ハーメルンの笛吹
街中に出た二人は普段なら気配を消して歩くのだが、今日はオーブからの指示で普通に歩いていた。
すると、すぐに二人は注目の的となった。
すれ違いざまに二度見する人もいれば、そのまま回れ右をして二人の後ろをついて行く人もいる。ほとんどは二人が何処へ行くのかという興味半分と、美少女をつれている青年の長い前髪で隠れた顔見たさである。
そんな人々の中には、学校で見かけたことのある生徒の顔もあった。噂を聞いて二人の姿を確認に来たのだろう。
こうしてハーメルンの笛吹(後ろに大勢の人を引きつれた)状態を作りだした二人は、そのことを気にすることなく目的の店へと一直線に向かった。
「あ、ここです」
紫依はクラスメイトに教えてもらったクレープ屋さんを指さした。
そこはクレープ屋というにはお洒落で、パリやローマのカフェを連想させる外観をしていた。
「ここのクレープは他のお店とは少し違うそうですよ」
「ほう?」
朱羅が興味深そうにメニューが書かれている看板を見る。
ライチやココナッツなど珍しいフルーツを使ったものから、トリュフやキャビアなど高級食材を使用したクレープまである。
「確かに他の店では見ないメニューだな。どれを食べる?」
「私はこのイチゴが入ったクレープを」
「では、俺はこのチーズが入ったクレープだな。注文してくる」
朱羅がクレープを注文する間、紫依は軽く周囲を見渡していた。すると視線が合った通行人たちが何故か少しだけ顔を赤くして、そそくさとその場から立ち去って行く。
理由が分からず紫依が軽く首を傾げていると、朱羅が出来上がったクレープを持ってきた。
「どうした?」
「みなさん私を見ると足早に去って行かれるのですが……私の顔に何かついていますか?」
紫依の質問に朱羅も首を傾げる。
「特に変なところはないと思うが。それより、この店には食べる場所がないから食べながら歩くしかないようだ」
紫依はクレープを受け取りながら頷いた。
「そうなのですか。あ、他にも行きたい場所がありますので、そこまで食べながら歩きませんか?」
「そうするか」
こうして二人はクレープを食べながら次の目的地へと向かった。ちなみにハーメルンの笛吹状態は続行中である。
二人がクレープを食べ終わった頃に到着したのは、賑やかな音楽が大音量で流れている店だった。
「ここは?」
朱羅の質問に紫依が少し大きめの声で答える。
「ゲームセンターという場所です。いろいろなゲームがあるそうで、ここでしか手に入らない景品もあるそうです」
「あぁ、聞いたことがある。これも日本独自の文化だそうだな。入ってみるか」
二人がゲームセンターに入ると、後ろをついて歩いていた人々は半数以上がバラバラと散っていった。だが中にはゲームセンターの中にまでついて行く強者もいた。
そのことを把握している二人だが、なんでもないことのように話を続けていく。
「朱羅が住んでいた国には、ゲームセンターはなかったのですか?」
「一応あるが、こんなに明るくないし、ゲームの種類も多くない。それに、ここまで綺麗でもないな」
そう言いながら二人は店の中のゲームを眺めながら歩いていく。
流し見程度でスタスタと歩いていたのだが、紫依がふと足を止めた。そのことに朱羅も足を止める。
「どうした?」
「いえ、ちょっと気になりまして……可愛い、というのでしょうか?フカフカしていそうで……触ったら、どのような感触なのか少し興味があります」
そう言った紫依の目の前にはクレーンゲームがあった。




