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チート四人組、学校へ行く……からの婿決定戦(副題:どうしてこうなった?)  作者:


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親ばかズ

 こぢんまりとしたリビングでは、着物を着た女性がテーブルの上にお茶を並べていた。


「こんにちは。お久しぶりですね」


 笑顔で迎えた女性に綺羅も笑顔で答える。


「久しぶりだね、伊織ちゃん。オーストラリアでも着物なんだ」


「私はここが何処かはよく知りませんが、この格好が落ち着くので着ています」


「そうか。伊織ちゃんらしいね」


 そこに少年が砂糖の入った瓶を持ってきた。


「母様、どこに置きますか?」


「それはテーブルの真ん中に置いて」


「はい」


 利発そうな少年の姿に綺羅がクリストファーを横目で見た。


「素直そうな子だな。誰かさんとは大違いだ」


「私と伊織の子だ。当然だろう」


 そこに少年が綺羅の前まで来て頭を下げた。


「風真・シェアード・龍神といいます」


「しっかりしているな。おじさんは綺羅・アクディルだ。よろしくな、風真」


 綺羅が差し出した右手を風真がしっかりと握り返す。そして手を放すと一礼して手伝いに戻った。


「本当にしっかりした子だな。で、もう一人は?」


 綺羅が室内を探すと、皿を運んでいた女の子が素早く伊織の後ろに隠れた。


「恥ずかしがり屋なんだな」


 そう言うと綺羅はその場に屈んで女の子と視線を合わした。


「ほーら、おじさんは怖くないぞ。おじさんは魔法使いなんだ。ほら、見ていてごらん」


 綺羅は力をこめて両手を合わせる。その姿を女の子が母の後ろから、そっと覗き見た。


「はい!」


 綺羅の掛け声と同時に開かれた両手からゾウのぬいぐるみが現れた。


 キョトンとしている女の子に綺羅がゾウのぬいぐるみを差し出す。


「持っていて。次はね……」


 女の子は渡されるままゾウのぬいぐるみを受け取る。

 綺羅は空いた右手を左手の袖の中に入れて、何かを探すようにごそごそした後、パッと引き抜いた。すると、そこにはキリンのぬいぐるみがあった。


 綺羅は呆然としている女の子にキリンのぬいぐるみを渡すと、今度は右手を胸ポケットの中に入れた。


「どんどん出てくるぞ……ほら!」


 あらゆる場所から次々と出てくるぬいぐるみを見て、最初は緊張していた女の子の顔が笑顔になっていく。


 その光景を眺めながらクリストファーは呆れたように言った。


「君はよっぽど暇なんだな。それとも手品師に転職したのかい?」


 綺羅はぬいぐるみで両手が一杯になった女の子の頭を撫でて立ち上がった。


「暇じゃあないよ。ただ、うちの三男坊が遊んでくれないからさ。手品をしたら喜んでくれるかと思って勉強したんだ」


「で、成果は?」


「……聞かないで」


 そう言って綺羅はテーブルにうつ伏せた。


「まあ、タネを全て見破られた上に、相手にされなかったってところだろう?」


 クリストファーの言葉に綺羅がワザとらしくシクシクと泣き声を出す。


「わかっているなら言うなよ」


「子ども騙しのようなことをする君が悪いんだろ。なかなか賢い子どものようだからな」


 クリストファーからの我が子への褒め言葉を聞いて、綺羅が満面の笑みで顔を上げる。


「だろ?さすがアクセリナの子!って感じだろ!?」


「君の子ではないのか?」


「もちろん、おれの子だよ!おれとアクセリナの子!で、うちの三男坊……朱羅がこの子を探しているようなんだけど、ここにいるって言ったらダメなんだよな?」


 確認する綺羅にクリストファーが真剣に頷く。


「あぁ。自力で見つけ出すまでは絶対に言うな」


「もし、ずっと見つけられなかったら?」


「その程度だった、ということだろ。それに、これぐらい自力で見つけ出せないようなヤツに大事な紫依を任せるなどできない」


「あ、紫依ちゃんって言うんだ。可愛いね」


 綺羅の笑顔に紫依も笑顔で答える。すっかり警戒心は解けたようだ。


 そんな紫依を綺羅は少し悲しそうな顔で見た後、視線をクリストファーに戻した。


「でも、守りきれるのか?何かあれば隠れ里に連れて行かないといけないんだろ?それなら朱羅と一緒にいたほうが……」


「綺羅」


 珍しく名前を呼ばれて綺羅が黙る。クリストファーは深紅の瞳でまっすぐ綺羅を見つめたまま言った。


「わかっている。自分でした誓約だ。それは守る。だが、その前に私でも出来ることはある」


「けど、隠れ里に紫依ちゃんを連れて行ったら、簡単には会えなくなるぞ」


「それも承知の上だ」


「それなら、なおさら……」


 しつこく食い下がる綺羅を止めるように、伊織が微笑みながら二人の間に入った。


「子どもの前で難しい話は止めましょう。紫依がこんなに早く初対面の方と打ち解けるなんて珍しいのですから。さあ、みんなでクリフが焼いたクッキーを食べましょう」


 伊織の言葉に綺羅がテーブルの上にあるクッキーを指さし、次にその指をクリストファーに向けた。


「……クリフがお菓子?いつの間に、そんなものが作れるようになったんだ!?熱でも出たか!?明日は嵐か!?台風か!?槍が降ってくるのか!?」


 驚愕の表情で叫ぶ綺羅にクリストファーは蹴りを入れた。その反動で見事に飛んだ綺羅の姿に子どもたちは笑った。


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