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チート四人組、学校へ行く……からの婿決定戦(副題:どうしてこうなった?)  作者:


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大木の上で

 オーブと蘭雪は、隠れ里の敷地内にある大木の枝の上に分かれて座っていた。


「今のところ紫依に変わった様子はないみたいだな」


「そうね。ところで、隠れ里にいるときの紫依って巫女の服を着ているのよね?早く見たいわ」


 まるでアイドルの出待ちをしているような熱心さで蘭雪が母屋を見つめる。


「目的が変わっているぞ」


 呆れたように言うオーブの目の前に笹の葉で包まれた弁当が差し出される。


「すみません。巫女装束は儀式の時にしか着ないので、今は着物なんです」


「だから、巫女の服を見るのが目的じゃないんだって」


「では、何が目的なのですか?」


 蘭雪がオーブと同じように差し出された、笹の葉で包まれた弁当を受け取りながら答える。


「紫依の奪還が目的よ」


「奪還も何も……私は自分の意思でここに来たのですが」


 オーブが笹の葉で包まれた弁当を眺めながら頷く。


「そうだよな。こうして自然に会話に入ってきて、弁当まで差し入れているしな。連れ去られた人間なら、こんなことは出来ないよな」


 オーブと蘭雪が座っている枝より一段高い枝に紫依が座っている。


 蘭雪が紫依から渡された笹の葉弁当を広げて喜んだ。


「可愛らしいお弁当ね」


「簡単な物しか作れませんでした……」


 紫依が恥ずかしそうに言う。その弁当の中身はおにぎりと漬物と焼き魚だ。


「よく周囲の人間に気付かれずに作れたな」


 オーブが感心しながら弁当を食べる。


「みなさん食事中で台所に人はいませんでしたから。私は疲れたということで、早めに上がらせてもらいました」


「そうなの。この魚、美味しいわね」


「漬物も良い具合に漬かっているな」


 弁当を食べる二人を見ながら紫依が訊ねた。


「お二人は、これからどうされるのですか?」


 オーブが指に付いた米粒を食べながら考える。


「んー。とりあえず、ここから様子を見ているよ」


「ここで一晩過ごすのですか?」


 深紅の瞳を大きくする紫依に蘭雪が微笑む。


「別に一晩ぐらい問題ないわ。こういうことには慣れているから」


「あぁ。極寒の中で頭に雪を被ったまま何日も過ごした時と比べたら遥かにマシだしな」


「そうね。熱帯雨林で野外訓練させられた時と比べれば、ここは快適ね」


 蘭雪の言葉にオーブの顔が引きつる。


「湿度と気温が高いのは嫌だなぁ」


「でしょ?それを考えたら、ここは湿度も気温も高くないし、何日でも問題なく過ごせるわ」


「だな」


 二人が勝手に納得しているため、紫依は説得を諦めて空となった笹の葉を回収した。


「無理はしないで下さい」


 蘭雪が安心させるように軽く笑う。


「心配しないで」


「そう、そう。それに紫依はオレたちの心配より自分の心配をしろよ」


「私の……ですか?」


 首を傾げる紫依にオーブが指で自分の右耳を指さす。そこにはワイヤレスイヤホンがあった。


「風真がいい感じに怒っているぞ」


「でも、話は平行線ね」


 蘭雪の耳にもオーブと同じワイヤレスイヤホンがある。


 話が分からず首を傾げる紫依を放置して、オーブが顎に手を置いて考える。


「相手も強気だな」


「下手に権力を持った人間が仲間にいるから厄介なのよね。まあ、風真のお父様のほうが権力というか影響力は上なんだけど、そのことを相手は知らないのね。まったく、井の中の蛙もいいところだわ」


「あ、やっぱり裏に誰かいるのか?」


「後ろ盾レベルだけどね。今回の一連の事件の主導者はここにいる人間よ」


「とりあえず、動くのは明日だな。と、いうわけで紫依は自分の部屋で休みなよ」


 オーブの結論に紫依が少し困ったような顔をする。


「私は全く話が分からないのですが」


「明日になったら分かるわよ。それとも……」


 蘭雪は言葉を切ると、優しく妖艶な笑みを浮かべた。


「添い寝してほしい?」


 その言葉と表情を見た瞬間、紫依の全身に電撃が走った。


「だ、大丈夫です。一人で寝られますので。で、では、おやすみなさい」


 わたわたと木から飛び下り、走って自室に帰って行く紫依を見ながら、蘭雪が微笑む。


「もう、可愛いわね。あんなに可愛い紫依に手を出そうとする身の程知らずは、どうしてやろうかしら……」


 暗い笑みと闇を放出する蘭雪を見ながらオーブが頬杖をつく。


「気配を出しすぎるなよ。気付かれるからな」


「フッフッフッ……明日が楽しみね」


「……聞いてないし」


 呆れるオーブ以外の生き物たちは、蘭雪から放たれる不気味な気配を察して大木から一斉に逃げ出した。

 そのため、この日は虫の音さえも聞こえない静かな夜だったという。


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