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チート四人組、学校へ行く……からの婿決定戦(副題:どうしてこうなった?)  作者:


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鬼ごっこの終わり

話が過去から現在に戻ります。

 狭い保健室で激闘を繰り広げていた朱羅と蘭雪の動きに変化が起こる。


 朱羅の腕の中で熟睡していた紫依が少し動いたのだ。そのことに気を取られた朱羅の動きが一瞬鈍る。

 その隙に蘭雪が紫依へ手を伸ばした。そのまま紫依を奪い取れる、というところで紫依の大きな瞳が開く。その瞬間、光速並みの動きをしていた二人がピタリと止まった。


 朱羅が無言で様子をうかがっていると、紫依がまだどこか眠そうな瞳で訊ねた。


「……朱羅?髪の色がいつもと違いますが……どうされたのですか?」


 明らかに寝ぼけている紫依を抱きかかえたまま、朱羅がゆっくりと声をかける。


「学校に通うのに目立たないよう茶色にした。忘れたのか?」


「……学校?……そうでしたね、思い出してきました。ところで、ここは何処ですか?」


 周囲を見回している紫依に朱羅が説明をする。


「保健室だ」


「保健室?えぇっと……保健室というのは学校にある部屋のことですよね?私はどうして保健室に……あ、劇の練習は?私はどうして眠っていたのですか?」


 ようやく頭が覚醒した紫依に蘭雪が微笑みかける。


「最近、頑張っていたから疲れが出たのよ。今日は練習しなくていいから帰って休みましょう」


「ですが、明日が本番なので今日練習しないと……」


 朱羅の腕から床に降りた紫依の頭を蘭雪が撫でる。


「練習はもう十分したわ。今は休むことを優先しなさい」


「そういうわけには……」


 蘭雪が紫依の頭を撫でていた手を頬に移して、にっこりと笑った。


「本番で倒れたら、それこそ大変でしょ?まあ、倒れたら私が体のすみずみまで看病してあげるけど」


 その言葉に紫依の体が硬直する。本能が危険だと警鐘を鳴らすが蛇に睨まれた蛙状態で動けないのだ。


 氷のように固まってしまった紫依を、朱羅が後ろにあったベッドまで移動して座らせる。そしてベッドから離れると仕切りのカーテンを閉めて外に出た。


「とりあえず着替えろ。制服はそこのカゴの中に置いてある」


「あ……はい」


 紫依がカーテンの裏で着替えを始めると蘭雪が残念そうに言った。


「私が着替えさせたかったのに」


「いい加減、諦めろ」


「そうね。今日のところは諦めましょう。お楽しみは次の機会にとっておくわ」


 そう言って蘭雪がオーブのところへ歩く。その後ろ姿を見ながら朱羅は次の機会が永遠にこないようにすることを決意した。


 そこにカーテン越しに紫依が話しかけてきた。


「あの、私はどうなったのですか?劇の練習をしていたところから記憶がないのですが……」


「どこまで覚えている?」


「最後の場面の練習をしていたところまでは覚えているのですが……」


 記憶がフラッシュバックした時のことを覚えていなさそうな紫依の様子に、朱羅が意見を求めて蘭雪に視線を向ける。


 蘭雪はオーブが淹れたお茶を飲みながら紫依に説明をした。


「昔の記憶がフラッシュバックして混乱していたのよ。感情が暴走する危険があるから防衛機能が働いて、その時の記憶を消去したのだと思うわ」


「昔の記憶……ですか?」


 制服に着替えた紫依がカーテンを開けて出てくる。


「そう。昔と言っても前世ではないわ。紫依の子どもの頃を記憶よ。またフラッシュバックしたらいけないから詳しくは話さないけど」


「そうですか」


 俯く紫依の頭を朱羅が撫でる。


「とりあえず帰って休もう。劇の方は部長が主役の代役をして練習をしているから問題はない」


「桜葉さんが……みなさんにも、ご迷惑をかけてしまいました」


 さらに俯く紫依にオーブが軽く声をかける。


「気にするなって。あの劇だって本当は部長が人形役をやったほうが良いって紫依も思っているんだろ?」


「はい。部員のみなさんと桜葉さんとの強いつながりを見ると、私より桜葉さんが人形役をしたほうが、ずっと良い劇が出来ると思います」


「なら練習は問題なく進むさ。紫依は明日にそなえて休むこと。衣装はオレが返しておくから、さっさと帰りな」


 少年の声と口調のまま美少女にしか見えないオーブが安心させるように笑う。その姿に紫依も少し笑って頷いた。


「わかりました。では、先に帰りますね」


「あとは任せたぞ」


 保健室を出て行く紫依の後ろに当然のように朱羅が付く。そんな二人を蘭雪は軽く笑って見送った。


「お姫様を護衛する騎士ってところかしら」


「実力的には護衛もいらない強者の姫様だけどな」


 そう言ってオーブは苦笑いをすると茶器を片づけた。


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