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チート四人組、学校へ行く……からの婿決定戦(副題:どうしてこうなった?)  作者:


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兄、キレる

 クリストファーは穏やかな表情のまま、軽い笑みを浮かべて説明を始めた。


「斬られても即死しない防具を作るために、その手の最新技術と情報を集めたよ。そこから数年以内に実現可能なものに資金と人材を手配して、素材開発をさせたんだ。あとは軍にちょっと情報を流して耐久テストをさせて、問題点を洗い出して改善したよ。そして最高技術と品質の防具を作り上げて、伊織に常に身に付けさせていたんだ。軍はこの防具はコストがかかりすぎるって採用を諦めていたどね」


「そこまで分かっていて耐久テストのために軍を利用したのでしょう?」


 風真の確信を含んだ問いをクリストファーが微笑むだけで流す。


「それから、斬られた後すぐに治療が受けられるように最新の医療施設を建設させたよ。最先端の治療が受けられるように機材とスタッフを集めて、伊織が身に着けている防具が損傷したら、医療セスナが発進して伊織を救出するようにもしたし。あと、施設すべてが緊急体制になり伊織の治療を一番に対応するようにもした。あの頃は時間との勝負でもあったからね。私なりに、かなり色々と動いて準備をしたよ」


 どう考えても一個人ができる範囲を超えているが、風真はそのことには触れずに叫んだ。


「そこまでしたなら、どうして母様が生きていることを教えてくれなかったのですか!」


 爆発寸前の風真に対してクリストファーはなだめることもなく、事務作業のように説明を続ける。


「伊織が見た未来は自分が死んだことになっている未来だ。紫依が母親は死んだと言われて育った先までは死んだことにしていないと、未来が変わってしまうだろう?」


 澄ました顔で言うクリストファーに対して風真は握りこぶしを作った。


「未来を変えたあなたが、どの口で未来を変えてしまうなんて言うのですか?腹が立つので、ちょっと一発殴らせて下さい」


 風真の申し出をクリストファーが爽やかな笑顔で拒否する。


「特別な力を持つ君が私を殴ったらタダではすまないから遠慮しておくよ」


「殴らせろ!」


 怒りに任せて突き進もうとする風真をオーブが止める。


「やめとけ。とりあえず、紫依が見ている前では、やめとけ」


 そこで風真が床に座り込んでいる紫依に視線を向けると、こちらを見上げていた深紅の瞳とぶつかった。


「兄様、どうして父様を殴るのですか?」


 不思議そうにしている紫依を見て風真が拳を下ろす。


「どうしてって……紫依は怒っていないのか?」


「怒る?どうしてですか?」


「だって、母様が生きていたことを黙っていたのだぞ」


「それは母様が見た未来を変えないために必要なことでした。それに父様が兄様にも母様が生きていることを言わなかったのは、兄様を通じて私に母様が生きていることを知られないため、だったのだと思います。むしろ、私のせいで兄様は母様が生きていることを知ることが出来なかったのです。ですので、殴られないといけないのは私のほうです」


 そう自己完結した紫依は腰を上げると風真の前に立った。


「私を殴って下さい」


 堂々と立ちふさがる紫依に、風真は頭を抱えて座り込んだ。


「あぁ、もう。どうしてこうなる?これじゃあ、僕が悪者じゃないか」


「兄様?」


 小首を傾げる紫依の頭を蘭雪が撫でる。


「あぁ、もう、可愛いわね。とりあえず紫依は殴られなくていいのよ」


「ですが……」


 不服そうな紫依に風真が立ち上がりながら声をかける。


「いいよ、もう。とりあえず、この件はあとで父様と二人でじっくり話をするから」


「じゃあ、私は二人にならないようにするよ」


 笑顔で断言するクリストファーに風真が吠える。


「なんで、あなたは人の神経を逆なでするようなことを言うのですか!?」


「自分の身が可愛いだけだよ」


「やっぱり殴る!」


「だから、今はやめとけって」


 オーブが風真を止める姿を見ながらクリストファーが穏やかに微笑む。


 その光景を見て紫依はどこか安堵したように息を吐いたが、そんな紫依の様子に蘭雪が首を傾げる。


「紫依、どうしたの?」


「父様はずっと、どこか苦しそうでした。十年ぶりに父様と会った時も、それからもずっと。それは私に母様が生きていることを悟られないように必死だったからだったのだと、今やっと分かりました。そして、今の父様は本当に嬉しそうで、安心しました」


「そう。でも、まだ問題が残っているわよ」


 完全に忘れ去られた存在となっている、ネバネバおじさんこと寛鐘は事態の展開についていけずに呆然としていた。


 それは寛鐘だけでなく、他の人も同様である。


 口をポカンと開けてクリストファーと風真の親子喧嘩を無言で眺めている。


 蘭雪はその間抜けな光景を見て頷いた。


「今のうちに撤退という選択肢もあるわね」


「ですが、それではまた私を追いかけてくる可能性があります」


「しょうがないわね。とりあえず、とどめを刺しておきましょうか」


 蘭雪は右手を挙げて軽く指を鳴らして、寛鐘を覆っていた粘液が綺麗に消した。


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