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チート四人組、学校へ行く……からの婿決定戦(副題:どうしてこうなった?)  作者:


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保険医

 オーブが疲労で倒れるのが先か、文化祭で劇をやり遂げるのが先か真剣に悩んでいると、気が付いた時には二週間が過ぎていた。


 学校の保健室に入ったオーブは、長い金髪を揺らしながら両手で顔を隠して俯いた。


「先生……オレはもうダメかもしれないです……」


 その声はいつも学校で聞かれる可愛らしく少し高い少女の声ではなく、少し低い少年の声だった。

 だが、制服姿で儚く俯いた姿はどう見ても少女だ。それも薄幸と美が付いてもおかしくないぐらいの。


 そんな外見で、今にも崩れそうな弱音を吐いたオーブに冷徹な声がかけられる。


「その恰好の時は声も合わせてよ」


 その容赦ない言葉にオーブが顔を勢いよく上げる。


「誰もいない時ぐらい声を戻してもいいだろ?」


「可愛らしさが半減するから却下」


「そんな理由かよ……」


 落ち込むオーブの前には背中まである黒髪を右肩の上でゆるく一つに結んで、胸の前に流している女性保険医の姿があった。

 薄っすらと化粧をして銀縁のデザイン眼鏡をかけ、白衣を着て大人の魅力を垂れ流しにしている。


 思わず花魁かと勘違いしてしまいそうな色気を振りまいている蘭雪は、(やなぎ) (らん)と名前を変えて短期保険医として、この学校に雇われていた。


「でも、よく短期の保険医アルバイトなんて募集していたな」


 感心するオーブに蘭雪が微笑む。


「ここの保険医に文化祭まで休まないといけない用事を入れただけよ」


「……それって入院とかじゃないよな?」


 嫌な予感に顔を歪ませるオーブに蘭雪は軽く笑った。


「豪華クルージング一カ月半旅行の懸賞が当たって、ここの保険医は今、豪華客船の上よ」


「なら、良かった」


 蘭雪にしては穏便な方法にオーブが安堵する。


「で、紫依の様子はどう?」


 その言葉にオーブが机を叩く勢いで叫んだ。


「もう無理!オレ、フォローしきれないから!」


「だから、具体的に言いなさい」


「劇のセリフから立ち位置まで完璧に覚えて、部員から羨望の眼差し集めまくりだよ!踊りも振りつけが完璧すぎてダンス部から入部してくれって誘われているし、授業も問題なさすぎるところか、頭が良すぎて休み明けテストで学年トップなんか取ったし!」


「あら、紫依って頭が良かったのね。まあ、前世の記憶があるから当然かしら」


「それだけじゃない!紫依の兄貴……風真が、紫依が隠れ里にいても勉強が疎かにならないようにって、教材を山ほど持ち込んでいたんだよ!今の紫依の学力は大学生を超えているぞ。そんな紫依に普通の生活をさせるなんて無理なんだよ!」


「そこは仕方ないわよねぇ。朱羅も同じような感じだし」


「……あいつも?」


「朱羅って大学院を卒業しているだけの学力があるでしょ?ここの勉強が簡単すぎて退屈みたい」


「退屈って、当初の目的を忘れるな!」


 叫び続けるオーブに蘭雪がお茶を出す。


「喉が枯れるわよ。今、紫依は何をしているの?」


「演劇部の部室で練習中。一応、朱羅が見学という形で一緒にいる」


 そう言うとオーブは出されたお茶を一気に飲んだ。そして盛大に吹き出した。


「何を入れた!?」


「え?そこの棚にあったお茶よ」


「いや、他にも何か入れただろ!」


 オーブの追求に蘭雪が顎に人差し指を当てて考える。


「そういえば、その隣にあったビンの液体も一緒に淹れたかしら。同じ棚にあるものだし、飲み物みたいだったから」


「だから、そこで同じ棚にあるものは全て食べ物、飲み物と思うのを止めろ!このお茶は飲むなよ。そして他の人には絶対に出すな」


「はい、はい」


 湯呑を片づけようとする蘭雪の手をオーブが止める。


「オレが片づける。これ以上、何かされたら困る」


「あら、ちゃんと保険医をしているのに、そんなに心配されたら心外だわ」


「そこが一番、意外だったよ」


 そう言ってオーブがため息を吐く。


 保険医として潜入した蘭雪は意外にもちゃんと仕事をしていた。先生という立場から紫依のフォローをするということだったが、それよりも学校を破壊しないかとオーブは心配していた。

 だが、蘭雪が一番まともに学校生活を送っていたのだ。


「なかなか面白いわよ。こういうのも貰うし」


 そう言って蘭雪が机の引き出しから取り出したのはラブレターの山だった。


「あぁ、もう……そこは予想していたよ……」


 崩れ落ちるオーブに蘭雪が笑う。


「年上のお姉さまに憧れる年頃なのよね。一生懸命、渡そうとする姿が楽しくて。オーブも貰っているんじゃない?」


「この倍は貰ったよ」


 ふてくされたように言うオーブに蘭雪が意地の悪い笑みを見せる。


「で、返事はしたの?」


「英語で書かれていたものだけ返事を書いた」


「なんて?」


「貰った文章を赤ペンで添削して、そのまま返した」


 それは返事と言わないのだが、蘭雪はつまらなそうに言った。


「それじゃあ発展がないじゃない。誰か良い人はいないの?」


 オーブは蘭雪に顔を近づけて満面の笑顔で言った。


「オレは男なの。男と付き合う気は一切ないの」


 すぐ目の前にある可憐な金髪美少女の頬を蘭雪が優しく撫でる。


「その顔で言っても説得力がないわよ。さ、紫依に変な虫がつかないように見張ってきて」


「へい、へい」


 オーブは可憐な留学生オリビィアの雰囲気をまとって保健室から出て行った。


 その姿を見送った蘭雪は机に肘をつくと手の上に顎を置いて呟いた。


「この調子だと本当に紫依に変な虫が寄ってきそうね。どうしようかしら」


 蘭雪が窓の外を見ると秋晴れの空が広がっていた。


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