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第1章 2
森に一番近い家の扉が開いて、女性が出てきた。女性は太陽が描かれたペンダントを身に着けている。
「リリー、どこに行っていたの」
「トーマと森に行ってきたのよ」
「もう、二人とも森は危ないと何度言ったらわかるのかしら」
女性は、少年と少女――トーマとリリーを呆れ顔で見ている。
「それよりお母さん、猫、飼いたいんだけど駄目?」
リリーが子猫を見せながら言う。子猫は周囲を舞う蝶を不思議そうに見ている。
「……仕方がないわね。ちゃんと面倒見てあげるのよ」
「やった、有難うお母さん」
リリーが子猫を連れ、家へと入っていったのを見届け、トーマも家へと向かった。トーマの家はリリーの家の三軒隣だ。家の扉には月の彫刻が為されている。
「トーマ、またリリーと森に行ったの?」
奥から、トーマよりも四、五歳年上の少女がやってきて尋ねる。
「ターシャ姉さん。なんで分かるの」
「リリーの声はよく聞こえるわよ。母さんの耳に入らないように気をつけなさい。心配するに決まってるもの」
「分かってるよ」
「あと、その猫、すぐ母さんに見せてあげなさい。きっと喜んで可愛がるわ」
「うん!」