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チート四人組、学校へ行く……からの婿決定戦(副題:どうしてこうなった?)  作者:


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恋愛

 朱羅の顔が美形であることはオーブの爆弾発言並みの勢いで全校に広まっていった。

 成績優秀、スポーツ万能、その上モデル並みの顔立ち。詳しい家系は分からないが理事長の関係者というだけで保障付きも同然である。


 そんな優良物件である朱羅に女子生徒の視線が一気に変わった。


 良家の子女だけあって表だった派手な行動は起こさないが、少しずつ話しかけたり、手紙を出したりする女子が増えていた。だが、それでも朱羅の態度は変わらなかった。長い前髪と黒縁メガネで顔を隠して静かに学校生活を送っている。


 そして、本日。


 朱羅は手紙で校舎裏に呼び出された。普段なら呼び出しの手紙は無視するのだが、手紙の内容に龍神さんについて話したいことがある、という文章があったため応じたのだ。


 朱羅が呼び出された場所に行くと、そこに一人の女子生徒がいた。

 クラスどころか学年さえも違うため、廊下で二、三回すれ違ったことがある程度で話をしたこともない。


 自衛のために全校生徒の顔と名前と学年を把握していた朱羅は、とりあえず差し障りのないところから訊ねてみた。


「一年生がオレに何の用だ?」


 朱羅の言葉に女子生徒は感激したように頬を赤く染めた。丸い瞳に小柄な体は小動物のようで愛らしい。実際のところ、この学校で一番可愛いと評判の女子生徒であった。オーブと紫依が転校してくるまでは。


 そんな自分の容姿に自信がある女子生徒は、両手を頬にあてて恥じらうように俯いた。


「先輩が私のことを知ってくれているなんて嬉しいです!」


 そう言って可愛らしく上目使いで朱羅を見る。どのような仕草をすれば自分が可愛く見えるか把握しており、それを全開にしてアピールしていた。


 そんな沸点まで感情が高まっている女子生徒に対して、何も感じていないどころか氷点下にまで冷えきっている朱羅は淡々ともう一度同じ言葉を言った。


「何の用だ?」


 感情が高ぶりすぎて現状が見えていない上に、自分に絶対の自信を持っている女子生徒は両手を広げて駆け出した。


「先輩!好きです!」


 朱羅が受け止めると確信しての走り込みだった。しかし、それを朱羅が避けたため、その女子生徒は壁に激突しかけた。


 壁とのキスをどうにか回避した女子生徒は叫びながら慌てて振り返った。


「先輩!」


 だが朱羅は女子生徒の声が聞こえていないかのように校舎の影へと歩いていき、声をかけた。


「紫依。どうして、こんなところに?」


 朱羅の視線の先には紫依が立っていた。

 紫依はキョロキョロと周囲を見た後、確認するように後ろを向いた。


「ここで桜葉さんが待っている、と権守さんに言われて来たのですが」


 紫依の数歩後方で権守が気まずそうに立っていたが、朱羅と目が合って軽く愛想笑いをした。


 そもそも嘘を見抜ける紫依は、権守が初めから嘘を言っていることに気が付いていた。そのため桜葉がここにいないことも分かっていたのだが、それを指摘するわけにもいかないため、大人しく権守に連れて来られたのだ。


