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チート四人組、学校へ行く……からの婿決定戦(副題:どうしてこうなった?)  作者:


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転校生

 新学期。桜葉は頭を抱えて自分の席に座っていた。

 教室の中でも後方で窓際の席であり、桜葉自身あまり目立つ容姿ではないため、その様子をあまり気にする人もいない。


「なんで、みんな頭が固いのよ」


 桜葉はすぐに顧問に主役の変更を伝えたが、あっさりと却下された。部外者を校内に入れるわけはいかない、ましてや伝統ある文化祭の劇の主役をさせるわけにはいかない、と言うのだ。

 ならば、と理事長に直接交渉したのだが答えは同じだった。


「あんなにピッタリの人はいないのに!」


 歯ぎしりをしそうな桜葉に、明るい声がかけられる。


「おはよう、桜葉。まだ諦めていないのか?」


 同級生にして演劇部の副部長をしている冷泉(れいせん)(いん) 武瑠(たける)が桜葉の前の席に座った。


 サラサラの黒髪に涼しげな黒い瞳で、和風の整った顔立ちをしている。少年ながらも、どこか中性的で、演技をすると年齢より大人びた色香が漂い、舞台映えする。両親が舞台役者をしているため、冷泉院は幼い頃より舞台に立っていた。

 現在は学業を優先したいという理由で舞台には立っていないが、部活で役を演じていると女生徒から黄色い歓声が飛んでくることがある。


 桜葉は握りこぶしを作って冷泉院を睨んだ。


「当然よ。冷泉院だって、あの人を見れば分かるわ」


「だけど、文化祭まで二カ月を切っているんだぞ。いまさら主役を変えて劇が成功するのかよ?」


「そこは私が指導するから大丈夫よ!」


「指導でどうにかなるレベルの人間だったらいいな」


 世の中には大根役者という言葉があるのを知っているか?と冷泉院は言いたかったが堪えた。これ以上、劇について何かを言うと火に油を注ぐことになることを、今までの付き合いから知っている。


 桜葉はおとなしくてクラスでも目立たない存在だが、演劇が関わると、それが豹変する。

 父親が新進気鋭の劇作家と呼ばれており、関係者の間では、その名を知らない人がいないほどの有名人だ。そんな父親が手掛ける舞台を幼い頃から見てきた桜葉は将来、父親と同じ道に進むことを決めている。


 そのことを知っている冷泉院は桜葉の頭を冷やすためにも話題を変えた。


「そういえば二年と三年に転校生と留学生が来るんだって」


「……留学生……外人……人形みたいな外見……あぁ、でも、やっぱりあの人以外に主人公は考えられない」


 再び頭を抱えて机に伏せる桜葉を見て、冷泉院は諦めたようにため息を吐いた。


「ダメだ、こりゃ」


 そこに始業を告げるチャイムが鳴った。

 立ち話をしていた生徒たちが一斉に自分の席に座る。全員が黒板の方を向いて綺麗な姿勢で座っていると、教室のドアが開いて担任が入ってきた。


 いつもなら担任が一人で入ってくるのだが、この日は違った。後ろに二人の女生徒を連れている。

 良家の紳士、淑女となるべく育てられている生徒たちは、そうそう騒いだりしないのだが、この時ばかりは教室全体がざわついた。


 長い黒髪を持つ少女は大きな黒い瞳に筋が通った鼻と小さな口をしており完璧に造られたような顔をしていた。そして、その後ろには鼈甲(べっこう)のように艶やかな金髪を(なび)かせた少女が、自分より背が低い黒髪の少女の後ろに隠れるように教室に入ってきた。


 生徒たちがなかなか落ち着かないため、担任は少し大きめの声を出した。


「静かに。転校生と留学生を紹介する。自己紹介を」


 担任に促されて黒髪の少女が微笑みながら口を開いた。


「龍神 紫依(しい)です。よろしくお願いします」


 そう言って頭を下げる。その動作に数人から軽く感嘆の声があがった。

 紫依はただ一礼をしたように見えたが、見る人が見れば、その動作は洗礼されており日本文芸に精通していることが分かるものだった。そして、そのことを見抜くことが出来るだけの眼を持つ人間が、この学校には生徒でいるのだ。


 次に黒髪の少女の後ろに隠れるように立っていた金髪の少女が、恥ずかしそうに声を出した。


「オリビィア・エンフィールドです。日本語は……難しいです。あまり話せません。教えて下さい」


 片言の日本語を頑張って言いましたという表情でそのまま頭を下げる。

 ゆるくウェーブがかかった長い金髪が少女の顔を隠した。その一生懸命さがにじみ出ている姿に自然と拍手が上がる。


「エンフィールドは龍神の家にホームステイをしている。その関係で二人は同じクラスになった。みんな、仲良くするように」


 担任は決まり文句を言うと教室の後ろを指さした。


「龍神は桜葉の知り合いだそうだな。席は桜葉の後ろでいいだろ。エンフィールドはその隣だな」


「はい。ありがとうございます」


 黒髪の少女が颯爽と歩いて桜葉に近づく。一方の桜葉はこれでもかというほど大口を開けて驚いた顔のまま硬直していた。


 黒髪の少女が桜葉の隣を過ぎ去るときに、そっと囁いた。


「あとで、お話しますね」


 その言葉に慌てて桜葉が後ろを振り返ると、黒髪の少女は何事もなかったように自分の席に座った。その隣には、どこか安心したような顔で金髪の少女が座っている。


「紫依の隣。良かった」


 金髪の少女の言葉に、黒髪の少女が微笑みだけで答える。


 桜葉はすぐにでも話をしたかったがホームルームが始まったため渋々、諦めて前を向いた。


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