3/5
第1章 3
トーマはターシャがやって来た方にある扉を叩く。
「母さん、入るよ」
寝台には、一人の女性が眠っている。驚くほど白く、華奢というにも過ぎるくらいに細い。その脇には、ターシャよりも更に四、五歳ほど上の少女が椅子に腰かけ、繕いものをしていた。
「ハンナ姉さん、ただいま」
「お帰りなさい、トーマ」
女性がうっすらと眼を開く。
「トーマ。帰っていたの?」
「うん、今帰って来たよ。母さん、見て。子猫を見付けたんだ」
トーマは子猫を母親の胸の辺りに下ろした。子猫は足元の布団の柔らかい感触に戸惑い、トーマを見てミィと鳴いた。
「可愛いねぇ」
細い手指で子猫を撫でる母親を見て、トーマは微笑んでいた。