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チート四人組、学校へ行く……からの婿決定戦(副題:どうしてこうなった?)  作者:


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交流

 次に目覚めた時、紫依は隠れ里の(おさ)である祖母から説明を受けた。


 紫依の力は特殊で強すぎる。そして、その力のために紫依は狙われ、伊織は紫依を庇って亡くなった。

 隠れ里にいれば簡単には紫依を見つけ出すことは出来ない。だが、いずれは見つかってしまう可能性があるため、その時にそなえて紫依が自分で力を制御できるようになり、自分を守るための技術を身に付ける必要がある。


 この事実は六歳の紫依には重く辛いものであった。


 自分が原因で……そう考えるだけで、紫依は体の中に封じた力が暴走しかけることもあった。


 そんな紫依に周囲の大人たちは優しく接しようとしたが、強すぎる力を前にすると自然と距離を取っていた。そのことを感じとっていた紫依も、どことなく距離を取っていた。


 風真はクリストファーに紫依の状況を知らせるため隠れ里から出ていき、一人残された紫依は部屋にこもるようになった。





 そんな、ある日。紫依の部屋に男の子が訊ねてきた。


 その子は同じ年齢ぐらいで無遠慮に大きな声で紫依を遊びに誘った。


「いい天気だぞ!外に行こう!」


 そう言って右手を差し出してきた男の子の顔を紫依は黙って観察した。


 丸い大きな瞳に肩まで伸びた髪を一つにまとめて結んでいる。明るい笑顔に活発な声は元気な普通の男の子だった。


 だが今まで同年代の子と交流をしたことのない紫依は黙って首を横に振った。


「どうしてだよ?家の中より外の方が楽しいぞ!」


 男の子は紫依の手を掴もうと右手を伸ばした。


「イヤ!」


 紫依の叫び声と共に一陣の風が男の子の掌を切り裂いた。


「え?うわぁ!血が出ている!いてっー!?」


 ダラダラと血が流れる右手を見て男の子が叫ぶ。その様子を見て紫依は慌てて立ち上がり走り出した。


「おばあさまー!大変です!」


 紫依と男の子の叫び声に大人たちが集まり、すぐに傷の処置がされた。





 紫依は自分の部屋で祖母に事の顛末を話していた。他は誰もおらず二人きりだ。


「わかりました」


 深く頷く祖母の前で紫依は小さく正座していた。怒られることを覚悟しているため、顔は俯いている。


「紫依」


「は、はい」


 俯いたままギュッと目をつぶる紫依の頭に優しく手が乗せられた。


「よく出来ました」


「え?」


 予想外の言葉に紫依が顔を上げる。すると祖母が困ったように微笑んでいた。


「あなたはこれから自分の身を自分で守らなくてはいけません。あなたの身を害そうとする者、それが子どもでも大人でも、知っている人でも知らない人でも、あなたを傷付けようとした時点で攻撃をしなさい。あなたの体を傷つけさせてはいけません」


「ですが、先ほどの子は私を傷つけようとしたわけではありませんでした」


「そうですね。ですが、あなたの意を無視して、どこかに連れて行こうとした。そのことに、あなたが危険だと判断したのであれば攻撃しても良いです。それが、あなたを守ることになるのですから」


 腑に落ちない顔をしている紫依に祖母が言葉を続ける。


「伊織……あなたの母が命懸けであなたを守りました。あなたはその想いに応えないといけません」


「母様の……想い?」


「そうです。その想いに応えるため、あなたは自身を守り抜かなくてはなりません。それに、もう少し効果的な攻撃と防御方法を学ばなければいけませんね。それと相手の戦意を削ぐ方法と、相手が何故あなたを狙ったのか聞き出す方法も」


「……」


 無言で首を傾げる紫依の頭を祖母がもう一度撫でる。


「今は分からなくても良いです。徐々に分かっていくでしょう。あなたは、あなたが思っている以上にその身を守らなければならないのです。その時がくるまで」


「その時とは、いつですか?」


 紫依の質問に祖母が少し悲しそうに微笑んだ。


「もう少し先のことです。それより今は今しないといけないことをしましょう」


「あの……では、私はこれから謝りに行かないといけないと思います。やはり、あの子は何も悪くありませんから」


 紫依の言葉に祖母は嬉しそうに微笑みながら襖の外に声をかけた。


「だ、そうですよ」


 襖を開けて先ほどの男の子と女性が入ってきた。男の子は先ほど紫依が傷つけた子だった。


「あっ」


 紫依が何かを言おうとしたが、男の子はそっぽを向いて視線を合わそうとしない。拒絶されたと感じた紫依は両手を握って俯いた。

 強く握り微かに震えている紫依の両手を、綺麗な手がそっと優しく包み込む。


 紫依が驚いて顔を上げると男の子と一緒に入って来た女性が優しく微笑んだ。


(けん)()が無理強いをして、ごめんなさい。ほら、憲護も謝りなさい」


 女性に促されて、そっぽを向いていた男の子が紫依の前に座った。だが顔は不貞腐れたように頬を膨らましている。


 そんな男の子の顔を女性は両手で挟むと無理やり紫依の方へ顔を向けた。


「何すんだよ!」


 怒る男の子に女性が厳しく言う。


「無理をしてはいけないという約束を破ったのは誰ですか?あなたは紫依を怖がらせたのですよ?そのことについては、きちんと謝りなさい」


 女性の言葉に男の子は言葉を詰まらせた後、バツの悪そうな顔をしながら頭を下げた。


「ごめん」


 一連の流れを茫然と見ていた紫依は男の子が頭を下げたので、慌てて自分も頭を下げた。


「あ、いえ、こちらこそ怪我をさせてしまい、すみませんでした」


 その様子に女性が二人の頭を撫でる。


「では、これで仲直りできましたね。憲護、女の子に無理強いは駄目ですよ」


「……わかった」


「言葉使い」


 冷めた黒い瞳に睨まれた男の子は慌てて姿勢を正すと慇懃に言い直した。


「わかりました」


「……良いでしょう。紫依、私はあなたの母の妹で(つむぎ)と言います。姉さまの代わりはとても務まりませんが、何か困ったことがあれば、いつでも言って下さい」


「母様の妹?」


「はい」


 そう言って笑った姿は母と雰囲気が似ている。紬は男の子に視線を向けて説明をした。


「この子は私の息子、憲護です。紫依の従弟ですよ」


「いとこ?」


「えぇ」


 紫依は頷く紬を見た後、憲護に視線を移した。憲護は大きな深紅の瞳に見つめられて体を引いている。


「な、なんだよ?」


「いとこ、とは何ですか?」


 紫依の発言に紬が脱力したように笑った。


「まだ六歳ですからね。知らないことの方が多いでしょう」


 そう言うと紫依に従弟について説明をした。



 それから紫依は少しずつ憲護と遊ぶようになり、徐々に寂しいと感じなくなっていった。それは隠れ里の環境に慣れてきたこともあったが、感情が鈍くなっている方が強かった。

 そして皮肉なことに、感情が鈍くなっていくことで力が暴走することも少なくなり、制御が出来るようになっていった。


 それでも紫依は隠れ里に暮らす人々と、どこか距離を取っていた。自分の力で傷つけないため、不必要に触れないように、そして触れられないように。常に一歩引いたところにおり、無表情でいることが多かった。


 それでも紫依にとっては安定した日々が続いていた。


 だが、十年後。それは突然の襲撃によって崩れた。


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