなたは、どこまで正気でいられるかしら?」


 蘭雪の赤い唇が綺麗な三日月の形を作る。黒い瞳を見れば、これが脅しではなく本気であることが分かる。


 寛鐘は痛み出した胃を押さえながら、これから自分の身におこる未来を想像してバタリと気絶した。


「あら、思ったより気が小さかったみたいね」


 倒れた寛鐘を眺めながら蘭雪がつまらなそうに薬が入った小瓶を揺らす。


 そこに今まで黙っていた政繁が恐る恐る声をかけてきた。


「それは解毒剤ですか?」


「そうよ」


 政繁は青い顔で床に転がっている寛鐘を見て、決心したように顔を上げた。


「その解毒剤を下さい」


 政繁の勇気ある申し出に蘭雪が面白そうに黒い瞳を細める。


「どうして?先に紫依に手を出してきたのは、そっちよ。そちらが何もしなければ、こういうことにはならなかった。そうでしょ?」


 挑発的な言い方だが、政繁は素直に頷いた。


「その通りです。私は父がここまでのことを計画していたとは知りませんでしたが、父に代わり謝ります。申し訳ございませんでした」


 そう言って政繁が深々と頭を下げる。その様子に周囲の人たちはざわついたが政繁は気にした様子なく、さっと頭を上げると蘭雪に向けて断言した。


「ですが、これはやりすぎだと思います」


 きっぱりと言いきった政繁に蘭雪が黒い瞳を鋭くする。


「どうして、やりすぎと言えるのかしら?これは、あなたたちが紫依にしようとしていたことよ。本人の意思と関係なく、この里に閉じ込めて自由を奪う。そして力が必要な時にだけ利用して、生かさず、殺さず、ここで生活をさせ続ける。あなたたちは、この菌と同じよ」


「私たちは紫依にこんな痛みと苦痛は与えません」


「そう。なら、痛みと苦痛を感じなくなる薬をあげるわ。それでいい?」


「そ、それは……」


 蘭雪の言葉に誰も反論出来ない。

 政繁が俯いて次の手を考えていると、伊織が蘭雪に声をかけた。


「お灸はそれぐらいで、いいのではありませんか?」


 おっとりとした穏やかな声に全員の視線が集まる。

 突然、現れた救世主にすがるような鬱陶しい視線が多かったが、伊織は可憐に受け流して、にっこりと微笑んだ。


「寛鐘もこれで懲りたでしょう。寛鐘には監視をつけて、不穏な動きがあれば、すぐに知らせるようにします。それで許してもらえませんか?」


 その言葉に蘭雪が困った表情をする。


「紫依のお母様にそこまで言われたら、許さないわけにはいかないわ」


 そう言うと蘭雪は小瓶を政繁に投げた。


「次、紫依に何かしたら解毒剤はないわよ」


 あっさりと解毒剤を渡されたことに慌てながらも、政繁はしっかりと小瓶を受け取った。


「あ、ありがとうございます。父を母屋へ。すぐに、この解毒剤を飲ませるように」


 政繁の指示に寛鐘の側にいた二人組が立ち上がる。そして政繁から小瓶を受け取ると、素早い動きで寛鐘を運んで行った。


 その様子を見ていた蘭雪は自分の仕事が終わったかのように、すがすがしい笑顔で言った。


「じゃあ、帰りましょうか」


 蘭雪の提案に意外にも伊織が待ったをかけた。


「その前に、紬から紫依にお願いがあるそうですよ」


 そう言った伊織の後ろから三十代後半の女性が出てきた。

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