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チート四人組、学校へ行く……からの婿決定戦(副題:どうしてこうなった?)  作者:


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転入した理由

 数日前。


 カフェでスカウトされた後、家に帰った黒髪の少女、本名、紫依・シェアード・龍神は同居人に相談をした。


「どう思いますか?」


 紫依の質問にパラパラと台本を眺めていた美女が口角を上げた。


 ショートカットの黒い髪をかき上げながら、黒い瞳を台本から紫依へ向ける。たったそれだけの動作なのだが、長いまつ毛の下で妖艶に輝く黒い瞳と、果実のように瑞々しい唇。それに女性らしい豊満な体型が合わさると、男を誘惑するような、どこか艶めかしい雰囲気が漂う。

 ちなみに本人にとっては至極普通の動作であり、無意識の産物だ。


 そんな色気ただ流しの美女、(ユウ) 蘭雪(ランシュエ)が台本を紫依に返しながら言った。


「面白そうじゃない。やってみたら?」


 反対すると思っていた人物からの思わぬ賛成意見に金髪の少年、本名、オーブ・クレンリッジが驚く。


「いいのかよ?」


「演じることは生きていく中で必要なことだから。今回は演技を学ぶ良い機会だと私は思うわ。それに気配を消して歩いていた紫依を見つけたのだから、必死にこの主役に合う人を探していたのでしょうね。断ったら執念で紫依を見つけ出しそうで、そっちの方が怖いわ」


「確かにな。朱羅はどう思う?」


 そう言ってオーブは足を組んで椅子に座っている銀髪の青年、(しゅ)()・アクディルを見た。


 刀のように鋭く光る銀髪と、宝石のように輝く翡翠の瞳をしており、見た目からして豪華だ。しかも、顔立ちはモデル以上に整っており、眉目秀麗という言葉がピタリと当てはまる一方で、独特の雰囲気を放っている。

 例えるなら、古いアンティークの剣のように落ち着き輝いているのだが、刃はまったく錆びておらず、いつでも相手を斬ることができる強さを秘めている。


 そんな朱羅が翡翠の瞳を紫依が持っている台本に向けた。それだけの仕草で紫依は朱羅の意向を汲み取って台本を渡した。


「どうぞ」


 朱羅は無言で台本を受け取り、パラパラと中身を読んでいく。


「いかがでしょうか?」


 紫依の問いに朱羅が軽く頷く。


「蘭雪が問題ないと判断したのであれば異論はない」


「じゃあ、あとは学校だけね。どんな学校なの?」


 蘭雪の問いにオーブが肩をすくめる。


「調べていて当然のように言うな」


「調べているんでしょ?」


 疑いもしていないような蘭雪に、オーブが困ったように笑う。


「簡単に調べただけだからな。潜入捜査まではしていないぞ」


「概要だけでいいわ」


「まあ、良家の坊ちゃん、嬢ちゃんが通う金持ち学校だな。歴史と伝統を売りにしている。入学しようと思ったら、名家、もしくは名が知れた金持ちや、芸術家でないと無理だ」


 そう言うと、オーブは蘭雪に学校の資料を渡した。


「ふーん」


 興味なさそうに資料を眺めていた蘭雪の手が止まる。


「ここ、良いわ!いっそのこと転入すればいいのよ!そうしましょう!」


 そう決定した蘭雪の手元の資料は、制服写真のところで止まっていた。


 この学校の制服を着た紫依の姿を見たいがために、蘭雪は敷居が某タワーより高いと言われている学校への転校手続きをあっさりと済ませた。

 しかも、紫依一人では心配だからと、フォロー役としてオーブを美少女に変装させて名前を変えて留学生として一緒に転校させた。






 紫依が桜葉に尋問されている光景を眺めながら、オーブは誰にも聞こえない小声でぼやいた。


「本当、こういうことの手際はいいよな」


 そこに突然、桜葉が視線を向けてきた。

 オーブは顔に張り付けていた笑顔を外して、ムーンライトブルーの瞳を大きくする。すると、その表情を見た桜葉は残念そうにため息を吐いた。


「外見だけなら、あなたでも良かったんだけど、やっぱり感情が豊かだとダメなのよね」


「いや、その前に日本語がうまく話せないから」


 冷泉院のツッコミに桜葉がますます残念そうな顔をする。


「本当に残念……って、そういえば、この前会った時、あなたにそっくりな男の人がいたけど兄弟?」


 桜葉の質問に、オーブが少女にしか見えない微笑みで答える。


「はい。私の兄、私とそっくりです。兄は日本語とても上手。けど英国に帰ったです。私はもっと話したい。だから、残ったです」


 たどたどしい日本語だが、わざとらしさはなく、もっと話せるようになるために留学したという印象を与える。


 そんな留学生を完璧に演じているオーブを冷泉院が目を丸くしながら見た。


「こんな顔をした男がいるのか。すごいな」


 感心している冷泉院の背中を桜葉が叩く。


「今回の劇はこれでいくわよ。この学校の生徒が主役をするんだから、顧問に文句は言わせないわ!」


「はい、はい」


 桜葉は演劇について一度言い出したら他人の意見など聞かないため、冷泉院は諦めたように頷いた。


 そんな二人に紫依が微笑む。


「ところで、お二人の名前を教えていただいても、よろしいですか?」


 そこで二人は自己紹介をしていなかったことに気が付いた。


「そういえ、まだ名前を言っていなかったわね。私は桜葉 穏月よ。よろしくね、龍神さん、エンフィールドさん」


「おれは冷泉院 武瑠だ。よろしく」


 二人の名前を聞いて紫依とオーブが頷く。


「桜葉さんと冷泉院さんですね。こちらこそ、よろしくお願いします」


 演劇部の部長と副部長が転校生と留学生を独占したまま休憩時間は終わり、他のクラスメイトから睨まれたとか睨まれなかったとか。

 人の視線に敏感なオーブは、そのことに気が付いていたが素知らぬ顔で可憐に無視した。


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