謎の依頼
眩しい日差しがカーテンを超える。
「…もう、朝ぁ?早い…ふわぁぁ。眠っ」
華原沙月。高3で、栗色のショートヘアーが自分でのお気に入りポイント。
生まれつき茶髪だったらしい、それはお姉ちゃんのサイラと同じ。サイラお姉ちゃんは、あたしが小さい事に事故で死んじゃったんだ。
「沙月~!起きなさぁい」
お母さんの朝の決まり文句。飽きるくらい毎日聞く言葉。
「起きてる~‼」
あたしの返事も毎日同じ。
ノソッとベッドからおりる。ふと机の上に置かれた手紙。
丁寧に封筒に入ってる。
「何だこれ?」
気になって、便箋を広げてみる。
『サキさん。
初めて依頼します。私をしつこくナンパしてくる人が、今ストーカーしてきて困っています。詳しくは明日、裏屋に訪問します。お願いします。
明里』
綺麗な字で書かれた依頼。
謎がいっぱいだが、まずあたしはサキではない。人違い?にしてもなんでここに?
「沙月、起きてないでしょ~‼」
あっ、やべっ‼
「はいはぁい!」
あたしは急いでリビングにでた。
「ギリギリセーフ‼」
学校に滑り込むようにしたからか、クラスメイトには笑われたが、間に合った。
高3で遅刻は、将来響くのでヤバイ。
授業を受けても、頭に入らない。
「では、今日は終わり‼」
「終わった~」
「お前は全部寝てたろーが」
グーっと手を伸ばすあたしにすばしっこいツッコミが飛ぶ。
「アハッばれた⁇千絵は起きてたの⁇」
「当然!」
千絵は高校入った時から三年同じクラス。親友と呼べる仲になった。
結局、授業は寝た。全部。
歩き慣れた下校道。
暑い日差しに、夏を感じさせられる。
「たっだいまぁ!」
「あ、おかえり」
「ちょっと出かけるー!」
「制服で?」
「うん、いってきます!」
お母さんは仕事休みらしい。いつもは夕方に帰ってくるから、昼間にいるのは珍しい。
人通り少ない道に入った。家からも少し遠いけど、導かれるように、ここにきた。
パァァン‼
どこからか聞こえる音。
キョロキョロと周りをみると、トンネルが見えた。
「あっ…」
トンネルを覗くと、少女が銃を持っていた。銃の先には、男の人。
「さぁ、牢獄へ行きなさい‼」
ピカァァァ…
眩しい光。目を閉じると共によみがえる記憶。目を開くと、男の人はいない。
あたし、前にこんな事あった…
「久しぶり、ね」
少女が振り返る。少女と目が合って、驚いた。茶髪にサラサラヘアー……
「あっ…サラ…さん」
「思い出したのね。待っていたわ」
目の前にいるのは、昔にあった、サラさん。
「さぁ、依頼主がくるわ。行きましょう」
あたしと同じ年に見える。サラさんはあたしの手をとった。
「華原沙月さん、あなたをミラーワールドの巫女に任命します」
「み…こ?」
「沙月、あなたはこれから、サキ、として生きるの。ミラーワールドでは、本名は使えないわ。いい?」
「あの…話についてかない」
「後で話すから。目を閉じて?」
「うん…」
言われた通り、目を閉じた。
「3…2…1……」
フワッとした感覚がカラダを包む。
「目を開いて?」
そっと目を開くと、見知らぬ草原が広がっていた。
「わっ…!」
変わったのは、場所だけではない。服までが変わっていた。
ピンクのワンピは、ゆったりめで、動きやすい。
「…ここは?」
「……」
黙り込むサラさん。その目はどこか悲しげで、寂しそうな目だった。
「サラさん?」
「サラでいい」
サラの目から、雫がこぼれる。
「サラ…?」
「ごめんッ…。……あなたに、言わなければならない事があるの…」
「えっ…⁇」
「あなたは…死んだ事になったの……」
サラは目をそらさずに続けた。
「もうサキは、あそこに戻っても、誰にも見えない。依頼の時は別だけど…」
「なんで…⁉」
「裏屋はサキの家として使って?そこで、話すから…」
「う…裏屋…?」
「そう。あと、これ…」
「ひゃっ……」
「あなたの、銃よ」
ザワザワと風が草を揺する…
「銃…⁉」
サラから渡された銃…
「サキ、行こう」
「えっちょっとまって…」
「依頼はあなたの仕事だから、急がないと」
「うっそぉっ‼」
よく分からないけど、あたし、死んだ…
この銃は、何?
サラから聞かされたのは、理解の難しいものだった………