 そんな紫依の事情を悟った朱羅は、軽くため息を吐いて権守を見た。


「ここに部長はいない。そろそろ部室にいるだろうから、そっちに行ったほうがいいだろう」


 朱羅の指摘に権守が頷く。


「そ、そうだね。行こう、龍神さん」


 一刻も早くこの場から立ち去るために紫依の手を掴もうと権守が手を伸ばす。だが、その手は何も摑まえることなく空を切った。


 紫依がサラリと朱羅の隣に移動して声をかける。


「これから、どうされるのですか?」


「部室に行く予定だ。行かなかったら部長が地の果てまで追いかけてきそうだからな」


「でしたら、部室まで一緒に行きませんか?」


「あぁ」


 朱羅が軽く頷いて紫依と歩き出す。


 そんな二人の後ろ姿に存在を忘れられた女子生徒が叫んだ。


「先輩、ひどい!」


 その言葉に紫依が足を止めて朱羅を見上げた。


「何かされたのですか?」


「いや、特に何もしていないと思うが」


 首を傾げる朱羅に女子生徒が駆け寄る。


「返事を聞かせて下さい!」


「返事?」


 ますます首を傾げながら朱羅は隣にいる紫依を見た。


「さっきの会話で俺は返事を言わないといけないようなことを言われたか?」


 朱羅からの問いに紫依が小首を傾げる。


「……いえ。どちらかと言うと朱羅の方が訊ねていたと思うのですが」


 告白したところを見られていたと分かる会話にも関わらず女子生徒が気にする様子はない。むしろ朱羅を真剣な眼差しで見つめている。


 朱羅は胸の前で腕を組んで唸った。


「悪いが返事に対応する問いが思い当らない。何の返事がいるのだ?」


「好きですって言ったじゃないですか!」


 目元を赤くして叫ぶ女子生徒に朱羅が淡々と頷く。


「それは聞いた」


「だから、その返事を下さい!」


 その言葉に朱羅が珍しく翡翠の瞳を丸くした。そして、そのまま紫依に訊ねた。


「好きです、と断言している言葉に対しての返答が存在するのか?」


 紫依が少し考えて首を横に振った。


「断言している言葉に対しての返答があるとは、私も知りませんでした。それとも、好きという単語に対してだけ返答が存在するのでしょうか?」


 そう言うと紫依は真っ直ぐ女子生徒を見た。


「この場合、どのように返事をすればよろしいのですか?」


 真面目に紫依に訊ねられて女子生徒がポカンと口を開ける。そして、この会話を聞いていた権守も予想外すぎる紫依の言葉に何も言えずに呆然としていた。


 そこに疾風のごとくオーブが現れて紫依と朱羅の腕を掴んだ。


「劇の練習、遅れる。部長、怒る」


 そう言うとオーブは、目を丸くして突っ立っている権守と女子生徒に可憐な笑顔を向けた。


「さようなら」


 そして脱兎のごとく二人を連れ去り、残された二人は、しばらくその場から動けなかった。



 最初から全てを見ていたオーブは心の中で嘆いていた。


「面倒くさい状況なのに、それをややこしくしやがって」


 紫依と方法は違うが、オーブも今までの経験から権守が嘘を言っていると見抜いていた。そのため、オーブはこっそりと紫依と権守を尾行していたのだ。

 そして、朱羅が告白される現場に到着して、しばらく成り行きを見ていたのだが、二人のあまりにも酷い対応に我慢ができなくなって乱入した。


 権守は自分が常に一番で目立つ存在でいたい女子生徒が、学校一の美少女の座を転校生と留学生に取られたことに自尊心(プライド)を傷つけられていたことを知っていた。そして、そんな女子生徒が学校中の噂の的になっている朱羅に目をつけて、どうにかアピールしようとしているという情報を手に入れた。


 そこで権守は女子生徒と接触して、ある計画を持ちかけたのだ。


 女子生徒が告白をして朱羅と抱き合っている光景を見せれば紫依はショックを受ける。そこに自分が慰めれば、紫依の気持ちは朱羅から離れる。

 女子生徒は朱羅と抱き合っていたという既成事実から、そのまま付き合い始めれば良い、と女子生徒に提案したのだ。


 女子生徒からしてみれば、自分を学校一の座から落とした人の片思いの相手と自分が付き合うということで、傷つけられた自尊心は回復する。しかも美形で超優良物件という上物を自分の彼氏に出来るという計画に簡単にのった。


 しかし、権守の目論見は見事に外れる。


 全てを見抜いていたオーブは頭を抱えたくなる衝動を抑え、ひたすら二人を引っ張りながら足を動かした。


「こいつらに、そんな安っぽい計画が通用するわけないだろ。むしろ、こいつらに恋愛本でも読ませるか?いや、時間の無駄だな。そもそも、こいつらが恋愛感情を理解できるわけがない」


 ブツブツと独り言を呟くオーブに、紫依と朱羅は首を傾げたまま部室まで引きずられていった。


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