尋問
休憩時間。
クラスメイトが転校生と留学生を取り囲もうとしたが、その前に桜葉が二人の前で仁王立ちしていた。その姿には鬼気迫るものがあって誰も近づけない。
唯一の例外は、その鬼気迫る姿を舞台で間近に見ている冷泉院だけだった。
冷泉院を隣に控えさせたまま桜葉が質問をぶつける。
「どうして、ここにいるの!?これは夢なの!?あなたは、あの時の人よね?」
徐々に黒髪の少女に詰め寄る桜葉を、冷泉院が肩を掴んで物理的に止める。
「落ち着け。何をそんなに興奮しているんだ?」
止められたことで桜葉は標的を冷泉院に変更して詰め寄った。
「落ち着け!?落ち着いていられるわけないでしょ!これが!これが、どういうことか分からないの!?」
「わからん」
冷静な返事に桜葉が悔しそうに頭をかきむしる。そこに黒髪の少女が軽く微笑んだまま口を挟んだ。
「とりあえず、質問にお答えしますね。私はこの学校に転校してきたので、ここにいます。あと、これは夢ではないと思われます。私はこの前、カフェの近くであなたに声をかけられて携帯の電話番号を渡された人です」
事務的に淡々と話す黒髪の少女を見て、桜葉が感動したように両手を胸の前で合わせた。
「もう、ピッタリ。今回の劇の主役はあなた以外に考えられないわ」
瞳を輝かせている桜葉の隣で、冷泉院が疑惑的な目を黒髪の少女に向ける。
「確かに主役にはピッタリだけど、どうしてこの学校に転校できたんだ?相当なコネがないと転校してくるなんて出来ないぞ」
黒髪の少女が軽く首を傾げる。
「私はそのいうことは良く知らないのですが……ここの理事長にオリビィアの留学先を探していると相談したら、快く受け入れてもらえた。と、お聞きしました」
「なんだ。理事長の知り合いか」
納得したように頷く冷泉院に対して、桜葉は黒髪の少女に顔を近づけた。
「そういえば初めて会った時と目の色が違うわね」
桜葉が黒髪の少女と初めて会った時の瞳は、そう簡単には忘れられないほどの見事な深紅だった。血よりも濃く、紅葉よりも鮮やかで、その色は記憶に鮮明に残っている。それが、今の少女の瞳は漆で塗られたかのように黒い。
そんな桜葉の記憶を知ってか知らずか、黒髪の少女は表情を変えることなく説明をした。
「あの時はカラーコンタクトをしていたのです。新商品のモニターをしてほしいと頼まれましたので」
「そうなの?でも初めて会った時の色のほうが、より人形っぽいわ。そのコンタクトはまだある?劇の発表会の時はそのコンタクトをして役を演じて」
桜葉の指示に冷泉院が呆れたように言う。
「舞台なんだから、観客に目の色なんて分からないだろ」
それ以前に黒髪の少女は主役を演じると一言も言っていない。だが、誰一人として、そのことには触れない。
金髪の少女はこの光景を笑顔で眺めながら、内心では数日前のことを思い出していた。




