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チート四人組、学校へ行く……からの婿決定戦(副題:どうしてこうなった?)  作者:


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紫依の失踪

 翌日。

 オーブが文化祭で浮かれている学校に入り、一直線に劇が行われるステージに行くと桜葉が飛びついてきた。


「エンフィールドさん!龍神さんは!?まだ調子が悪いの?」


 桜葉の言葉にオーブが耳を疑う。


「え?紫依、劇の練習ある。早く家、出た」


 練習が出来なかったからと紫依はオーブより先に一人で家を出ていた。だが、必死の形相になっている桜葉の様子を見ると紫依はまだ来ていないらしい。


「あぁ、最後の打ち合わせとか、まだ残っているのに!龍神さん、どこにいるのよー!」


 高い天井に向かって叫ぶ桜葉を放置してオーブは慌てて出て行った。


 オーブは非常階段を駆け上がって校舎の屋上に来ると携帯電話を取り出した。


「紫依が行方不明になった。そっちで居場所が分かるか?」


 オーブからの突然の連絡に電話口から急ブレーキの音が響く。

 学生という立場から徒歩で通学しているオーブ、紫依、朱羅とは違い、蘭雪は保険医という立場から車通勤していた。


『どういうことよ!ちょっと、待って。すぐに家に引き返すわ』


「朱羅は?」


『徒歩で学校に行っている途中よ』


「わかった。蘭雪はそのまま家に帰ってくれ」


 オーブはすぐに電話を切ると朱羅にかけた。


「紫依が行方不明だ」


 こちらの言葉も待たずに出た内容に朝が弱い朱羅の頭が一気に覚醒する。


『どういうことだ?』


「紫依が学校に来ていない。簡単に調べたが学校の敷地内にすら入っていない。紫依の性格からして劇をすっぽかすとは考えられない。事件か事故に巻き込まれたとしか思えない」


『紫依の現在地は?』


「蘭雪が家に帰ってから調べる。お前には学校から家までのルートを調べてほしい。何か手がかりがあるかもしれない」


『わかった。何かあったら連絡する』


 オーブは電話を切って頭をかいた。


「あれだけ劇を優先していた紫依がいなくなるなんて只事じゃあないぞ。劇が始まるまでに見つけられるか……それとも先に対応しておくか……」


 悩んだオーブは結論を出して力強く頷いた。




 オーブがステージに戻ると姿を現さない紫依に対して部員たちが心配そうに話をしていた。


「やっぱり無理だったんじゃあ……」


「昨日の今日だし……」


 暗い雰囲気の中、桜葉だけはイライラしていた。


「どうして……あんなに良くなっていたのに……」


 まるで檻に入れられた猛獣のように同じところをグルグルと歩き回る桜葉の肩をオーブは恐れることなく叩いた。


「何!?」


 八つ当たりに近い怒鳴り声を正面で受けながらオーブはにっこりと微笑んだ。


「部長、話ある」


 そう言うとオーブは有無を言わさずに桜葉を引きずって行った。そうしてオーブが桜葉を連れてきたのは化粧道具や衣装が収められている控室だった。


「何?どうしたのよ!?」


 暴れる桜葉をオーブは無理やり椅子に座らせた。


「紫依、体悪い。劇、出られない」


「なんですって!?」


 立ち上がろうとする桜葉をオーブが押さえつける。行動とは逆に可憐な笑顔で桜葉に話しかけた。


「だから、私、あなたに魔法かける。あなた、これから人形なる」


「は?何を言って……」


 騒ぐ桜葉にオーブは思わず素の声で呟いた。


「うっさいなぁ」


 その言葉と同時に桜葉を気絶させると、オーブは化粧道具を手に持った。


「さっさとやるぞ」


 部長まで姿を消したため部員たちに動揺が広がり始めた頃、オーブが冷泉院に声をかけた。


「紫依、体悪い。劇できない。部長、代わりやる」


「本当か!?でも、よく桜葉が納得したな」


 驚きながらも喜ぶ冷泉院にオーブが少し困ったように微笑む。


「部長、ドレス一人で着られない。手伝ってほしい、言っている」


「わかった。真田、雪城、手伝ってきてくれ」


「はい」


「了解」


 女子部員が控室に行く様子を見ながらオーブはひっそりと姿を消した。




 真田と雪城が控室に入ると椅子に座ったまま桜葉が寝ていた。


「もう、何寝ているのよ!」


「早く準備しないと劇が始まるわよ」


 二人の声に桜葉が目を開ける。


「あれ?私、寝ていたの?」


 無意識に顔をこすろうとする桜葉の手を真田が止める。


「綺麗に化粧をしているんだから、触ったらダメよ」


「は?化粧?」


 そう言って桜葉が目の前にある鏡を見ると、そこには見たことがない自分がいた。


「……なに……これ?」


 思わず鏡に近づいてマジマジと自分の顔を覗きこむ。

 普通の大きさだった目はアイラインと付けまつ毛によってパッチリとした目になっている。特徴的だったそばかすはファンデーションで綺麗に隠されて、顔立ちに合わせて微妙につけられた陰影によって目鼻立ちがくっきりとしている。


 化粧によって完璧に作られた顔は、どことなく人形のようにも見えた。


「これなら人形役も完璧ね」


 雪城の感想に真田が頷きながら金髪のウェッグを取り出した。


「これを付ければ、もっと完璧よ。さ、早く衣装に着替えて」


 何が起きているのか把握できていない桜葉に真田と雪城がドレスを着せていく。


「やっぱりドレスの丈が長いわね」


 真田の言葉に雪城が頷く。


「とりあえずピンで裾をあげたらいいわ。劇の間だけもてばいいのだから」


「そうね」


 テキパキと動く二人によって人形役の姿になった桜葉はいつの間にか部員たちの前へと連行されていた。


 見事な人形となった桜葉に部員たちから歓声が上がる。


「部長!すごいじゃないですか!」


「これなら問題なしよ!」


「一時はどうなるかと思いましたけど、これなら大丈夫そうですね」


 落ち込んでいた雰囲気が消え去り、部員たちが明るくなる。そんな中、一人置いてきぼりになっている桜葉に冷泉院が声をかけた。


「いつもの情熱はどうした?劇を成功させるんだろ?それとも、父親に無様な劇を見せるのか?」


「無様……そんな劇にはさせないわ!」


 叫んだ桜葉に周囲の視線が集まる。だが、その視線は奇異なものを見るのではなく、ほっと安心したようなものだった。


「やっぱり部長はこうでないと」


「あんまりにも美人になったから性格まで変わったのかと思ったわ」


「本番まで、あと十分!」


 その声に桜葉は腹をくくったように言った。


「仕方がない。私が人形役でいくわ。でも、練習不足で間違えることがあるかもしれないけど、いい?」


「そこは、みんなでフォローするさ」


 冷泉院の言葉に全員が頷く。その光景に桜葉は思わず出そうになった涙をぐっと堪えた。


「わかった。みんな、お願いね。舞台の最終チェックはいい?」


 桜葉はドレスの裾を持ち上げて歩きながら指示を出していった。そして、劇は時間通り幕を開けた。


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