初仕事
「…キ…サキ!いつまで寝てるプ!起きるプニ~!サキ‼」
ぼんやりと映るマリンの姿。部屋は光があまり入っていないが、日が出ているのは分かる。
「マリン…おはよ…」
「早く用意する二ィ!サラがきちゃうプニ」
そう急かされたあたしは急いで出かける準備をした。
ガチャ…
「サキ?いる?」
「あ、サラ!」
扉を開けて入って来たのは、サラとリリー。
「用意出来たのね」
「うん」
「意外。てっきりまだ寝てるかと思ったわ」
「マリンが起こしてくれたの!あ、ねぇサラ。気になってた事があるの」
「何?まだ時間あるし、聞くわ」
「この世界では、なんで本名は使っちゃいけないの?」
「…元は皆神から与えられた名なの。その名にいくつか他の字が混ざったのが、本名。この世界は神の選ばれた人しかいられない。だから、神から与えられた名を使うの。…理解出来た?」
「……うーん…。じゃあさ、サラは本名何だったの?」
「…それは、まだ知らなくていいの」
「え~!」
コンコン……
「あの~…スミマセーン…」
「来たわ、初仕事よ。入りなさい」
ガチャ…
「あ…こんにちは。依頼した、明里です」
明里は小柄でいかにも乙女な感じで、ソファーに座ると、軽く会釈した。
「お願いしたいのは、ヒロって男です」
「はい。早速、本日に行いますが…」
「お願いします」
淡々と進めるサラに、早くも付いていけないあたし。
「サキ、行くわよ。明里さんは、待っていてください」
「はい」
裏屋を出ようと扉を開けて、驚いた。
…見慣れた街並みが広がっていたから…。
「何でっ⁉」
「私が繋げた。行くよ、サキ」
「う…うん」
パァァァン‼
人通り少ない道で、ヒロって人を打った。
あっという間だった。どうやら周りにはあたし達は見えてない見たい…。ヒロには見えたらしいけど…
「サキ、意識を集中させて」
「ん………」
出来ない……はずなのに、目を閉じると自然に力が集まった気がした…
「そのまま、牢獄を思い浮かべて!」
牢獄…ん?牢獄ってどんなの⁇…とにかく、檻をイメージ……!
「牢獄…」
「牢獄に入れって強く願うの‼」
「お…お前ら何なんだよ…クッ…」
「出来る…あたしは…出来る‼」
その時だった…。強い力で、あたしは自分をコントロールが出来なくなった…
黄金の光が広がる。
あたしの中に…何か…いるみたい……
「サキ‼」
「牢獄へ…牢獄へ行きなさい‼」
あたしは叫んでいた…。自分の意志じゃない。勝手にあたしを支配してく……
「うーッ‼」
ポァァン‼
一瞬、ヒロは消えているのが見えた…が……
「サキ‼」
ドサッ……
あたしは力なく倒れた。
「サキ、しっかり」
「……あ…たし……もぅ……」
そこで、意識がプツリと途切れた…。